はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

『映画ドラえもん 新 のび太の大魔境 ペコと5人の探検隊』感想

2014-03-15 21:11:26 | アニメドラ感想
 当エントリは、映画のネタばらしを含みます。未見の方はご注意下さい。



 今年の映画ドラえもんは『のび太の大魔境』のリメイク。久々の原作付き、それも初期の作品と言うことで、いったいどんな映画になるのか楽しみ半分、不安半分だった。過去のリメイク作の傾向からして、何かしらのアレンジ要素があるものと思っていたからだ。しかし、実際に観てみると、「原作」に対して非常に誠実な態度で作られた作品だと感じさせられた。
 だから、今回の映画で一つキーワードを挙げるとしたら、「原作通り」を推しておきたい。とにかく、原作に忠実な部分が多いと言うことが一番印象に残った。原作は大長編の中でも初期の作品なので何十回、下手したら何百回と読んでおり、セリフ回しは大部分が頭に入っている。今回の映画では、セリフを聞いていて頭の中で「次のセリフは○○だな」と思っていると、大部分はその通りだったので、観ていて非常に心地よかった。

 もちろん、全てが原作通りというわけではない。細かいところではいくつかアニメオリジナルの場面も見受けられた。個人的に一番驚いたのは、のび太たちが「変身ドリンク」でイモ(だよな)に変身したところ。まさか、あんな使い方が出来るとは、驚くほかない。他にも、偶然の要素があったとは言え、電光丸の力なしでのび太がサベールに勝ったのも意外だった。旧作映画同様にペコに花を持たせる展開になるのではと予想していたのだ。
 特に、犬の国に入ってからはオリジナルの場面がいくつかあった。だが、それらも主に原作を補強するものであり、まるで原作と関係なく付け加えられた場面ではなかった。それ故に、全体としての感想は「原作に忠実」と言うことになるのだ。

 また、ここで特に取り上げておきたいのは、終盤の挿入歌が流れたシーンだ。旧作を観ている人には言うまでもないことだが、旧作でもやはり挿入歌「だからみんなで」が流れた名場面だ。それだけに、今回はどのような演出になるのかと楽しみにしていたのだが、ここは旧作とほぼ同じ内容だった。違いを挙げるとしたら、歌が変わっていることくらいだろうか。原作もそうだが、セリフは一切なく、歌で盛り上げるという手法が受け継がれたことになる。
 この場面、原作大長編でも「だからみんなで」の歌詞が出てくるのだが、実は初出版では歌詞は出てこない。この場面の歌は、旧作映画での挿入歌使用が、てんコミでの描き足しで原作に逆輸入されたのだ。だからこそ、今作での演出に注目していたのだが、変わらなかったのはちょっと残念だ。それだけ、この場面は旧作映画の完成度が高いのだとも言えるが。今回の挿入歌「友達」は、なかなかいい歌だった。


 このあたりで、今作について気になった点も書いておこう。
 今作の上映時間は109分だが、それだけの時間を保たせるには、いささか演出に間延びしたところがあった。はっきりと、どこがそうだとは指摘しにくいのだが、メリハリが少し足りないというか。旧作の上映時間は92分とかなり短いが、それだけ中身が締まっていたように思う。
 原作に忠実であるが故に、先の展開までわかってしまってうこととなり、そのため特に終盤では観ていて少しだれてしまった。「もう少しアレンジがあればな」と思ってしまったのは、贅沢なことだろうか。事前の予想では、「10人の外国人」「のび太対サベール」あたりは大胆に変えるのではと思っていた。

 また、最近なくなっていた、アフレコ素人の重要な役へのキャスティングが復活してしまったのは、実に残念。いうまでもなく、スピアナ姫のことだ。それに対して、小栗旬のサベールは冷酷な剣の達人を見事に演じていて、よかった。ゲスト声優では、ペコ役の小林ゆうもさすがの演技だった。


 とにかく、今回は「原作に忠実」。それが記憶に残る作品だった。わさドラ9年の歴史で、ここまで原作通りだった映画は間違いなく初めてだ。それだけに、ある意味では新鮮でもあった。
 次回作は、おまけ映像を観る限りではアニメオリジナル作品のようだ。はたして、『ひみつ道具博物館』に続く快作となってくれるのか、来年も見逃せない。

知らないうちに消えていた「秋田犬」

2014-03-06 22:01:35 | 日記・雑文
 最近、非常に驚いたニュースが一つあった。それは、「2円切手が復活」だ。
 何にそんなに驚いたかというと、「二円切手を十一年半ぶりに復活させた」の下りだ。私が知らないうちに、十年以上も前に2円切手が発売停止になっていたのだから、驚かずにはいられない。今はもう無期限休止状態だが、昔は切手収集(特に通常切手)を趣味にしていたというのに、あの親しんでいた「秋田犬」2円切手が引退していたのを知らなかったとは、実にお恥ずかしい。
 しかし、「さくら日本切手カタログ」の2012年版を見てみたら(切手収集を現在やっていないのに、なぜカタログを持っているのかは自分にも謎)、「秋田犬」2円切手にはしっかり価格が載っていた(現行切手の価格は載らない)ので、これで気がつくべきだった。

 ところで、「秋田犬」2円切手は、おおざっぱに言って2種類存在する。一つ目は1953年に発売されたもので、これは「NIPPON」の国名表示がないが、二つ目の1989年に発売された方は、「NIPPON」の国名表示がある他に額面のフォントが変わり、刷色も微妙に変更されている。とは言え、図案は両方とも同じ「秋田犬」であり、長年にわたって親しまれていたと言える。
 個人的にも、切手収集を始めた小学生の頃は、使える資金も限られていたので、少額で買える(あたりまえだ)低額切手は非常に身近な存在で、いろいろと遊んだものだった。低額切手ばかりをたくさん貼りまくった郵便物(封書やはがき)などを自分宛に何度も出していたが、残念なことに今探しても出てこない。見つかったらここに載せようかと思ったのだが。

 ちなみに、先ほども書いたが、2円切手が前回リニューアルされたのは1989年。つまり、消費税導入の時だ。あの時は、封書の料金が60円→62円へと値上げされたため、機械で検知させるために2円切手に微妙な改良が施されたのだった。
 そして、今回の2円切手復活も、消費税率引き上げに伴う郵便料金値上げが原因だ。つくづく、消費税に振り回される額面だ。
 値上げ対応と言えば、葉書が41円→50円に値上げされたときは、加貼用の「9円切手」が発売されたが、これがあっという間に消えたのは覚えている。旧額面の葉書がなくなったら、もう用なしで他への応用が利かない額面だったからなあ。かわいそうなシオカラトンボだった。

 それにしても、なぜ自分は切手収集を自然消滅的にやめてしまったのだろう。実に不思議だ。なんと言っても、小学生から大学生くらいまではやっていた趣味だったのだ。大学3年生以降、大学の情報処理センターに入り浸るようになったせいか。いや、それだけではないだろう。ネットにはまって、さらには本格的に藤子作品に再度熱中しだして、切手収集をやる暇がなくなったせいか。まあ、こんなところだろうな。
 それでも、たまには昔集めた切手を並べたアルバムや、ストックブックを眺めることもある。これらは、昔に戻ることの出来るタイムマシンのようなものだ。そして、中途半端に集められた切手を見ると、シリーズ完揃いにしてやりたくなってしまう。実に危険な誘惑だと言えよう。気をつけなくては、今これ以上趣味を増やす時間と金銭の余裕はないのだ。切手収集は、せいぜい新2円切手を買うくらいにしておこう。

『三つ目がとおる』少年マガジン復刻版・発売!

2014-03-04 22:13:58 | 手塚治虫
 待ちに待っていた『週刊少年マガジン完全復刻版 三つ目がとおる イースター島航海』が、ようやく昨日、発売された。
 これは書名の通り、これまでに出版されてきた単行本バージョンではなく、初出誌『週刊少年マガジン』に掲載されたそのままの内容を誌面から復刻したもの。手塚ファンならご存じの通り、特に長編連載の手塚作品は単行本化にあたっていろいろと編集が加えられる事が多く、作品によっては別物と言ってもいいものもある(例:『ダスト8』と『ダスト18』など)。

 今回出版された『三つ目がとおる』の「イースター島航海編」も、別物とまではいかないものの、比較的大きな修正が加えられていることを知っていたので、近年の手塚作品の「オリジナル版」流行りのなかで、これも出ないかなと以前から思っていた。
 思い返せば、最初に「イースター島航海編」の初出版を、部分的にではあるが読んだのは大学生の時だった。当時たまに行っていた古書店(今はなき、春日井の勝川古書センター!)に1970年代中頃の『週刊少年マガジン』が大量に入荷していて、中をチェックしたら『三つ目がとおる』でバン・ドンならぬ出杉が登場している場面があったのだ。
 当時、『三つ目』の未収録はまだ特にチェックしていなかったので、これが「猪鹿中学」「長耳族」に登場した猪鹿中学の番長だと言うことは知らなかった。だからこそ、「なんでバン・ドンじゃないんだ?」と、余計に不思議だったのを覚えている。この辺の事情については今回の『完全復刻版』巻末の解説に書いてあるので、そちらを参照されたい。
 その後、社会人になってから、図書館で初出誌を体系的にチェックするようになり、『三つ目がとおる』は、古い方から順番に初出誌を読んでいったが、「イースター島航海編」まではたどり着かなかったように覚えている。それに、いくら描き換えがあるからと言って、連載ものをいちいちコピーしていると非常に金がかかるので、コピーはほとんどとっていない。そんな状態だったので、今回の『完全復刻版』刊行は、非常にありがたい。

 それにしても、『完全復刻版』が出るまで、本当に長い間待った。
 『三つ目がとおる』は、これまで何度も単行本化されており、近年だけでも『手塚治虫文庫全集』版全7巻と『GAMANGA BOOKS』版全10巻の2回も刊行されている。このうち、後者のGAMANGA BOOKS版については、「連載順に収録し、カラーもすべて再現」と言う事だったので、「もしや初出版での収録なのでは」と期待したのだが、ふたを開けてみると、単に収録順が初出の順なだけで中身は今まで通りの単行本版だったので、がっかりしたのだった。
 そんなことがあったし、また復刊ドットコムの復刻シリーズも『ブッダ』が始まったので、もう『三つ目』の初出版はもう出ないんじゃないかとすら思ったこともあったが、それがこうやって刊行されたのだから、生きてさえいればいいこともあるものだ。
 なお、未収録についてもちょっと触れておくと、『手塚治虫漫画全集』以降に出された単行本では9話の未収録があった。これらを最初に収録した単行本シリーズは、なんとコンビニコミックだった。KPCと言うシリーズで、単行本未収録作品を含めて全作品をほぼ初出順に収録した、画期的な内容だった。その後、講談社漫画文庫で『三つ目がとおる 秘蔵短編集』として未収録だけで一冊にまとめられたほか、手塚治虫文庫全集もKPCと似た編集内容で全話が収録されている。

 さて、こうなると次に気になるのは、この『完全復刻版』に「次」はあるのかと言うことだ。
 『三つ目』では、長編だけでも「三つ目族の謎編」「グリーブの秘密編」「怪植物ボルボック編」「古代王子ゴダル編」「地下の都編」「怪鳥モア編」と、6編もある。中でも、個人的に初出版を出してほしいのはグリーブ編だ。
 このシリーズは、単行本だけでもKCマガジン版、手塚治虫漫画全集版、手塚治虫文庫全集版で異同が認められる。それぞれ、始まり方もしくは終わり方が違うのだ。また、初出版では上底先生の属する組織が単行本とは異なる(「全ピキ連」ではない)など、バージョン違いが非常に多い。だからこそ、ぜひ全ての始まりである初出版を単行本化してほしい。
 もちろん、グリーブ編以外のシリーズも、せっかくだから全て出してほしい。ここまで長い間待ったのだから、そう焦ることはない。落ち着いて待ちます。

 最後に書いておきたいのは、この本の価格について。本体価格1,900円とは、夢のような安さだ。
 普通の漫画単行本と比べると、高いと言えば高いのだが、最近は手塚作品の復刻というと小学館クリエイティブや復刊ドットコムの価格ばかり目に付くようになっていたので、それらと比べると本当に今回の本はお買い得だ。A5判というのも、F全集や水木全集と一緒なのでおなじみなのでいい感じだ。この調子で続けて行ってくれれば、本当に言うことはない。