『水木しげる漫画大全集』第1期刊行開始

 今月3日より、『水木しげる漫画大全集』の刊行が開始されて、まずは第1回配本の3冊が発売された。

 私は、この全集を集めるか否か、発売日までずっと悩んでいた。それが、実際に発売されて、とりあえず『ゲゲゲの鬼太郎』第1巻をどんな感じか見てみようと思い、発売日の翌日に買ってみたのだが、これがいけなかった。何度も読んでいる『鬼太郎』だが、京極夏彦氏のこだわりが反映された内容が予想以上にすばらしいのだ。こんな全集ならぜひ全巻揃えたいという気になるまで、あまり時間はいらなかった。気が付くと、手元には第1回配本の3冊が並んでいたのだった。


 この全集、体裁や編集方針は小学館の『藤子・F・不二雄大全集』に、かなり似通っている。A5判と言う判型からして同じだし、価格設定や巻末の資料に解説者、挟み込みの月報等々、共通点はたくさん挙げられる。そんな中で、F全集とは正反対といえる編集方針が「初出の形を尊重する」という点だ。これによって、『ゲゲゲの鬼太郎』第1巻ではすべての話が、これまでの単行本とは違って『週刊少年マガジン』掲載時の形で収録されている。
 初出時の形を復元したことが売りと言えば、数年前に講談社文庫で『少年マガジンオリジナル版 ゲゲゲの鬼太郎』全5巻が刊行されたが、こちらは「差別用語」の自主規制を含んだ、「大体は初出の形だが一部微妙に違う」内容だった。それと比べて、今回の全集版は「大海獣」の人食い人種のコマや、そのほか差別的とされるセリフも初出のままとなっており、真の「初出版」と言える。

 などと、知ったようなことを書いてきたが、私は人食い人種のコマは初見だったくらいで、大して初出状態に詳しいわけではないので、念のため。
 さらに言えば、水木作品の単行本も、実は大して持ってはいない。昔から持っていたのは『ゲゲゲの鬼太郎』(中央公論社)全5巻くらいだった。それが、ここ数年で、鬼太郎以外の水木作品も読んでみる気になって、サンワイドコミックス(朝日ソノラマ)やKCSP(講談社)で出ていた短編集を、アニメ版『ゲゲゲの鬼太郎』第2作でアニメ化された短編中心に集めていた。
 さらに、鬼太郎以外の代表作も読んでみようと、『悪魔くん(全)』や『悪魔くん千年王国』などにも手を出し、いよいよ水木作品を本格的に集めようとしていたところに、今回の全集刊行決定の報を聞いたのだった。

 元々、水木作品は色々な単行本で発売されているものが多く、しかも収録内容も全く同じではなく微妙なバージョン違いが含まれたり、リライトされている場合も多い。水木作品を集めるにしても、どれとどれを買えば効率よく作品が読めるのか、よく分からないのだ。
 だからこそ、水木作品初心者の私にとっては、初出雑誌ごとに系統立ててまとめる予定の全集はありがたい。とりあえずはこれを買っておけば問題ないという安心感がある。

 この全集、収録作品・編集内容にはほとんど文句はないのだが、カバーの装丁には少々注文をつけたいところだ。「帯ありき」のレイアウトになっているのが非常に残念だ。これは、F全集にも言えることだが、帯を外した時のバランスが非常に悪くて不格好だ。これだけは、何とかしてほしかった。


 現在、F全集の4期も刊行中だが、これは3期までと違って毎月1冊だ。出費に余裕ができた…と思っていたところに、水木全集の刊行が始まった。特に、今月はまだ集めるかどうか迷っていたので、3冊の購入費用は予定外の出費と言うことになってしまった。この6,000円弱の出費は少々きつかった。
 しかし、今日近所の書店に行って、第1期全33巻の予約を正式に済ませてきた。これで、もう後戻りはできない。来月以降は、想定内の出費と言うことになる。それでも、F全集4期と平行しての購入は少々きついのだが、できないわけはない。どちらかと言うと、購入した全集をどこに置くかという本棚問題の方が重要だ。もう本当にパンク寸前だというのに、今回の全集を始めとして、欲しい本はどんどんと出版される。本当に、どうしたらいいのか。
 とは言え、毎月の楽しみが増えたのはいいことだと思う。人間、楽しいことがなければ生きてはいけない。未読の水木作品を読めるのは、非常に楽しみだ。
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