『笑ゥせぇるすまんNEW』感想

 4月より、「あにめのめ」枠で放映されてきたアニメ『笑ゥせぇるすまんNEW』が、今週で最終回を迎えた。
 ただし、今週の放送は「玄田哲章セレクション 特別リピート放送!」と言うタイトルでの再放送(第7話を放送)であったので、実質的な最終話は先週の第12話となる。
 アニメ旧作『笑ゥせぇるすまん』が放映されたのが1989年から1993年。今回の『笑ゥせぇるすまんNEW』は、それから24年経っての再登場となったわけだが、今回はその感想を書いておきたい。

 まず、この作品のよかった点だが、アニメオリジナルエピソードが頑張っていた点が挙げられる。
 たとえば、「ああ、愛しの583系」「ひげタクシー」と言った、原作に混ざってもおかしくないと思えるほどに藤子A作品らしい雰囲気を構築したエピソードもあれば、「マボロシガイシャ」「チャットルームの王様」など、現代ならではの題材を扱ったエピソードもあり、毎回「今週は、どんな話だろう」と、観るのが楽しみだった。特に、「チャットルームの王様」は、喪黒福造とお客が直接対面せず、PCのディスプレイを介しての「ドーン」が行われた点がユニークだった。
 原作付きのエピソードについては、前作でアニメ化されなかった原作が比較的多く選ばれており、その点で新たな気持ちで作品を観る事が出来た。そんな中でも「かいぶつかします」のサブタイトルは、原作は「怪物貸します」と漢字になっているのをひらがなにした事で、「怪物貸します」と、オチの「怪物化します」とのダブルミーイングになっていたのが面白かった。
 また、主題歌もよかった。オープニング・エンディング共に喪黒福造の決めぜりふである「ドーン」を歌詞に織り込んでおり、まさに本作のための曲となっていてよかったし、特にエンディングの「ドーン!やられちゃった節」は、歌唱を担当した高田純次のキャラクターと歌詞がよくマッチしており、聴いていて楽しい曲だった。

 次に、残念だった点についても、触れておこう。
 特に、アニメオリジナルのエピソードでいくつか観られた事だが、オチがわかりにくい話があった。「走行者天国」などは、その典型的な例だろう。人がめちゃくちゃ増えたのはわかるのだが、それだけなのか、それでさらに「何か」がおこったのか、よくわからなかった。おそらく、脚本よりは演出の「見せ方」の問題だったのではないか。
 そして、これが一番残念だったのだが、特に女性のゲストキャラクターが藤子Aっぽくなかったのは気になった。美女をよりきれいに描きたいのはわかるのだが、あくまで藤子Aキャラとしての美女を追求して欲しかった。
 これが、美女ではない「ニッポン海外旅行」の島井ちか子になると、まだ藤子Aテイストが感じられたので、やはり美女限定での作画の問題だったのではないかと思う。

 といった感じで、とりあえず1クール全12話で終了した『笑ゥせぇるすまんNEW』だが、はたして続きはあるのか。インド版『忍者ハットリくん』のように、2期、3期と続いて言ってくれれば嬉しいところだが。
 もし、続きをやるのであれば、今回選ばれなかった傑作の原作エピソードをぜひ現代に甦らせて欲しいものだ。たとえば、「たのもしい顔」。旧作アニメでは「かんのんさま~」のセリフがなぜか削られてしまっているので不満がある。これを、「完全版」としてアニメしてくれたら、非常に嬉しいのだが。他にも、今回は選ばれなかった『帰ッテキタせぇるすまん』『踊ルせぇるすまん』の原作も、ぜひアニメ化して欲しい。
 アニメオリジナルエピソードについては、今回のような水準でやってくれるなら、期待は出来る。

 それにしても、最近の傾向ではあるが、1クール全12話で完結してしまうのは短すぎる。『笑ゥせぇるすまん』のように豊富な原作がある作品は、最低でも2クールはやって欲しいものだ。やはり、それは2期に期待するしかないのかな。
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『ゲゲゲの鬼太郎』の最終回

 『ゲゲゲの鬼太郎』の最終回というと、どの話を連想されるだろうか。
 私にとっての「鬼太郎の最終回」は、なんと言ってもアニメ第3作の最終話「鬼太郎ファミリーは 永遠に」だ。

 アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』は、今までに5作のシリーズが制作されているが、その中で最終回らしい話が作られる事もあれば、そうでない場合もある。
 各シリーズの最終話を簡単に紹介すると、


・第1作 第65話「妖怪ほうこう」:普通の話で終了

・第2作 第45話「死神のノルマ」:普通の話で終了

・第3作 第108話「鬼太郎ファミリーは 永遠に」:ぬらりひょんとの因縁の対決、最後はみんなで主題歌大合唱

・第4作 第114話「絶体絶命!死神の罠」:死神&ヒ一族の巫女との対決。鬼太郎の母がピンチを救う

・第5作 第100話「さらば父よ! 脅威の天狗王」:妖怪四十七士が選ばれて、まだまだ続くというところで終了


 以上のような感じだ。

 このうち、第5作は話半ばのところで終了してしまったので特殊な例だが、これを除くと、第1作・第2作は普通の話、第3作・第4作は最終回らしい話での締めくくりとなっている。意外な事に、これだけ長きにわたって話数も多いシリーズでありながら、最終回に前後編以上の長い話を持ってきた事は、一度もないのだ。特に、第4作では「妖怪王シリーズ」という4話にわたる長い話をやっているにもかかわらず、それが最終回というわけではない。
 また、たまたまだろうが、「死神」がサブタイトルに2回登場している点は興味深い。第4作はレギュラー悪役であったぬらりひょんではなく、死神を最後の敵に持ってきたのだ。

 そんな中で、個人的には「鬼太郎ファミリーは 永遠に」が印象深いが、それはやはり私にとって「初めて観た鬼太郎の最終回」であるから、なのだろう。
 幼い頃、初めて観たアニメ鬼太郎のシリーズは第2作だが、前述の通り第2作の最終話「死神のノルマ」は普通の話であり、最終回らしくはない。無理に最終回らしさを求めるならば、それまで数度にわたって鬼太郎と対決した死神が、パシャの持つ魂を得てようやく地獄に戻れる事になった点くらいだろうか。
 それに対して、第3作は「初めて本放送で観た鬼太郎」であり、その最終話は「初めて観た鬼太郎の最終回」であったのだ。
 1話完結である点は多少物足りないが、それでも敵味方の妖怪が多数登場しており、最後の敵となった妖怪本所七ふしぎもスケールが大きく、最終回として見応えはあった。
 ちなみに、この最終話の原作となったのは、コミックボンボンに連載されていた『最新版ゲゲゲの鬼太郎』の中の一編である。クレジットは水木しげるではなく水木プロ作品となっている『最新版』だが、この最終話をはじめとして何本かのエピソードがアニメ版に採用されている。

 ただ、「鬼太郎ファミリーは 永遠に」は、第3作本編の最終話ではあるが、第3作にはこの後も「つづき」がある。それが、時間帯を移して放映された『ゲゲゲの鬼太郎 地獄編』であり、全7話と短いシリーズでありながら、鬼太郎誕生の秘密なども盛り込まれた重要なエピソードである。
 その『地獄編』も最終話もきっちり最終回らしいエピソードではあるので、人によってはこちらを「第3作の最終話」と見なす場合もある。
 しかし、『地獄編』の放映時間帯はローカルセールス枠であったため、私の住んでいた名古屋では同時ネットされず、半年ほど遅れて夕方の再放送枠でようやく放映されたのだ。だから、個人的に『地獄編』は、あくまで番外編という印象が強い。私にとっての第3作の最終回は、「鬼太郎ファミリーは 永遠に」なのだ。

 せっかくなので、第4作の最終話「絶体絶命!死神の罠」についても、触れておこう。
 前述の通り、第4作にもレギュラー悪役としてぬらりひょんがいたが、そのぬらりひょんを最終回ではなく一回前の「鬼太郎対三匹の刺客!」(傑作ギャグ編!)で退場させて、最終話には死神とヒ一族の巫女を持ってきている点は面白い。しかし、1話でやるには詰め込みすぎた感のある内容であり、できれば前後編で観たかった話だ。なお、死神役は故・塩沢兼人氏。少々意外なキャスティングではあったが、しょぼくれた死神を好演していた。


 アニメの鬼太郎はそんな感じだが、そもそも原作からしてあまり最終回らしい最終回というのは存在しない。
 強いて最終回らしいエピソードを挙げるとすれば、週刊少年サンデー版の最終回「悪魔ブエル」だろうか。この話では、ヤカンズルを出した責任を取って、鬼太郎親子自らがヤカンズルに飲まれるのだが、外に出るには運がよくても7年はかかるだろうと言われており、悲壮感のある結末になった。ただし、アニメ版(第2作)では何の説明もなく鬼太郎が脱出に成功しており、やや不満の残るアニメ化だった。

 『鬼太郎』は週刊少年マガジンにも二度にわたって(1965~69年、1986~87年)連載されたが、いずれの最終話も最終回らしい話ではない。
 マガジン系列の雑誌で最終回らしいエピソードと言えば、1970年に読みきりで別冊少年マガジンに掲載された「その後のゲゲゲの鬼太郎」がある。
 これは、南方の島で最終的に鬼太郎が酋長に収まってしまう話であり、全鬼太郎エピソードを見ても、この話がいちばん最終回らしいかもしれない。しかし、その後もアニメ第2作とのタイアップで週刊少年サンデーに登場したのをはじめとして、長きにわたって鬼太郎の物語は描かれ続けており、「その後のゲゲゲの鬼太郎」の展開もどこかへ消えてしまっている。

 なお、水木しげる先生が生涯最後に描いた鬼太郎作品と言う意味では、『水木しげる漫画大全集』別巻1「未発表作品/未完成作品・未定稿集」に収録された「墓場の鬼太郎 妖怪小学校」がある。
 幼き日の鬼太郎が、妖怪小学校に四年生として入学したときのことを描いており、タイトルを「ゲゲゲ」ではなく「墓場」にしているあたり、いかにも古い時代の初めて明かされる秘話という感じだが、当然ながら終わりを感じさせるエピソードでは全くない。おそらく、水木しげる先生がまだご存命なら、さらに鬼太郎作品が描かれた事だろう。


 そんなこんなで、一口に「鬼太郎の最終回」と言っても、色々とある。
 今回は、久々に「鬼太郎ファミリーは 永遠に」を観たので、このように最終回についてまとめたくなってしまった。本来なら観られたはずの「第5作の最終回」についてもまだ未練があるが、放映終了からもう10年が経ってしまったからなあ。劇場版「日本爆裂」を最終回と解釈して、我慢するしかないか。
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