データ原口氏に会った

 先週、2月15日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催された「原口正宏アニメ講義vol.4 データ原口とアニメのデータ」に参加してきた。

 原口氏と言えば、「リスト制作委員会」を率いる、アニメのデータと言えばこの人と言われるほどの人だ。
 一番有名なのは「月刊アニメージュ」誌に毎月掲載されている「パーフェクト・データ」だろうか。アニメのサブタイトル・放映日・各話スタッフをもれなく掲載しており、1986年から2015年の現在まで、一月も途切れることもなく続いている。
 アニメージュでは他に、付録として年一回付いてきた「アニメージュ手帳」もよく知られていたと思うが、残念ながらこちらは最近は付かなくなってしまっている。それをロマンアルバムとして単独で商業化したものもあったが、こちらは2000年の一回出たっきりだ。続刊が待たれる。

 私自身についても、主に『ドラえもん』のデータをまとめるに当たって、つねに接してきたのが原口氏の手によるリストや、様々なコラム類だった。
 1985年以前の放送分に関しては、本放送そのままでのリストは掲載されていなかったが、レギュラー放送のBパートや『パオパオチャンネル』での再放送、それに藤子アニメ特番リストなど、色々な藤子アニメ情報が『月刊アニメージュ』誌に載っており、調査を進めて行くにつれて、「この原口って言う人、すごいな」との思いを深めていったのだ。
 また、原口氏とリスト制作委員会の仕事は、近年ではリスト制作や雑誌の記事だけにはとどまらず、DVDソフトのデータ作成や付属ブックレットの記事作成などにも及んでいる。
 私の所有しているタイトルを挙げると、『ゲゲゲの鬼太郎』[第1作,第2作,第4作]、『墓場鬼太郎』、そして虫プロ版の『鉄腕アトム』『悟空の大冒険』『どろろ』などなど。もちろん、他にも様々な作品のソフト化に参加されているはずだ。「このDVD、やけにデータに力が入っているな」と思ったら、大抵はリスト制作委員会の仕事だと思う。
 原口氏はご自身を「テロップマニア」と呼んでいるが、私もテロップマニアの端くれとして原口氏のことは大いに尊敬してきた。前々からこのイベントのことは知っており、何とか参加できないかと考えていたところ、今回は別のイベントで上京する日にちょうどピッタリはまったので、初めて参加できた。

 そんな原口氏の話を初めて直接聞けるのだから、当日はかなり緊張していた。その上、「まだ空いていますよ」と言うことでなんと一番前の席に通されてしまい、かぶりつきはいいのだが余計に緊張してしまった。
 開始の13時が迫るなか、12時50分頃に「原口さんが今、自宅を出たらしい」との声が。あわててtwitterをチェックすると、確かにそういうツイートがあった。結局、原口氏は13時には間に合わず、小黒祐一郎氏(アニメ様)、小川びい氏(声優博士)、そして客としてきていたはずのサムシング吉松氏(アニメーター)の三人で世間話(MXとANIMAXの全てのアニメを4TBのHDDに録画しているおじさんの話)をして場をつないでいた。結局、原口氏が到着したのは、13時15分頃だっただろうか。こうして、原口氏が遅刻してくれたおかげで(?)、すっかり私の緊張は解けたのだった。

 それからの3時間弱は、濃い話の連続だった。まず、幼少期のデータへの目覚めの話があったが、幼稚園時代からテロップに関心を持っていたと言うのだから、すごいの一言。原口氏は生まれながらのテロップマニアだと言うことが、よくわかった。
 意外だったのは、そのテロップマニアとしての始まりの番組が、アニメではなく特撮の『ウルトラマン』だったと言うこと。『ウルトラマン』のあとも、しばらくは特撮メインにリストを作成していたそうだ。まだ録画機器のない時代に裏番組同士の『シルバー仮面』『ミラーマン』の2作品のデータを取るために、番組構成も考えてチャンネルを切り替えて2作ともチェックしたという話は壮絶だ。

 他にも、色々と興味深い話が聞けたのだが、書いているときりが無い。
 ここは、原口氏の「100年後の人のためにデータを作っている」「本放送、画面表示優先主義」という言葉を紹介して終わっておこう。これだけでも、同感だという人は結構いるのではないか。あ、あと一つあった。「わからない部分は勝手に埋めるのではなく、空白にしておくことが大事」、これも非常に考えさせられる。さらにもう一つ、「ナック問題」(ナック作品は現在のOP・EDクレジットがあてにならない)もあったな。この言葉を聞いたときは、思わず吹いてしまった。本当に、ナックの所業にには原口氏ほどの人でも困っているらしい。さすがはナックだ。
 本当に、書いているときりが無いな。『TVアニメ25年史』の制作秘話なんかも面白かった。

 このイベント終了後は、次のイベントの会場に向かうためにあまり時間が無かったのだが、それでも少しだけ原口氏と話をすることが出来た。これも、最前列に座れたからこそだろう。最前列に通してくれた店のお姉さんには感謝しなくては。
 そんなわけで、原口氏に「私は自分のホームページで『ドラえもん』のリストを作っているのですが…」と自己紹介して、アニメドラのテロップやサブタイトルについて原口氏の見解をお聞きしたのだった。長年尊敬していた方だけに、直接話せて感激もひとしおだった。時間があまりなかったのは、実に残念。

 それにしても、これは次回Vol.5にも断然参加したくなった。今度は、別のイベントと抱き合わせではなく、原口氏イベント単独でもぜひ参加したい。そう思わされた3時間だった。
 原口さん、そしてイベントに登場された皆さん、ありがとうございました。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )