2011年を振り返る

 いよいよ、今年もあと3時間ほどで終わり。例年通り、一年を振り返っておく。


 昨年・2010年は私個人に関して色々と激動の一年だったのだが、それに対して2011年は国家的・国民的な規模で大変な年だった。言うまでもなく、3月11日に発生した東日本大震災および福島原発事故と、それに伴う数々の問題のことだ。
 思い返せば、3月11日は金曜日だったので普通に仕事をしていた。地震発生時には立ち仕事をしており、東北から遠く離れた名古屋でも、揺れをはっきりと体感する事ができた。今まで味わったことのない揺れ方だったので、最初のうちは自分がめまいを起こしたのかと思ってしまったほどだった。それほど長く、そして大きな揺れだった。
 揺れ自体は数分でひとまず収まったが、もちろん問題はそれで終わるものではなかった。むしろ、揺れが収まった後の方が本当の問題だった。その日は早めに仕事をあがって退社したが、その途中は関東の友人・知人の消息を知るために、ネット、中でも主にTwitterに張り付いていた。普段は何気なくツイートしているTwitterが、災害時にこんなにも役にたつ物だとは思わなかった。自分のTL上に続々とあがってくる安否情報にほっと胸をなで下ろしつつ、家路を急いでいた。

 そこから先は、あえて書くまでもないだろう。津波に原発事故と、今年を終える時期になっても地震が元で起こった問題はまだまだ片づいていない。自分自身に関して述べると、現状では現地に飛んでボランティア活動をするなどは出来ないが、だからと言ってこのような大災害を放っておいてぬくぬくとしているのは心苦しい。結局、ささやかな額の募金をしただけに留まっている。
 さらに言えば、名古屋に住んでいると、被災地の様子はテレビや新聞等のマスコミを通してしか見ることはなく、普段は地震のことを忘れがちで、どうしても他人事になってしまっている。元々私は関西出身で、東北や関東に住んでいる親戚はほとんどおらず、実際に今回被害にあった人はいない。そして、自分自身は名古屋にいるので、ごくたまに揺れる以外に地震の余波を感じることはない。どうしても、地震の被害を「他人事」として考えがちなのだ。この事には、非常に歯がゆい思いを感じている。
 ともかく、来年になっても被災地の方々の生活が大変であることには変わりはないだろう。年が変わったら心機一転して、なにか微力でも力になることが出来れば、と思っている。


 と、今年はいつになく真面目な内容のまとめになった。基本的に当ブログは自分の趣味の関係に絞って書いているのだが、今年は状況が状況なだけに、地震の話題を避けて通ることは出来なかった。願わくば、来年は気軽に趣味の話が出来ればとは思うが、まだまだそんな状況ではないだろう。
 とは言え、趣味について何も書かないのも味気ないので、軽く触れておこう。「藤子・F・不二雄大全集」は、いよいよ3期に突入した。毎月続々と刊行される嬉しい悲鳴状態なのに変わりはない。また、全巻予約特典の「F.ART」が先日届いたが、一般販売しないのがもったいないと思わされる素晴らしい内容だった。余裕があれば、年が明けてから詳しく感想を述べたい。
 テレビアニメでは、今年は『ゆるゆり』に特にはまった年だった。応援した甲斐があって(?)、第2期『ゆるゆり♪♪』の制作も決定した。来年はこれに加えて『ひだまりスケッチ』シリーズの第4期も予定されており、放送開始が待ち遠しい。

 と言ったところで、この項を終わりにする。このあとは風呂に入って年越しそばでも食べよう。
 皆様、どうかよいお年をお迎え下さい。
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藤子・F・不二雄大全集『ウメ星デンカ』第2巻 感想

 先日、藤子・F・不二雄大全集『ウメ星デンカ』第2巻が発売になった。

 この巻は、第1巻と比べて、それどころか他作品も含めて全集の既刊と比べて画期的な内容になっている。今更のように「こじき」と「人食い人種」を堂々と載せるようになったのだ。
 なんだそんな事かと思われるかも知れないが、この全集ではとにかく特定の言葉に対する自主規制が厳しく行われており、たとえば「人食い人種」を「こわい人」や「怪獣」に変えたり、「こじき」は「物乞い」にするなどの改変がなされてきた。中には、前述の「怪獣」のように不自然に思えるものもあり、読んでいてストレスを覚えることもしばしばだった。特に、「クルパー」については当ブログでもたびたび取り上げたので、ご存じの方もおられるだろう。
 それが、本巻はまるで小学館や藤子プロが吹っ切れたかのように、「こじき」「人食い人種」の連発がそのまま載せられている。この二つの単語を使わないと話が成り立たなくなる内容だから、あえて今回は特例としたのかも知れないが、最近は『SF・異色短篇』第1巻で「きちがい」「きぶり」「パン助」のセリフが復活した例もあるし、遅まきながら自主規制の基準を緩くしたのだと思いたい。

 それにしても、この全集を読む時は、どうしても「差別用語」の自主規制部分に注目してしまう。あまりに気にしすぎている事には自覚があるのだが、それでもいちいちチェックしている自分がいて、ちょっと悲しくなる。本来なら、一読者が気にするほどでない部分まで神経を遣うようになってしまった。せっかくの全集なのだから純粋に作品を楽しむのが一番なのに、なかなかそうできないのは我ながら情けなくなってくる。まあ、それだけ今までの規制が酷かったとも言えるのだが。


 と言うことで、「自主規制撤廃」ネタだけではなんだから、作品にも踏み込んで感想を書いておく。
 まずは、「恋するゴンスケ」「さようならウメ星デンカ」の2本について。絵の違いがあるせいで、どうしても注目してしまう。しのだ氏の絵は『ベラボー』方式ならともかく、作品丸々全部だと違和感が凄まじい。それでもこの2本が全集に収録されたのは、F先生がネームを担当していたと判断されたからだろう。実際、ゴンスケがよく動いていて話は2本とも面白い。それだけに、絵が違うのは残念だが、『ドラえもん』との同時連載で、ペン入れまでは厳しかったのだろう。

 そして、この巻で特に面白いのは「さる山のデンカ」「スイカとギャング」「ロボットゴンスケとスキスキぼう」「わしはねらわれているぞよ」と言ったところ。『ウメ星デンカ』は、どちらかと言うと地味でとぼけた笑いを誘われる作品だと思うが、そんな中で、ここで挙げた話はどれもギャグ漫画として素直にゲラゲラと笑える破壊力を持っている。特に、後の2本はゴンスケの活躍(?)で作品がパワーアップしている感がある。
 次巻の第3巻は、いよいよ「週刊少年サンデー」掲載編になる。『ウメ星デンカ』の掲載誌の中では一番対象年齢が高かっただけに、まとめて読むとどんな印象になるか、楽しみだ。
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シンエイ藤子アニメの特番エピソード

 最近、ネット宅配レンタルで、『プロゴルファー猿』『パーマン』のDVDを借りている。この2作品にはテレ朝チャンネルで再放送されたことがない特番エピソードがあり、それらがセル版DVD-BOXと同様にレンタルDVDにも収録されているのだ。
 わざわざネット宅配レンタルを利用したのは、実店舗では置いている店が全然見つからなかったから。この2作品だけでなく『エスパー魔美』や『21エモン』も、店頭では一度も見かけたことがない。私の廻った範囲では、シンエイ藤子アニメは『ドラえもん』だけか、よくて大長編ドラと同時上映の映画が置いてある程度の店ばっかりだ。『21エモン』以外は巻数が多いから敬遠されているのだろうか。実店舗でもDVDレンタルされていれば、多くの人が旧作藤子アニメを気軽に観られるのに、実にもったいない。


 さて、シンエイ藤子アニメの場合、一口に特番エピソードと言っても大きく二種類に分けることが出来る。一つは最初から特番用に作ったと思われるもので、尺が通常放送とは異なる。もう一つは尺が通常放送と同じで、元々は特番と関係なく作ったと思われる話。前者はともかく後者が特番回扱いされて、テレ朝チャンネルでも放映されないのは何だか釈然としない。
 尺が通常放送と同じエピソードは、『ドラえもん』に多数存在する(詳細はこちらを参照されたい)ほか、把握している範囲では『怪物くん』の「怪物むすこ三人組」「怪物は怪物学校に入学せよ」、『エスパー魔美』の「マイエンジェル魔美ちゃん」、『チンプイ』の「超一流宇宙的デザイナー」「エリさまはキョーボー?」などが該当する。
 これらのエピソードは『ドラえもん』がDVDの「ドラえもんスペシャル」シリーズに収録されているほか、『怪物くん』『エスパー魔美』『チンプイ』については各作品のDVD-BOXに収録されている。しかし、『ドラえもん』『エスパー魔美』以外はレンタル版がリリースされていないので、気軽に観られる状況ではない。

 そして、不思議なことに尺が通常放送と同じ話の中には、本放送時に特番で放映されたにもかかわらず、テレ朝チャンネルで通常放送に混じって放送されているものもあるのだ。こちらも私が把握している範囲で挙げると、『オバケのQ太郎』の「猫のお通り」、『ビリ犬』の「頭が重くなったガリ犬」、『ウルトラB』の「なかよしピッタンコ」などがある。
 こうやって作品の扱いにブレがあるのは、結局のところシンエイ動画内部でどのように管理しているかに左右されるのだろう。それに振り回されるのは視聴者なので、実に困りものだと言わざるを得ない。

 なお、今回DVDを借りて観た『プロゴルファー猿』の「SARU IN U.S.A 激突!猿VSホーク -ワイルドプロ決定戦-」(第20巻収録)と『パーマン』の「バード星への道」(第19巻収録)は、両方とも尺が通常放送よりも長めで、紛れもなく特番のために作られたエピソードだ。私は、2本とも本放送を観たっきりでその後25年以上も観たくても観られない状況が続いていた。
 だからこそ、DVDレンタルという気軽な手段で観られるようになったのは、実にありがたい。欲を言えば、実店舗に並んでいればもっと手軽なのだが、まあ宅配でも観られる事に変わりはないだから、この件についてはこれ以上は触れまい。


 結局、今回のエントリで何が言いたいかというと、今後未ソフト化のシンエイ藤子アニメをDVD化する機会があれば、特番回もきちんと含めた上で、レンタル版も同時にリリースしていただきたいと、そう言うことであります。

 2011年12月の時点でソフト化されていないシンエイ藤子アニメを挙げると、『ウルトラB』『ビリ犬』『ビリ犬なんでも商会』『さすらいくん』と言ったところか。他に『忍者ハットリくん』は中途半端にしかDVD-BOX化されていないし、『オバケのQ太郎』や『笑ゥせぇるすまん』の映像ソフトはVHSのみなので、これらも入れると結構な話数になる。やっぱり全部はとても買っていられないので、レンタル版も出してほしい。
 それに、藤子アニメはシンエイ動画作品だけでなく、東京ムービー&スタジオ・ゼロ制作の一連の作品もある。こちらも『怪物くん』以外はソフト化が手つかずだが、もしDVDが出るのならぜひ欲しい作品もある。
 仮定の話で困っていても仕方がないのだが、これらの藤子アニメが『怪物くん』の時のように連発されて毎月のようにリリースされる状況になったら大変だ。と言うわけで、ソフト化は急がず、かつ確実にお願いします。
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藤子・F・不二雄大全集『ベラボー』感想

 本日は、藤子・F・不二雄先生の生誕日。いつもはこの日に合わせて「ドラちゃんのおへや」を更新しているのだけど、今年は個人的な都合で更新が出来ない。その代わりと言うわけでもないけれど、11月25日発売の藤子・F・不二雄大全集『ベラボー』の感想を書いておく。


 『ベラボー』は、今回初めて単独で単行本として刊行された。しかも、初出順で全話収録だ。
 初出順に読んでみて思ったのは、読む順番が違うだけで印象が全然違うと言うことだ。これほどまで変わるものなのかと驚かされた。これまで、『ベラボー』は希望コミックス版『ポコニャン』(旧版)や藤子不二雄ランド(中期~末期刊行作品)の巻末に穴埋め的な扱いで掲載されたのみだった。後者ではページ数調整の都合があったからなのか、掲載順がメチャクチャだった(詳しくは、下に載せたリストを参照のこと)。特に残念なのは、初期の重要なエピソードである「ベラボータウン完成」を後回しにしたために、ベラボータウンの設定や人間関係が読みとりづらくなっていたことだ。
 そんな状況だったせいもあって、『ベラボー』は全体像がつかみにくい作品だったが、初出順に読んだことで、ベラボーと一郎との出会いから始まって、ベラボータウンの町長に一郎が就任して子供だけの地下の町が完成するまでを、きちんと一連の流れとしてとらえることができた。作品全体の流れだけでなく、各話でそれまでのエピソードに何気なく触れている部分も多々あり、それらもちゃんと「ああ、あの話のことか」と、読んでいて自然と思い出されるようになり、FFランドの巻末でバラバラに読んでいた時よりも、数段面白く感じた。

 それにしても、ベラボータウンは実に魅力的な町だ。単なる子供の秘密基地としてだけではなく、各々が商売をして経済活動が行われており、小さな社会が成り立っているあたりは、スケールの大きな「お店やさんごっこ」と言う感じで、強く憧れる。
 また、この作品では『ドラえもん』などに代表される秘密道具的なアイテムは登場せず、その役割をベラボー自身とベラボータウン(特に、イメージボタン)が担っている点もユニークだ。イメージボタンは下手をすると万能の装置になってしまって面白くなくなるおそれがあるが、あくまでボタンを押した人の想像できる範囲のものしか作り出せないと言う制限を付けることで、多くの話でイメージボタンの存在が活かされている。

 こんなにも面白い作品が今まで単独で単行本化されていなかったのは、実に不思議だ。脇キャラをしのだひでお氏が描いている点は本作の大きな特徴だが、それが単行本化にストップをかける要因になったのだろうか。
 ここからは勝手な仮定の話になってしまうが、もし作画協力がしのだ氏ではなく、旧作『パーマン』のように藤子A先生であったとしたら、単純に「藤子不二雄作品」という扱いで、もっと早くに単行本化されていたのではないだろうか。個人的には、一つのページにF先生画のキャラとA先生画のキャラが一緒にいても、全く気にならず同一作品として見ることが出来るが、しのだ氏のキャラは浮いて見える。
 それでも、本作に関しては昔から「こういうもの」だと思って読んでいたせいもあって、今ではしのだ脇キャラにも違和感はないが、初めて読んだ時には「なんだこりゃ」と思ったような気がする(が、よく覚えていない)。

 ともかく、今回の単行本化で、あらためてこの作品には非常に楽しませてもらった。ただ、一つだけ残念な点を挙げるとすれば、それは明確な最終回が描かれなかったことだ。ベラボーを地球に連れてきた宇宙人は三万年経たないと帰ってこないのだから、ベラボーが地球を去る内容の最終回にするわけにもいかなかったのかもしれないが、何らかの区切りになるようなエピソードは読みたかった。


 感想はこれで終わりだが、それとは別に、今回の全集版で一つ疑問に思った点がある。
 「ベラボータウン完成」は藤子不二雄ランドでの再録時には2回に分けて掲載されており、その1回目最終ページ(全集では92ページにあたる)の最後のコマは次回へのつなぎのために描き下ろされているのだが、今回の全集ではそのコマは未収録で、それどころか存在自体全く触れられていない。今までは、F先生の手による描き足しだとばかり思っていたが、よくよく見返してみると絵がちょっと微妙な感じだ。はたして、このコマがF先生によるものなのか否か、実に気になる。
 そんな訳なので、この件の真相をご存じの方がいらしたら、ぜひ答えをご教示下さい。



(おまけ)
「藤子不二雄ランド」版『ベラボー』掲載リスト

 ・登場編1(第1話前半):「新編集パーマン」7巻
 ・登場編2(第1話後半):「新編集パーマン」8巻
 ・すてきな地下基地1(第2話前半):「映画原作大長編ドラえもん」4巻
 ・すてきな地下基地2(第2話後半):「新編集パーマン」9巻
 ・ベラボーの恋(第18話):「新編集パーマン」10巻
 ・かみなりじいさんをやっつけろ(第17話):「映画原作大長編ドラえもん」6巻
 ・美人アンドロイドに大さわぎ(第16話):「T・Pぼん」1巻
 ・おとうさんをこわがらせろ(第14話):「T・Pぼん」2巻
 ・ベラボーの地獄めぐり(第9話):「ドラえもん」37巻
 ・ベラボータウン完成1(第3話前半):「ミラ・クル・1」
 ・ベラボータウン完成2(第3話後半):「ドラえもん」38巻
 ・ベラボータウンを守れ(第4話):「ドラえもん」39巻
 ・無人島で海水浴(第5話):「ドラえもん」40巻
 ・ひょう流者を助けろ(第6話):「オヤジ坊太郎」1巻
 ・ニセもの現る(第11話):「オヤジ坊太郎」2巻
 ・五億円犯人をつかまえろ(第10話):「フータくんNOW!」
 ・火星へ一番乗り(第15話):「異色SF短篇」1巻
 ・ゆうれい谷で撮影しよう(第12話):「異色SF短篇」3巻
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