はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

またしてもデータ原口氏イベントへ

2015-04-22 22:04:10 | アニメイベント
 2月15日には、阿佐ヶ谷ロフトAで開催された「原口正宏アニメ講義vol.4 データ原口とアニメのデータ」に参加してきたことは既に書いたが、今回はその次の回にあたる「原口正宏アニメ講義vol.5 TVアニメ50年史編集会議」が開催されたので、またもや参加してきた。前回は別イベントと合わせての上京だったが、今回はこのイベント単独目的での日帰り上京だ。それだけ、前回のイベントは楽しかった。

 今回のイベントは3部構成で、第1部は「TVアニメ50年史編集会議」、第2部は「質問コーナー」、第3部は「資料発掘コーナー」となっていた。
 全体的に極めて濃い話題ばかりだったが、今回もほぼ会場は満員。世の中に、これだけの数の人が自分と同じような嗜好(一部分だけかも知れないが)を持っていると思うと、根拠はないが何となく心強くなってくるというものだ。


 第1部は、原口・小黒両氏による「ガチの編集会議」となっており、発売予定の『TVアニメ50年史』について、現状と今後の作業など相当に細かいところまで話し合われた。ページの余白について原口氏が「コラムで埋めます」と言うのだが、その「コラムで埋める」スペースが異常に多くなってしまっており、これは「笑いどころ」の一つかと思ったのだが、そこからどんどんと濃い話が発展していったのだった。
 ツッコミどころは随所にあるものの、基本的には原口・小黒両氏のトークを聴くにつれて、お二人が本当にアニメが好きなんだと言うことがひしひしと伝わってきて、心地よいものだった。芹川有吾氏の仕事について話すお二人は、本当に幸せそうだったなあ。「名前を変えてもバレバレなんだから」を、何回聞いたことだろうか。
 肝心の『TVアニメ50年史』は、「WEBアニメスタイル」に連載されたリスト制作委員会の「TVアニメ50年史のための情報整理」に加筆修正を加えたものを「TVアニメ50年史[第1版]」としてまとめるということで、かつての『TVアニメ25年史』とは違った感じの本になるようだ。原口さんのアニメ講義の時に教科書として使える本を、と聞いて「なるほど」と思った。
 私は今まで、「アニメポケットデータ2000」は、単に『月刊アニメージュ』の付録だった「ポケットデータノーツ」(1998年版まで)の独立商業単行本版だと思っていたが、原口氏によれば、『TVアニメ25年史』に続く本をあの時期に出したかったが出来なかった、そのせめてもの代わりと言うことで出された本なのだと言う事で、これは今回初めて聞いた。
 そんなこんなで、『TVアニメ50年史』に賭けるお二人の情熱は伝わってきたが、まずは「第1版」を出してミスはその後に訂正しようという小黒氏と、出すならなるべく完全に近い物をと言う原口氏で考え方が異なる部分があり、なかなか難しそうだなと思わされた。
 とりあえず、一番早ければ8月に出したいと言う事だったが、はたしてどうなることやら。


 第2部「質問コーナー」は、事前にネットで募集した質問に原口氏が答えるというもの。『GUN道 MUSASHI』のタイトル表記問題や『UFO戦士 ダイアポロンII アクションシリーズ』の謎についてなど、色々な質問が寄せられていた。
 そんな中、私の出した質問もとりあげられた。内容は「大山版『ドラえもん』の特番における通し話数は、リスト制作委員会ではどのような振り方をしているのですか」と言うもの(原文はもっと長いですが、要約しました)。この質問に対して、原口氏は非常に丁寧にご回答下さり、恐縮してしまった。
 まずは「シンエイ動画はコンテNo.で作品を管理している」と言う話から始まって、「放送枠が金曜日に移って、コンテNo.がリセットされた」→「そのままだと新旧で同じNo.が付いて混乱を招きかねない」→「便宜上金曜版の通し話数として、帯番組時代は全617話なので、その続きとして618話から順に話数を付けた」と、話の前提となる話数の付け方から説明して下さり、その上で「金曜日の特番は、特に初期は通常放送の延長的なものだったが、お正月などの特番はパーマンなども出てきてスペシャル感がある」→「金曜日の特番は通常放送と同じに通し話数を振り、その他の特番は別扱いとした」と、言う流れでドラの特番話数についてきっちり説明していただいた。本当に、のどを痛めている特にこんなに喋らせてしまって、原口氏には恐縮するしかない。本当に、ありがとうございました。
 それにしても、原口氏の誠実さには本当に驚かされた。上で挙げた『GUN道 MUSASHI』のタイトル表記問題については、「もし、次回予告で違う読み方(「MUSASHI GUN道」など)があったら、それが製作側の意思と言う事なので、一応全話(の次回予告)を観てきました」と、さらっと言ってしまうのだから、すごい。GUN道の次回予告25連発なんて、頭がどうにかなりそうだ。いや、それはまた別の話か。
 とにかく、第2部は原口氏の底知れないところを見せつけられた時間だった。いわゆる「作画崩壊」についての意見も求められていたのだが、それに対する原口氏の解答は、少しでもそのアニメの「いいところ」を見つけてやろうという原口氏のアニメ鑑賞姿勢を表したもので、感動してしまった。

(※原口氏の解答を、文意を曲げない程度で要約させていただきました。何か誤解が生じたなら、それは私の責任です)



 最後の第3部「資料発掘コーナー」の題材は、白黒版『鉄腕アトム』OP・EDの使用時期について。
 こう聞いて、アトムのOP・EDについては現在出ているDVD-BOXが決定版となったのでは…と思われるかたも多いだろう。私も、そう思ってしまった。しかし、今回紹介された資料は、DVDのさらに上を行く物だった。何かと言うと、さる人が保存していたオープンリールでの白黒版『鉄腕アトム』本放送時の録音だったのだ。これによって、今まで推測で判断されてきた部分の誤りがはっきりしたのだから、やはり本放送は大事なのだと思い知らされた。
 具体的に何が違っていたのかというと、「OPが曲のみから歌入りになるよりも前に、実はEDの方が先に歌入りになっていたのだ!!!」と言う事。つい感嘆符を連発してしまった。これに関しては、わかる人だけ驚いて下さい。白黒『アトム』のDVD-BOXを買っておいてよかった。いきなり「実は歌入りはEDが先で…」と言われても、どれほど驚けたかわからないぞ。
 そして、この「本放送音声」のさらにすごいところは、現在に至るまで一度もソフト化されていない「次回予告」までが聴ける点だ。次回予告はフジテレビの局アナが主題歌のインスト版に合わせて予告ナレーションを読み上げる形式だったため、素材として残っていないわけですな。アナウンサーのあくまで淡々と冷静な声で、未来の奇妙な事件が紹介されるこの予告は、かなりインパクトがある。これが聴けただけでも今回のイベントに参加した甲斐はあったというものだ。
 なお、この第3部については白黒『アトム』を流すことはちゃんと虫プロに許可を得ているそうで、よく考えたら有料イベントなんだから当然か。個人的には、有料という意識はほとんど無くなってしまっているが。



 と、このように非常に濃密な3時間だった。この3時間のために、交通費2万円(新幹線往復)ちょっとを出しても、まったく後悔はない。
 次回は6月と言う事で、出来れば参加したいところなのだが、この時に限っては個人的な用事があって参加できない。実に、残念だ。予定通りに8月に『TVアニメ50年史』が出るとしたら、それに合わせてまたイベントはあるだろうし、それまでの辛抱かな。