藤子・F・不二雄大全集 第1期 第8回配本 感想

 今年は毎月、全集の感想を書くぞと意気込んでは見たものの、2回目にして早くも次の新刊が出るまでに間に合わなかった。お恥ずかしい。
 と言うわけで、今回は2月発売分の二冊の感想です。



・『エスパー魔美』第3巻

 本作には単行本未収録作品がないためか、F全集は「カラーページ収録」を売りにしているが、今回はカラーページも3ページしかないのでちょっと寂しい。全集ならではと言えるのは「学園暗黒地帯」後編の扉ページと「ずっこけお正月」の未使用イラストが収録された事くらいか。もちろん、これはこれで貴重な物なのでありがたい。
 未収録云々を抜きにした話の出来については、あらためて何も言う事はない。傑作エピソード揃いで何度読んでも面白い。この巻では、「雪の降る町を」「大予言者あらわる」「地下道おじさん」「サマー・ドッグ」あたりが特に好きだ。
 逆に、ちょっと残念だと思うのは「学園暗黒地帯」。前後編にわたって「言論の自由」と言う大きな問題提起がなされたまではよかったが、オチはワンダーガールで無理矢理結末を付けた感じなのは残念だ。それとも、現実では簡単に片付けられるような問題ではないからこそ、あえてあの解決方法を魔美にとらせたのだろうか。



・『海の王子』第2巻

 「少年サンデー」掲載分の後編。この巻では、「砂漠の戦艦シーラカンス」がよかった。海の王子と同年代の敵・マリン少尉との戦いは、F画の少年とA画の少年の対決なので絵として面白く、そして単純に楽しくもある。
 また、「カメレオン4D」は四次元世界というSFではおなじみのアイディアを扱った作品だが、四次元世界の描写は『キテレツ大百科』の「冥府刀」に登場した異次元世界に通じる雰囲気があって興味深い。オチの0次元は『最後の世界大戦』や『21エモン』でも登場するお馴染みのネタだが、やや唐突に出てきた感は否めない。

 この作品で気になるのは、両先生の分担だ。基本的に味方側がF画・敵側がA画なのは見れば一目瞭然だが、アイディアやネームの分担はどうなっていたのだろう。前述の「カメレオン4D」で言えば、前半の四次元世界の描写はいかにもF先生が描きそうなネタだが、最後になって唐突に「0次元」が登場するあたりはA先生流のアドリブ感覚で描かれたように思える。一つのエピソードでも途中でネーム担当が変わっていたのだろうか。このあたり、つっこんで読み解いてみるのも面白い。
 ちなみに、『愛…しりそめし頃に…』によると、連載第一回のネームはA先生が担当して、その後は一回ごとの交代制だったとなっているが、虚実入り混じったストーリーなので素直に信用は出来ない。せっかく正真正銘の二人で一人「藤子不二雄」の作品なのだから、どうせなら3巻の解説はA先生に合作体制について詳しく語っていただきたいものだ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「ドラちゃんのおへや」模様替え

 昨年から少しずつ、「ドラちゃんのおへや」の更新準備を進めていたが、ようやく一区切りを付けて、今日更新する事が出来た。

 今回は、サイトデザインをスタイルシートに完全対応させる事を第一の目的としていたので、内容面での変化はあまりないが、それでもHTMLを書き直すだけで結構な手間になり、一年以上かかってしまった。昨年の更新は、まず新デザインでページを作ってから従来のスタイルに書き直していたので二度手間になっていたが、これでようやく内容の充実に集中して力を入れる事が出来る。
 内容的には変化が少ない中で、テレビアニメのデータは比較的変更点が多い。DVD-BOX「ドラえもん タイムマシンBOX 1979」のブックレットを元にして帯番組時代のスタッフデータを可能な限り追加・訂正したし、1996・1997・2005年放映分については本放送版のエンディング・クレジットより原画と声の出演のデータを加えている。
 ビデオテープからダビングしてPCに動画ファイルとして保存したおかげで、エンディング・クレジットが参照しやすくなった。原画と声の出演については、1998~2004年放映分も録画データの整理が出来次第、追加していきたい。

 「藤子・F・不二雄大全集」の発刊で原作漫画のデータも大きく修正する必要が生じているが、こちらはひとまず様子を見る事にして、今のところ50音順作品リストとブランド別単行本リストに既刊分のデータを加えたのみにとどめている。
 いずれ全集の『ドラえもん』が全巻揃ったら、アニメデータに記載している原作の単行本収録状況などをまとめて修正する事になるだろう。


 とにかく、長期間続けていた作業が一段落したので、肩の荷が下りた気分だ。
 しかし、更新したいネタは色々と準備中なので、近いうちに次なる更新の準備に入りたい。そろそろ旧ドラのコーナーを何とかしたいな。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

映画『ドラえもん のび太の人魚大海戦』感想

 先日、ドラえもん映画の新作『ドラえもん のび太の人魚大海戦』を観てきた。
 今回は、短編原作をベースにしたオリジナル作品であり、この手法で制作された作品は、アニメドラのリニューアル後に限ると2008年の『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』に続く2作目となる。

 最近のドラ映画は、2008年の『緑の巨人伝』は後半が意味不明の展開、昨年の『新 宇宙開拓史』は原作と登場人物がひどく改悪されていたと言った有り様だったので、オリジナルだろうとリメイクだろうと映画新作に期待してはいけないと思うようになっていた。
 だから、今年の『人魚大海戦』を観るにあたっては、期待値を低くするどころではなく、全く期待しないでおいたのだが、それでもなお「チケット代と映画を観た時間をムダにしてしまった」と、観た事を後悔せずにはいられない作品だった。


 ここから、映画の具体的な感想を書いていくが、正直言って今回はどう感想を書いていいものか困った。
 同じオリジナル作品と言う事で『緑の巨人伝』と比較してみると、『緑の巨人伝』は渡辺監督の作家性が出過ぎて、映像の「見せ方」に力を入れすぎたが故に、後半の展開が意味不明になってしまったのだと感じた。それに対して、『人魚大海戦』は監督をはじめとするスタッフが何をやりたいのか、よくわからなかった。部分部分については「こう見せたいのだろうな」と言う意図は分かるし、『緑の巨人伝』のように「今、何が起こっているのか理解できない」と言うような事はなかった。しかし、全体の話の流れは非常にチグハグで、一本の映画として何をやりたいのかが伝わってこなかった。

 結果として、作品全体としての印象は散漫で、鑑賞からまだ一週間も経っていないのに、どのように感想を書いていいかわからなくなったというわけだ。『緑の巨人伝』は、意味不明だが映像としての印象は強かった。つまり、私にとって『緑の巨人伝』は「積極的に批判したくなる失敗作」で、それに対して『人魚大海戦』は「批判する気も起こらない失敗作」と言える。
 だからと言って、これで感想を終えてしまっては、「具体的に何が悪いのかも指摘できない者に、批判する資格はない」と言われてしまうので、思いつくままに順不同で今回の映画の不満点を述べていく。

 まず、何と言っても最も残念なのは「伏線の放り投げ」だ。所在不明の伝説の剣や、その鍵となる五つの星などの重要そうな設定を仕込んでおいて、「祈ったら剣が出てきました」なのだから脱力してしまう。しかも、なぜか都合よく前線に出てきていた敵の親玉の前に剣が出てくるのだから、ご都合主義にしてもあんまりだ。
 さらに、伝説の剣は「宇宙を支配できる」ほどの巨大な力を持っており、だからこそ人魚族も怪魚族も手に入れようとしていたはずなのに、ドラえもんの出した「名刀「電光丸」」にあっさり負けてしまうのだから、開いた口がふさがらない。
 そもそも、人魚族・怪魚族を異星人としてSFっぽい設定にしている割には、物語のキモである剣に関する描写が完全にオカルトになってしまっているのはいただけない。オカルトっぽい描写があっても、きちんと(作品内の設定としては成り立つ)説明をして納得させられるのが『ドラえもん』ではなかったのか。

 また、後半で描かれた人魚族と怪魚族の戦闘は全く緊張感がなく、観ていてあくびが出そうになるほどだるい映像だった。
 こんな事になっている一番の原因は、演出の見せ方が悪いという事なのだろう。緊迫感を出すべき最終決戦の場面でドラ・ドラミの黒焦げなんてギャグを入れても逆効果だ。
 さらに、登場人物全員が非常に頭が悪く、突っ込みどころ満載のボケた行動をとっていたのもよくなかった。「女王から全権を任された」ソフィアが先頭に立って白兵戦を行うのも不自然だし、それに合わせるかのように敵のボス・ブイキンまで出張ってくるのも変だ。ブイキンにあまりにもボスとしての貫禄がないので、後ろには真の親玉が控えているのではないかと勘ぐってしまったが、そんな事もなく話が終わったので、拍子抜けだった。

 とどめに、何ら共感できない「友情」「涙」の押し売りには、完全に白けさせられた。ソフィア姫とは一緒に遊ぶ場面が描かれていたので、友情を描いても
まあ不自然でないが、のび太達とは何らいい関係にはなかったハリ坊との友情が唐突に描かれたり、ずっと厳しかった女王が前触れもなくソフィアに「愛しています」と言ったりする場面には呆れた。言葉にすればその場面に説得力が出ると言うものではないだろう。
 過去の作品を引き合いに出す事はしたくないのだが、あえてここでは触れておこう。『ドラえもん のび太の大魔境』で、ジャイアンがペコと共に敵地に乗り込もうとして、結局全員がまた一緒になるまでの場面とは、悪い意味で好対照だった。『大魔境』のこの場面では、主題歌「だからみんなで」が流れており、セリフは全くない。しかし、画面を観ていると、自然とジャイアンやのび太達の心情が伝わってくる。原作も含めて、初期大長編の中でも屈指の名シーンの一つだ。そのような場面を過去に観ているからこそ、今回の口先だけで感動させようとするシーンのオンパレードにはがっかりして、またうんざりさせられた。


 他にも、いい加減「あったかい目」はしつこくて鬱陶しいとか、ハリ坊やトラギスはいらないとか、架空水の影響の仕方が一定でないとか、怪魚族はそれほど特に「醜い」とは思えないとか、フエルミラーで何で色違いものもが出てくるんだとか、突っ込みどころはたくさんあり、挙げていったらきりがない。
 今回の作品は、残念だが子供だましの域にすら達していなかったと思う。もちろん、子供向け映画は真摯に子供に向き合って作られた作品が一番で、なおかつ大人も楽しむ事が出きれば言う事無しなのだが、それが出来ないにしてもせめて子供だましレベルにはしてほしかった。
 最後の新作予告を観る限り、来年はあの有名旧作のリメイクであるのは間違いないだろう。非常にファンが多くて名作と言われる作品なだけに、いまから不安で仕方がない。

 最後に、今回の映画で「よかった」と思えた部分も挙げておこう。芸能人の声の出演で浮いている人がおらず自然に聞けた事と、海の作画が綺麗だった事は、よかった点だ。肯定できる部分がこれだけしか無いというのも寂しい話だ。
 あ、武田鉄矢の歌を忘れていた。歌自体は悪くないのだが、流す場面に無理があって、あまり印象がよくなかった。と言うか、あの歌はわさドラの雰囲気からは浮いていた。もはや、ドラ映画は武田鉄矢の歌を流すべきものではないのだろう。
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )

ついに地デジを導入

 ついにと言うか、それともようやくと言うべきだろうか、地上波デジタル放送の視聴環境を整えた。
 今のところ、画質を考えなければ地上波アナログ放送でも特に視聴に支障はないのだが、今後は地デジ移行を促すテロップがどんどん増えて大きくなる(参照)ので、テロップが視聴の邪魔にならない今のうちに地デジに移行しようと思っていた。そこへ、あるきっかけがあって、地デジ導入を真剣に考えるようになった。
 と言うわけで、一念発起して地デジの受信・視聴環境を、一週間ほどかけて整えた。ちょっと手こずったが、ようやく安定して視聴&録画ができるようになった。


 地デジを観られるようになったらまず確認しようと思っていたのは、アニメ『ドラえもん』だ。
 最近のテレビアニメはほとんどが16:9の画角で制作されており、アナログではレターボックス放送になるが、『ドラえもん』は上下に細めの黒帯を付けて左右を少しカットした中途半端な状態で放映されている。わさドラが始まってから5年近くになるが、この状態はずっと気になっていた。

 さっそく、3月5日の特番をデジタル・アナログの両方で録画して、OPで気になっていた部分を見比べてみた。




上・アナログ、下・デジタル


 この場面は、アナログでは左にちょっとだけ見える「もの」が何なのかわからなかったが、地デジを見てやっと映写機だとわかった。

 アニメ本編でも色々とカットされている箇所がのがわかったが、全体を通して見てみると、人物を中心寄りに配置している場面と、そうでなく最初から16:9の画角のみを前提に作ったと思われる場面が混在しているようだ。これも、移行期ゆえの混乱だろうか。他のアニメだが、以前に16:9と4:3の両方の画角を意識して描かれた絵コンテ(4:3でサイドカットされる部分に点線が入っている)を見た事がある。わさドラの中途半端なサイドカットでも、やはり切られる部分を考慮しているのか、気になる。わさドラの絵コンテを見てみたいものだ。

 他に、地デジで個人的に有りがたいのは、OPクレジットがくっきりしていてちゃんと読める点だ。
 わさドラのOPクレジットは、アナログ放送では字が潰れてしまって拡大しても判読が難しい事が多く、スタッフリストを作る時に苦労していた。特に、夏季限定「ドラえもん音頭」EDはフォントが小さくて大変だったが、これからはクッキリ綺麗な状態で読める。


 以上のように、『ドラえもん』に関しては、地デジの導入でかなり視聴環境が改善された。
 わさドラはHD制作なのに今のところソフトはDVDしか出ていないので、その点でも地デジの録画を保存する事には意味がある。深夜アニメは今年に入ってBDのリリースがかなり増えてきたが、『ドラえもん』のような子供向け作品ではまだまだだ。もっとも、ドラの場合はたとえBDが出たとしても本放送の状態そのままで収録される事はないだろうから、いずれにせよ本放送の録画は手放せない。

 『ドラえもん』以外のアニメでの収穫となると、『ひだまりスケッチ×☆☆☆』のOPで、らすちゃん画伯の描いたウメスの絵をしっかり確認できたのはよかった。小さい絵なので、アナログでは潰れてしまって普通のウメスと区別が付かなかった。
 おそらく、今まで気が付いていないだけで、他にもこのような見逃している細かいネタはあるのだろう。この一週間、試験運用として色々と録画してみたが、HD制作&放送されている番組は、さすがにアナログ放送とは全然画質が違う。三重テレビのローカルニュースまで無駄にHD画質なのには笑った。



 何はともあれ、地デジの環境が構築できて気分的にも落ち着いた。これで、ある日突然アナログ放送のテロップが巨大化しても問題はない。
 『ドラえもん』は今後欠かさず地デジで録っていくつもりだが、ドラ以外で観ているアニメは大半が3月一杯で終わるので、それらについてはアナログで録画を続けて、4月新番組から本格的に地デジで録っていくつもりだ。
 地デジはこれでいいとして、後はBSだな。この勢いで、3月中にはBSデジタル用のアンテナを設置してしまいたい。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )