『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』感想

 本日、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が公開されたので、さっそく鑑賞してきた。
 鬼太郎の映画としては、前作の『ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』が2008年12月公開だったので、実に15年ぶりと言うことになる。日本爆裂も初日に観て感想を書いたので、今回も書いておきたい。
 言うまでもなく、ここから先は内容におもいっきり触れることになるので、未鑑賞の方などはご注意を。







 まず、最初に感想を一言。「なんだか、すごいものを観たなあ」という感じだ。

 予告編やティザービジュアルを観て、「どうも水木作品と言うよりも横溝正史の世界っぽいんじゃないか」という声をよく聞いたが、そこについては正直よくわからなかった。お恥ずかしい話だが、未だ横溝正史作品を読んだことがないのだ。だから、比べようがない。
 ただ、哭倉村や龍賀家の人々を取り巻く雰囲気は、たしかに水木しげる作品ではあまり味わうことのなかった感じではある。いわゆる古くからの因習に囚われた村と一族というのは、非常にわかりやすかった。

 肝心のストーリーは、これまでよく知られていた「鬼太郎の誕生」の物語を、非常に大きくアレンジした内容。アレンジしすぎて、原作要素は鬼太郎が生まれることと血液銀行員の水木が関わることくらいしか残っていないんじゃないかと言う感じではあるが。
 さらに、水木が復員兵という設定で『総員玉砕せよ!』の要素まで入っているのには驚いた。たしかに、昭和31年という時代設定であれば無理のないことではある。

 今回、鬼太郎は主人公ではなく脇役で、メインを張るのは前述の水木と「ゲゲ郎」こと鬼太郎の父の二人。鬼太郎は冒頭と最後にちょっと登場するだけだ。
 鬼太郎の両親が病気にかかる前にどんな容姿をしていたかは、原作では一切描かれていない。だからこそ、映像化で補完できる部分でもあり、「まくら返しと
幻の夢」(テレビアニメ版第6作・第14話)のようなエピソードも生まれたわけだ。
 今回の「鬼太郎の父」は「まくら返しと幻の夢」で登場したものを元にしつつ、また新たにデザインされており、より鬼太郎に近いイメージとなっている。さらに、鬼太郎の母も第6作のねこ娘に似た感じの美女であったことになった。これには、けっこう驚かされた。最終的に鬼太郎の父の前に現れたときは、原作でもおなじみのあの顔に近い顔で描かれていたが。

 本作においてはアクション要素はあまりないんじゃないかと思っていたが、実際に観てみたらけっこうアクションシーンも描かれていた。
 狂骨や裏鬼道との戦いはなかなか見応えがあったし、BGMではおなじみの「ゲゲゲの鬼太郎」のメロディーが使われていた部分もあったので、鬼太郎ではなく鬼太郎の父が戦うとこんな感じなのかと、非常に新鮮味があった。

 ストーリー展開としては、何度か話が大きくひっくり返って、そのたびに驚かされた。
 ただ、龍賀家に隠された秘密のおぞましさに、そしてラスボスの時貞の醜悪さにと、かなり陰鬱とした気持ちになったのも否定できない。ここまでやるかという感じではあったが、映画でやるならと言うことで実際にここまでやってしまったんだろうなあ。
 観始めたときは、鬼太郎の父とこの一族がどうつながるのかと思っていたが、実際には幽霊族の宿敵みたいなやつらだったので、これにも驚いた。現代を舞台にしたら、ここまではできなかっただろう。その意味でも、昭和31年という時代設定には大いに意味があった。
 また、先ほども少し触れたが、ラスボスの時貞は醜悪さのかたまりというような人物。水木がそこに戦時中の上官を重ね合わせる描写は、特に印象的だった。

 まとめると、鬼太郎の誕生秘話としては非常に重く、しかしそれだからこそ見応えのある作品だった。
 なお、本作を観ている途中から、「エンディングに流れるのは「カランコロンの歌」しかないんじゃないか」と思っていたのだが、実際にエンディング曲には「カランコロンの歌」のワンフレーズが取り入れられており、まさに我が意を得たりという感じだった。やっぱり、この映画にはこの曲がぴったりだ。

 それにしても、本作と「日本爆裂!!」の両方を同じ古賀豪氏が監督しているというのも面白い。まるで方向性の違う2作、見比べるとより面白いかもしれない。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« Nintendo Swit... 2023年の終わりに »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。