いよいよ今週の金曜日から、AT-Xで「チャージマン研!」の放映が始まる。
この作品の魅力については以前のエントリを読んでいただくとして、「チャージマン研!」は、謎の多い作品だ。
まず第一に、作品に関わったスタッフ・キャストすらはっきりしていない。
OP・EDテロップである程度のスタッフはわかるが、脚本家や絵コンテ担当はテレ朝チャンネルの「シンエイアニメシアター」のように数人がまとめて表示されており、誰がどの話数を担当したかはわからない。シンエイ藤子アニメはアニメ雑誌で各話スタッフを調べる事が出来るが、本作はそれも無理だ。
そして、出演声優も誰一人として名前がわからない。EDに「声の出演 劇団 近代座」としか表示されていないからだ。
DVDのジャケットやAmazonのページでは、沢田和子(現・沢田和猫)や藤田淑子が出演していた事になっているが、これはまるっきりの間違い。本編で声を聞けばわかるが、本作では他のアニメで聞き覚えのある声優は一人もいない。
それなのに、なぜ沢田さんや藤田さんが出ている事になっているのだろうか。
アニメ関係の資料で本作のデータを最初に載せたと思われるのは、杉山卓「テレビアニメ大全集2」(秋元書房)だが、この本で既に二人の名前が出ており、また放映期間も間違っている。
この「テレビアニメ大全集」シリーズはデータの間違いが多く、「新オバケのQ太郎」でQ太郎役を小原乃梨子と書くなど、目に余るほどのミスもかなりあるし、細かい間違いを探していけばきりがない。
想像するに、他に資料が少ない作品については、この「テレビアニメ大全集2」のデータが後世の本でも使われてしまい、その結果として誤った情報が広まってしまったのだろう。「テレビアニメ25年史」ですら、研役・沢田和子はそのまま載っている。さすがに、この本では放映期間は正しくなっているが。
じゃあ、一体研の声は誰がやっているのかとなると、「わからない」としか言いようがない。何しろ、他のアニメで聞かない声なので、「この声なら○○さんだろう」と推測する事すらできないのだ。
唯一の例外として、「アニメの王国」版DVDに同時収録された「透明少年 探偵アキラ」(パイロットフィルムをそのまま収録?)には本作とほぼ同じメンバーが出演していると思われるが、こちらはスタッフ表示が一切出ないので何の参考にもならない。
「劇団 近代座」の面々は、普段は声優として活動しておらず、本格的なアニメ出演はこれ一作だけだったのだろう。本作の声優陣を知るには、1974年当時の「劇団 近代座」を知る人に取材するしかない。もし、DVD-BOX化の時に「ゲゲゲの鬼太郎」並みに気合いを入れたブックレットを作っていれば、そんな調査も実現したかも知れないが、実際のBOXには本編ディスク以外に一切の付属物はない。
ちなみに、これまで確認した資料の中で、唯一「月刊アニメージュ」1979年4月号の「NTV&TBSアニメ16年史」では、研役として沢田和子ではなく「宮川節子」と言う名前が載っている。この人が他のアニメに出ていれば声を比較できるのだが、調べた限りでは本作以外にアニメ出演はないようだし、そもそもこの時期に声優・俳優として活動していたのかどうかも定かでない。
ただ、少なくとも研の声が沢田和子でない事は明らかなので、「宮川節子」説を調べていく価値はありそうだ。
ともかく、「声優が誰なのか」は、本作最大の謎と言えるだろう。
そして、もう一つの謎がある。
DVDでは、明らかに本放送とは異なる、間違った順番で話が収録されているのだ。なぜこう言いきれるかというと、内容的に間違いなく最終話となるエピソード「勝利!チャージマン研」が、DVDでは全65話中の第61話という中途半端な位置で収録されているからだ。
また、「THIS IS ANIMATION(1)SF・ロボット・アクションアニメ編」には本作の全話リストが掲載されており、それとDVDを比較しても、収録順がおかしいことがわかる。ただ、この本では放映期間が間違っているので、放映順についても素直には信用できないが。
この本のリストを元にして、Wikipediaの「チャージマン研!」の項目には放映順とDVD収録順の両方の話数が記載されており、比較してみると5話ごとに収録順がおかしくなっている事がわかる。つまり、初期の話数が最終巻に入っていると言うような大幅な話数の入れかえはないし、たまたま両方の話数が一致している例も何話かある。
Amazonのカスタマーレビューでも言及している人がいるが、帯番組だったので一週間・5話単位で保管されており、週ごとの並び順がわからなくなったためにDVDでは適当な話数で収録したと言うのが真相なのだろう。
それにしても、最終話を最後に入れないとはあまりに適当すぎる。本作のDVD制作担当者は内容を一切チェックしなかったのだろうか。もっとも、チェックしていたら「恐怖!精神病院」のような危ない話はカットされていたかも知れないが。
果たして、AT-Xでは放映順はどうなるのだろう。DVDのままか、それとも本放送時の順番に戻すのか。
AT-Xの作品紹介ページを見ると、声の出演が「劇団 近代座」だけだったり、放映年が正しく1974年と記載されていたりと、ちゃんと「わかっている」人間が担当している節があるので、本放送順での放映に期待したい。
以上のように、本作には「声優」「放映順」と、作品の基本と言うべきデータにすら謎がある。
いくら古くてマイナーな作品とは言え、あまりに情報が少ない。作品のデータを載せた資料は、今回本文で言及した3冊くらいしか見つからないし、これら3冊のデータも全面的に信用できるものが一つもない有り様だ。
おそらく、制作会社のナックにも資料は残っていないのだろう。ナックの作品管理のいい加減さは、「アニメの王国」DVDのような非正規ソフトが出てしまったり、最近リリースされたDVDでどの作品もOP・EDが使い回しになっている事から、よくわかる。
もっと、突っ込んで調べてみたいところだが、なかなか道は険しそうだ。
最後に、本エントリの締めくくりとして、おそらく唯一公式に発表されたスタッフの談話を紹介しておこう。これは、前述の「月刊アニメージュ」1979年4月号「NTV&TBSアニメ16年史」に掲載されたものだ。
色々と突っ込みどころがあるコメントだ。「スタッフの連中が泳ぎに行ったり」って、そんないい加減なスタッフでいいのだろうか。人手が足りなかったからあんな止め絵だらけになったのかと、納得できる話ではあるが。
また、「西野靖市」と言う人物も謎だ。制作「西野清市」の誤植なのか、それとも別に演出家で西野靖市と言う人がいたのだろうか。少なくとも、OP・EDにはそんな名前は一切出ていない。
放映から5年後ですら、これだけスタッフがあやふやなのだから、34年も経った現在、まともな情報が残っていなくても無理はない。
(追記)
EPGで「チャージマン研!」の番組詳細を確認してみたら、サブタイトルがちゃんと載っていた。
これを見ると、本放送通りの順番で放映するようだ。さすがはAT-X、ちゃんとわかっている。実際のところ、1話完結で前後の連続性は全くないので最終話以外はどうシャッフルしても問題なく観られるのだが、それでもどうせなら本来あるべき順番で観るのが望ましい。
この作品の魅力については以前のエントリを読んでいただくとして、「チャージマン研!」は、謎の多い作品だ。
まず第一に、作品に関わったスタッフ・キャストすらはっきりしていない。
OP・EDテロップである程度のスタッフはわかるが、脚本家や絵コンテ担当はテレ朝チャンネルの「シンエイアニメシアター」のように数人がまとめて表示されており、誰がどの話数を担当したかはわからない。シンエイ藤子アニメはアニメ雑誌で各話スタッフを調べる事が出来るが、本作はそれも無理だ。
そして、出演声優も誰一人として名前がわからない。EDに「声の出演 劇団 近代座」としか表示されていないからだ。
DVDのジャケットやAmazonのページでは、沢田和子(現・沢田和猫)や藤田淑子が出演していた事になっているが、これはまるっきりの間違い。本編で声を聞けばわかるが、本作では他のアニメで聞き覚えのある声優は一人もいない。
それなのに、なぜ沢田さんや藤田さんが出ている事になっているのだろうか。
アニメ関係の資料で本作のデータを最初に載せたと思われるのは、杉山卓「テレビアニメ大全集2」(秋元書房)だが、この本で既に二人の名前が出ており、また放映期間も間違っている。
この「テレビアニメ大全集」シリーズはデータの間違いが多く、「新オバケのQ太郎」でQ太郎役を小原乃梨子と書くなど、目に余るほどのミスもかなりあるし、細かい間違いを探していけばきりがない。
想像するに、他に資料が少ない作品については、この「テレビアニメ大全集2」のデータが後世の本でも使われてしまい、その結果として誤った情報が広まってしまったのだろう。「テレビアニメ25年史」ですら、研役・沢田和子はそのまま載っている。さすがに、この本では放映期間は正しくなっているが。
じゃあ、一体研の声は誰がやっているのかとなると、「わからない」としか言いようがない。何しろ、他のアニメで聞かない声なので、「この声なら○○さんだろう」と推測する事すらできないのだ。
唯一の例外として、「アニメの王国」版DVDに同時収録された「透明少年 探偵アキラ」(パイロットフィルムをそのまま収録?)には本作とほぼ同じメンバーが出演していると思われるが、こちらはスタッフ表示が一切出ないので何の参考にもならない。
「劇団 近代座」の面々は、普段は声優として活動しておらず、本格的なアニメ出演はこれ一作だけだったのだろう。本作の声優陣を知るには、1974年当時の「劇団 近代座」を知る人に取材するしかない。もし、DVD-BOX化の時に「ゲゲゲの鬼太郎」並みに気合いを入れたブックレットを作っていれば、そんな調査も実現したかも知れないが、実際のBOXには本編ディスク以外に一切の付属物はない。
ちなみに、これまで確認した資料の中で、唯一「月刊アニメージュ」1979年4月号の「NTV&TBSアニメ16年史」では、研役として沢田和子ではなく「宮川節子」と言う名前が載っている。この人が他のアニメに出ていれば声を比較できるのだが、調べた限りでは本作以外にアニメ出演はないようだし、そもそもこの時期に声優・俳優として活動していたのかどうかも定かでない。
ただ、少なくとも研の声が沢田和子でない事は明らかなので、「宮川節子」説を調べていく価値はありそうだ。
ともかく、「声優が誰なのか」は、本作最大の謎と言えるだろう。
そして、もう一つの謎がある。
DVDでは、明らかに本放送とは異なる、間違った順番で話が収録されているのだ。なぜこう言いきれるかというと、内容的に間違いなく最終話となるエピソード「勝利!チャージマン研」が、DVDでは全65話中の第61話という中途半端な位置で収録されているからだ。
また、「THIS IS ANIMATION(1)SF・ロボット・アクションアニメ編」には本作の全話リストが掲載されており、それとDVDを比較しても、収録順がおかしいことがわかる。ただ、この本では放映期間が間違っているので、放映順についても素直には信用できないが。
この本のリストを元にして、Wikipediaの「チャージマン研!」の項目には放映順とDVD収録順の両方の話数が記載されており、比較してみると5話ごとに収録順がおかしくなっている事がわかる。つまり、初期の話数が最終巻に入っていると言うような大幅な話数の入れかえはないし、たまたま両方の話数が一致している例も何話かある。
Amazonのカスタマーレビューでも言及している人がいるが、帯番組だったので一週間・5話単位で保管されており、週ごとの並び順がわからなくなったためにDVDでは適当な話数で収録したと言うのが真相なのだろう。
それにしても、最終話を最後に入れないとはあまりに適当すぎる。本作のDVD制作担当者は内容を一切チェックしなかったのだろうか。もっとも、チェックしていたら「恐怖!精神病院」のような危ない話はカットされていたかも知れないが。
果たして、AT-Xでは放映順はどうなるのだろう。DVDのままか、それとも本放送時の順番に戻すのか。
AT-Xの作品紹介ページを見ると、声の出演が「劇団 近代座」だけだったり、放映年が正しく1974年と記載されていたりと、ちゃんと「わかっている」人間が担当している節があるので、本放送順での放映に期待したい。
以上のように、本作には「声優」「放映順」と、作品の基本と言うべきデータにすら謎がある。
いくら古くてマイナーな作品とは言え、あまりに情報が少ない。作品のデータを載せた資料は、今回本文で言及した3冊くらいしか見つからないし、これら3冊のデータも全面的に信用できるものが一つもない有り様だ。
おそらく、制作会社のナックにも資料は残っていないのだろう。ナックの作品管理のいい加減さは、「アニメの王国」DVDのような非正規ソフトが出てしまったり、最近リリースされたDVDでどの作品もOP・EDが使い回しになっている事から、よくわかる。
もっと、突っ込んで調べてみたいところだが、なかなか道は険しそうだ。
最後に、本エントリの締めくくりとして、おそらく唯一公式に発表されたスタッフの談話を紹介しておこう。これは、前述の「月刊アニメージュ」1979年4月号「NTV&TBSアニメ16年史」に掲載されたものだ。
あれはねえ、21世紀の話なんですよ。真鍋博さんの21世紀の話を描いた本をもとにしました。冒険とか戦いとかではなく、生活を中心とした作品です。確か夏に制作したんですが、スタッフの連中が泳ぎに行ったりして、たいへんしんどい目をして作りました。
(西野靖市(演出))
色々と突っ込みどころがあるコメントだ。「スタッフの連中が泳ぎに行ったり」って、そんないい加減なスタッフでいいのだろうか。人手が足りなかったからあんな止め絵だらけになったのかと、納得できる話ではあるが。
また、「西野靖市」と言う人物も謎だ。制作「西野清市」の誤植なのか、それとも別に演出家で西野靖市と言う人がいたのだろうか。少なくとも、OP・EDにはそんな名前は一切出ていない。
放映から5年後ですら、これだけスタッフがあやふやなのだから、34年も経った現在、まともな情報が残っていなくても無理はない。
(追記)
EPGで「チャージマン研!」の番組詳細を確認してみたら、サブタイトルがちゃんと載っていた。
これを見ると、本放送通りの順番で放映するようだ。さすがはAT-X、ちゃんとわかっている。実際のところ、1話完結で前後の連続性は全くないので最終話以外はどうシャッフルしても問題なく観られるのだが、それでもどうせなら本来あるべき順番で観るのが望ましい。
4話連続ノンストップです(^_^;)
初回ということで、まだ私自身が手探りなためか、内容的には第1回(1-4話)の破壊力はそれほどでもなかったように思います。
ただ、7分×4話という変則編成のためか、それとも作品内容のためか定かではありませんが、時間の感覚がおかしくなりそうでした。
幸いにも、金曜18:30-19:00枠で見る場合には、前後に「きらりんレボリューション」と「ドラえもん」があるので、補整が利きそうですけれども。
それから、OPアニメが「点滅」「短時間での映像切り替え」「画面の半分以上を占める幾何学模様」と、現在の規制対象のオンパレードだったのが印象的です。
1974年当時は当たり前に認められていた…と言ってしまえばそれまでですが、ここまで各種の“問題映像”を取り揃えているのも凄いと思った次第です。
>4話連続ノンストップです(^_^;)
もちろん、金曜日にしっかり観ました。何度も観ているのに、観始めると止まらなくなり、4話続けて観てしまいました。さすがに、第2話以降のOP・EDは飛ばしましたが。
毎日10分ずつ流すために作られた作品を一度に続けて観ると、確かにちょっと感覚がおかしくなりますね。
改めて観てみると、1話は何となく第1話っぽい感じですし(研ながぜ「変装」出来るか、などの説明は一切ありませんが)、第2話が「光がないと変装できない」と設定を紹介する回になっていたりと、さすがにある程度は「はじまり」を意識していますね。
それでも、第3話で50年かけた計画が3分で潰されたり、第4話では星くんが色々な意味で素晴らしい活躍を見せたりと、徐々におかしく…いや、本領を発揮して来ていると思います。
この作品は作画や音楽、声優等の徹底的な使い回しも味の一つですが、それはある程度の話数を観ないとわからないところでしょう。
本放送通りなら、第4週目は「闇夜に消えた大仏」「殺人レコード 恐怖のメロディ」が続けて流れるので、大変楽しみです。私はDVDのいい加減な順番で観てしまったので、今回が初めての本放送順視聴です。
>それから、OPアニメが「点滅」「短時間での映像切り替え」「画面の半分以上を占める幾何学模様」と、現在の規制対象のオンパレードだったのが印象的です。
映像表現もおっしゃる通りなのですが、本編内容も現代ならまず脚本段階で通らないと思われるネタが多く、あらためて考えると、今となってはまともに放映できる局はAT-Xくらいでしょう。
どのような経緯で今回の放映に至ったのかはわかりませんが、DVD発売より後にWikipediaに載せられた放送順をチェックしているあたり、AT-Xの担当者が本作のファンなのではないかと勝手に想像しています。いや、もしかしたらファンどころかジュラル星人の作戦なのかも知れませんが。