三度、「クルパー」について

 先日、藤子・F・不二雄大全集『ウメ星デンカ』第1巻が発売になった。
 この『ウメ星デンカ』では、一つ確認したいことがあった。以前にも触れたのだが、「小学二年生」掲載分の中にデンカが「クルパー」と言っていた話があったはずで、それが今回どのように収録されるのか、ずっと気になっていたのだ。


 そんなわけで、さっそく読んでみた。本の隅から隅まで探しても「クルパー」のクの字も出てこないが、該当する話は一目でわかった。「ウチデ・ハンマー」で間違いないはずだ。この話、扉絵からしてデンカが変な顔で鼻水までたらしており、これだけでも『ドラえもん』の「クルパーでんぱ」に似た雰囲気を感じてしまう。
 この話のどこに「クルパー」があったかというと、192ページの最下段右側、デンカが「ウヒャー」と言っているところがそれに当たる。初出ではここで「クルパー」と言っていたはずだ。F全集では『パーマン』の「くるわせ屋」でも、最後のコマのパーマンのセリフ「クルクルパーマン」が「ウヒャヒャー」に変えられているが、どちらも元のセリフほどのインパクトはなく、上手い改変とは思えない。

 なお、以前のエントリでは触れていなかったが、「クルパー」は『ドビンソン漂流記』の「クシャミ分身術」でも登場しており、こちらもF全集では消されてしまった。
 また、旧作『パーマン』に登場する「脳細胞破壊銃」は、アイディアノートの段階では「クルパーガン」という名称だったことが「F NOTE」で明らかになった。結局直球なネーミングの「脳細胞破壊銃」に決まった経緯はわからないが、もし「クルパーガン」が採用されてアニメ版『パーマン』にも出ていれば、「クルパー」は今とは比べものにならないほど広まっていたかも知れない。そう思うと、残念だ。

 今回の『ウメ星デンカ』と同時発売になった『SF・異色短編』第1巻では、最近の単行本で消されていた「ノスタル爺」の「気ぶり」が復活している。「気ぶり」にせよ「クルパー」にせよ、F先生が独自に作りだした言葉のはずで、なぜ「クルパー」だけを目の敵のように消すのか、はなはだ疑問だ。こうなると、『チンタラ神ちゃん』の「クルパー教」がどうなってしまうのか、怖くもあり、ある意味では楽しみでもある。少なくともそのまま収録と言うことはなさそうだが。


 最後に念のために書いておくが、F先生の作品は「クルパー」が消されたからと言って、それで面白さが消えてしまうようなヤワなものではない。今回取り上げた『ウメ星デンカ』の「ウチデ・ハンマー」も、クルパー抜きで十分に面白い作品だと思う。
 それでもなお、「クルパー」は消して欲しくない。これが差別用語にあたるとは全く思わないし、ギャグ用語としては面白いと思うからだ。

 それにしても、「クルパー」が使われている作品はもうないのだろうか。昭和40年代のF作品をあされば、まだまだ出てきそうな気がする。単行本未収録作品が特に怪しい。いずれ機会があれば、調べてみたいテーマではある。本当にやれるかどうかはわからないが。
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さらば、「特選アニメ劇場」

 東海テレビ平日夕方のアニメ再放送枠「特選アニメ劇場」が、今年4月から金曜日のみの放送に大幅縮小された事は以前に取り上げた
 4月の時点で、このままだと近い将来にはこの枠自体が消滅してしまうのではないかと危惧していたのだが、来るべき時が来てしまった。今月から『ONE PIECE』がキー局のフジテレビと同時ネットになったのに伴い、9月いっぱいで「特選アニメ劇場」は金曜日の放送もなくなり、夕方枠はドラマの再放送のみになってしまった。


 この夕方枠に「特選アニメ劇場」のタイトルが付いたのは、いつだったのだろう。少なくとも、『ゲゲゲの鬼太郎』(第4作)を放映していた1996年には、すでに「特選アニメ劇場」の枠タイトルも表示されていた。1995年以前の情報がないので断言は出来ないが、平日16時台のアニメ再放送は1970年代から延々と続いてきたから、その頃からずっと「特選アニメ劇場」だったのだろうか。昔は「アニメ」よりも「テレビまんが」の方が通りがよかったので、もっと後から付いたのかもしれないが。

 また、日曜9時台が1時間丸々フジと同時ネットになったのも、以前のあの時間帯を知る者としては、驚きだ。なにしろ、わざわざ「世界名作劇場」の再放送をやっておいて、キー局で放送しているアニメや特撮番組は異時ネットにしていたのだから。この異時ネットには、遅れ放送であるという点はもちろんの事ながら、作品によっては途中の話数をとばされてしまうと言う大きな問題があったので、同時ネット化して欲しいとずっと思っていた。
 皮肉にも、完全同時ネットとなった現在は、放映中の『トリコ』『ONE PIECE』の両方ともに観ていないので、あまりありがたみは感じられないのだが、今後も同時ネットのままでこの枠が続くのであれば、いつか「同時ネットでよかった」と思う日も来るだろう。

 なお、9月までに再放送を行っていた『DRAGON BALL KAI』は、ナメック星編の最終回1話前、第53話で打ちきりとなってしまったので、ナメック星が爆発したところで終わってしまった。よりによって、原作者の地元の再放送でこの仕打ちは、あんまりだ。せめて、あと1話あればきりのいいところで終わったのに、何とか都合をつける事は出来なかったのだろうか。


 と言うわけで、これで東海テレビでは全日帯アニメはすべてフジと同時ネットになった。めでたしめでたし…と思ったら、今度は中京テレビで全日帯アニメの遅れ放送が発生した。2度目のアニメ化となる『HUNTER×HUNTER』だ。中京テレビでは10月19日深夜スタートなので、これを書いている時点ではまだ始まっていない。

 思い返せば、フジテレビ系で放送された第1作(こちらはメインタイトルがカタカナの『ハンター×ハンター』)も、土曜18時30分のローカル枠での放映だった。東海テレビではこの時間帯にローカル番組を入れていたので、『ハンター×ハンター』は「特選アニメ劇場」枠内で放送して、『∀ガンダム』ともども、しょっちゅう時間帯が変わっていたのをよく覚えている。
 とは言え、フジテレビ版では何社かスポンサーは付いていたのだが、今回はキー局の日本テレビですらノンスポンサーだったそうなので、中京テレビも同様なのだろう。週刊少年ジャンプの人気作が、このような形でしか放映できないとは、厳しい時代になったものだ。


 ともかく、特選アニメ劇場には長い間色々なアニメで楽しませてくれてありがとうと言いたい。こんな形で終わってしまった以上、もう復活はないのだろう。本当に寂しい。
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【ご報告】「ドラえもん最強考察」の件が決着

 「ドラちゃんのおへや」のコンテンツを「ドラえもん最強考察」(晋遊舎)に転載された上に、奥付で勝手に「著者」の一人として扱われた問題について、三ヶ月にわたって晋遊舎と本の扱いや謝罪内容を交渉してきましたが、この度ようやく決着をみましたので、これまでのいきさつと合わせて、交渉結果をご報告いたします。


 まず、なぜ今回のような問題が起こってしまったのか。これについては、晋遊舎側の言い分を信用すると、「担当者が『引用』の意味を理解しておらず、結果的に転載する事になってしまった。奥付は、協力者全員の名前を載せたくて、7人の名前を載せてしまった」のだそうです。
 仮にも出版社で編集の仕事をしていた人間が、「引用」と「転載」の違いがわからないなどということがありうるのかと突っ込みたいところですが、最初にメールを送ってきたK氏はすでに晋遊舎を辞めており、またこの人からは直筆の書状で詫び状を受け取りましたので、これについては信用することにしました。

 しかし、それでも疑問は残っていました。それは「著者は一体誰なのか」と言うことです。奥付に名前を書かれた7人が7人とも、私と同じく無断転載&奥付に名前記載をされたのであれば、実体としての「著者」がいないことになってしまいます。
 そこで、この点についても晋遊舎に尋ねてみたところ、意外な答えが返ってきました。奥付に名前が載っている7名のうち、「無断転載」されたのは私を含めて3人で、残り4人は「著者」として、8%を4人で割った2%の印税を受け取っていると言うのです。私たち3人と「著者」の4人の違いは本で使われたページ数であり、多くのページが使われている4人は「著者」、ページ数が少なかった残り3人は「引用」しただけとして、印税云々以前にこういった事情だったことすら蚊帳の外だった訳です。
 「著者」4人が誰なのかについては「守秘義務」があるのだそうで、私は晋遊舎から4人の名前を聞いてはいないのです。ただ、私と藤村阿智さん、影月さんの3人は「著者」ではありません。と言うわけで、奥付をご覧になれば、消去法で自ずと「著者」はわかると思います。
 それにしても、ある程度事情を知っているはずの「著者」の方々からのコンタクトが一切なかったのは、実に残念です。そういえば、Twitterで「営業妨害」云々と叫んでいた人もいましたが、「著者」だとすれば、納得できる発言です。このあたり、生臭い話になってしまって申し訳ありませんが、はっきりさせておきたい事だったので、あえて印税の件まで踏み込んで書かせていただきました。



問題の奥付


 以上、晋遊舎側に事情を問いただした結果、このような内幕がわかったのですが、はっきり言ってこの交渉は非常に疲れました。のらりくらりと話を逸らされて、なかなかはっきりとした返事がなく、ここまでの回答を引き出すだけで一ヶ月以上かかったのです。
 メールで交渉を始めた当初は、本の文章が私のサイトからの「無断転載」であると言う事すら、はっきりとは認めなかったくらいでしたし、「著者」の実体についても、何度も質問を繰り返して、やっと答えが返ってきたのです。はっきり言いまして、このやりとりを通じても、晋遊舎側の誠意は感じられませんでした。


 さて、ここからは晋遊舎側の本への対応について書いておきます。
 まず、万が一重版がかかった場合には、私のサイトから転載した章と奥付の私の名前を削除する事になりました。もっとも、こんな本が売れては困るので、重版になどならない方がいいのですが。
 また、晋遊舎のサイトには、謝罪文が9月29日から二週間にわたって掲載される事となっています。これについても、私としてはもっと目立つページの最上段への掲載を求めたのですが、結果として少々中途半端な位置での掲載となりました。その点で不本意ではあるのですが、前述のように晋遊舎との交渉には疲れてしまいましたので、妥協したわけです。それこそ晋遊舎側の思うつぼかも知れませんが、本当に疲れてしまいました。まだまだすっきりしない思いはあるのですが、これにて決着と言うことにしました。


 最後になりましたが、今回の件で色々な方からご支援やアドバイスをいただきました。あらためまして、ここで厚く御礼を申し上げます。本当に、ありがとうございました。
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