『三つ目がとおる』4種類のグリーブ編

 先日、『三つ目がとおる』《オリジナル版》大全集の第2巻が刊行された。






 『三つ目がとおる』を、「週刊少年マガジン」掲載時のスタイルで収録するシリーズだが、今回は第1巻から続く「三つ目族の謎編」および、「グリーブの秘密編」の全編が収録された(サブタイトルは、いずれも単行本版による。初出時にはサブタイトルなし)。
 現在流通している単行本版ではカットされた、初収録となるページを多数読めるのは非常に嬉しいのだが、個人的に思うのは「これで、グリーブ編がさらにややこしくなってしまった」と言うことだ。

 なぜかというと、「グリーブの秘密編」は単行本だけで、すでに3種類のバージョン違いが存在するからだ。これに、今回刊行のオリジナル版を加えると、4種類存在することになる。
 今回は、この4種類の「グリーブの秘密編」について、簡単に紹介しておこう。その4種類とは、


(1)講談社コミックス(KC)版

(2)手塚治虫漫画全集版

(3)手塚治虫文庫全集版

(4)《オリジナル版》大全集


と、なる。

 このうち、(4)は雑誌初出にほぼ同じと言うことで、実際に《オリジナル版》大全集を読んでいただくのが一番わかりやすいだろう。

 (1)~(3)は何が違うかというと、冒頭部分および結末部分である。
 (1)では、おそらく200ページほどに収めなければならないというページ数制限があったためと思われるが、CIA本部に写楽たちが連れて行かれて、そこで謎の装置(実は、水を出すだけ)を作るという展開がばっさりカットされて、グリーブの暴走後すぐに潜水艇で日本に逃げるようになっている。CIA部長ポーク・ストロガノフは登場しない。
 (2)は全集と言うことでページ数制限が緩くなったのか、(1)ではカットされた展開が復活しており、30ページほど全体のページ数が増えている。

 (3)はと言うと、これがちょっとややこしい。手塚治虫文庫全集版は全話収録となっているため、それまでの単行本には入っていなかった「文福登場」というエピソードも収録されている。それにより、「文福登場」の前半と「グリーブの秘密編」の冒頭部分が内容的に重複してしまうため、文庫全集版「グリーブの秘密編」は、その重複分がばっさりカットされたのだ。
 これは手塚先生の死後の改変であり、好ましくないと個人的には思う。これにより、写楽がオーラでテストの答案用紙に記入するエピソードは消滅してしまうなど、弊害も生じている。しかし、『三つ目がとおる』の単行本が全話を収録するようになってからは、この形が基本になってしまい、続くGAMANGA BOOKS版も、同様の編集となっている。

 (1)~(3)を比べると、個人的には上底先生が助かる(1)の結末が好みだ。(2)(3)では上底先生は作者にすら存在を無視されてしまい、グリーブ跡地に置き去りになったのか、はたまた死んでいるのかすら示されてはいない。
 ちなみに、(4)の雑誌初出版では和登サンが「ここに上底先生が死んでる!!」と、死体を発見するコマが存在する。初出では死亡していた上底先生がKC版で復活した理由は定かではないが、話としてはまとまりがよいような気がする。


 と、言った感じで、4種類の展開が存在する「グリーブの秘密編」。現在、KC版は少々入手が難しいかもしれないが、全バージョンを集めて読んでみるのも一興だろう。
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