絶版漫画と藤子不二雄ランド

 「絶版漫画」とは、なにか。
 そのまま素直に解釈すると、絶版になっていてすでに新刊書店では手に入らない漫画単行本のことだ。レーベル全体が絶版となっているものもあれば、レーベルとしては現役でも、作品単位で見ると絶版になっているものもあると思われる。いずれにせよ、現在では古書店でしか手に入らない漫画本と言うことで、いいと思う。

 なんで唐突にこんな事を書いたかというと、あらためて自宅の本棚を見渡すと「絶版漫画」は案外少ないと言うことに気がついたからだ。
 私の所有している漫画単行本を著者別に見ると、一番冊数が多いのは藤子不二雄作品で、それに次いで手塚治虫作品ということになるが、藤子作品にせよ手塚作品にせよ、絶版本はあまり持っていない。
 たとえば、てんとう虫コミックス版『ドラえもん』は言うまでもなく現役の本であるし、「手塚治虫漫画全集」全400巻だって、文庫全集の刊行によって少なくなったとは言え、まだ新刊で置いている書店はある。「藤子・F・不二雄大全集」全115巻+別巻4巻も、一時的に品切れの巻はあるにしても、今のところ絶版にはなっていないはずだ。

 虫プロ商事の虫コミックスや朝日ソノラマのサンコミックスは、そもそも出していた会社が今は存在せず、間違いなく絶版漫画ではあるが、私はどちらもあまり持っていない。
 虫コミックスは手塚治虫『キャプテンKen』全2巻しか持っていないし、サンコミックスも藤子・F・不二雄作品(『モジャ公』『宇宙人』『創世日記』)と『鉄腕アトム』全21巻+別巻だけだ。手塚作品や藤子作品が色々と出ているので、いずれは入手したいとは思っているが、古書価が高いこともあって、なかなか手が出ない。

 その他、本棚から絶版らしき漫画を探してみると、ゴールデンコミックスの手塚治虫全集(5冊)やスターコミックス(『オヤジ坊太郎』『マボロシ変太夫』『仮面太郎』)、パワアコミックス(『新オヤジ坊太郎』)くらいしか見つからない。いずれも、これらの本でしか読めないエピソードがあるから入手したもので、殊更に絶版を意識して買ったわけではない。
 後は、サンワイドコミックスが水木しげる作品を中心に20冊程度あるくらいか。朝日ソノラマと言えばサンコミックスだが、サンワイドだって絶版には違いあるまい。こっちの方が手に入りやすいし。

 そんな感じで、私は漫画ファンではあるが、絶版漫画コレクターではない。なにしろ、100冊も持っていないのだから…と締めようとして、気がついた。「藤子不二雄ランド」も、よく考えたら絶版漫画ではないかと。
 「藤子不二雄Aランド」として復刊された藤子不二雄A作品はまだ現役であるにしても、復刊されたことのない藤子・F・不二雄作品および合作の合計152冊は、現在新刊書店で入手できず、絶版漫画と称して間違いではないはずだ。刊行された年代が新しすぎて、すっかり失念していた。

 藤子不二雄ランドが刊行されたのは、1984年から1991年までの7年間。当時の私は小学生~高校生だった。
 最後の一年を除いて、毎週毎週刊行された本を子供が全部買えるわけもなかった。最初に買った『少年SF短篇1 宇宙人』は古書店で購入したものだし、その後もしばらくは新刊では買わなかった。
 最初に新刊で買った藤子不二雄ランドが何だったかはすでに記憶にないが、時期的には『ドラえもん』の36巻以降が刊行され始めた頃だ。『新オバケのQ太郎』の第1巻あたりかもしれない。A作品は、『きえる快速車』『怪人二十面相』『シスコン王子』などの初期作品を最初に新刊で購入したと思う。当時は、これら初期作品の単行本化は特にありがたく思ったものだった。
 いずれにしても、当時は毎週刊行される中からこれはと思った作品を買うのが精いっぱいで、とても全部を新刊では買えなかった。主に、てんコミなど他レーベルで出ていない作品を中心にして買っていたと思う。
 そう言えば、名古屋の池下にあった三洋堂書店の漫画コーナーでは、当時刊行済みの藤子不二雄ランドがほぼ全巻揃っており、たまに訪れては眺めて「いつか、全巻揃えたいなあ」と思っていたものだ。まさか、本当に揃えるまでに25年以上かかるとは思わなかった。

 藤子不二雄ランドで一番巻数が多いのは『ドラえもん』だが、これに関しては幸運なことに、『少年SF短篇1 宇宙人』を買ったのと同じ古書店に30冊セット(1~35巻のうち5冊欠け)と言う微妙なセットが安く売っており、これを買うことが出来たので一挙に揃った。もっとも、このセットを買ってからしばらくは、欠けている5冊を求めて古書店を探しまくったものだが。
 この古書店では、他にも『まんが道』の20冊セット(全23巻のうち3冊欠け)と言うのも売っており、こちらも購入した。藤子不二雄ランドのうち特に巻数の多い作品が労せずして手に入ったのだから、今考えるとかなり運がよかった。もちろん、絶版になってプレミアが付く前の話だ。

 現在は、大人になったから欲しい本を遠慮せずに買えるというわけでは全くなく、未だに予算と相談して、特に欲しい本を新刊で買っているが、それでも子供の頃と比べると使える金額は格段に増えた。だから、藤子・F・不二雄大全集は無事に全巻新刊で購入できたが、きっと子供の頃の私のように「買いたくても買えない」若い人はいただろう。なにしろ、藤子不二雄ランドを毎週買うよりも、一月あたりの金額は大きかったのだから。そう言う人のためにも、出来るだけ長く藤子・F・不二雄大全集が新刊で買える状態が続くことを願いたい。


 と、言うわけで、「藤子不二雄ランド」152冊をカウントしていいのなら、私も絶版漫画を200冊以上は持っていることになる。自分としては、藤子不二雄ランドが「絶版漫画」だという感覚は、あまりないのだが。やはり、新刊で買った経験のある本は、そういう風に思いにくい。
 藤子不二雄作品の単行本は、容易に入手できるものはほぼ入手してしまったので、今後収集を続けるとすれば、絶版漫画が中心になっていくのだろう。私としても、欲しい本はまだまだたくさんある。セリフが変えられてしまった作品については、できれば改変前のセリフで読みたいという気持ちはあるし、絶版漫画独特の古さが持つ「味」にも憧れはある。
 まあ、今さら焦ることはないのだから、ぼちぼちと集めていけたら、と思う。
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