今回は、現在刊行中の『ブラック・ジャック大全集』および、最近の手塚治虫作品復刻について語ってみたい。
実のところ、『ブラック・ジャック大全集』については、刊行が告知された時から今までずっと頭の中でいろんな思いがモヤモヤとしており、このままでは精神衛生上よろしくない。そこで、今回この場で文章として形にしておく事にした次第。今さらな話題も含んでいるが、ご容赦いただきたい。
まず、最初にことわっておくが、手塚作品の復刻については以前にも一度ならず書いた事がある。そのエントリは、こちらやこちらだ。今回、ネタ的に一部の内容が重複してしまうのは避けられないので、あらかじめご容赦いただきたい。
復刊ドットコムから刊行されている一連の手塚治虫作品の「大全集」は、全7ユニットで展開された『鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集』(ユニット3まではジェネオンエンタテインメントから発売)に遡る事が出来る。その後、『火の鳥《オリジナル版》復刻大全集』が全12巻+別巻2巻で発売されて、その次に現在刊行中の『ブラック・ジャック大全集』へと至るわけだ。
以前のエントリで書いたとおり、私は以上のうち『鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集』は全巻購入したが、『火の鳥』と『ブラック・ジャック』の購入予定はない。私はすでに『ブラック・ジャック』は少年チャンピオンコミックス(旧版)全25巻と手塚治虫漫画全集版 全22巻を持っており、内容的にほぼ変わらない本をこれ以上置く場所もないし、毎月3,675円が飛んでいくのも結構痛い。結局は、金がないのが買わない一番の理由だ。
この『ブラック・ジャック大全集』の内容だが、『アトム』『火の鳥』が雑誌掲載オリジナル版を完全収録(ただしセリフ変更はあり)していたのに対して、全話収録でもなければ雑誌掲載オリジナル版でもなく、非常に中途半端と言わざるを得ない。「指」「植物人間」「快楽の座」の3話は、手塚プロの意向で今後も単行本収録予定はないとの事だが、それがわかっていながら、なぜ「大全集」という名前を付けるのか理解できない。
大きいサイズ、綺麗な印刷などのコンセプトで作られる『ブラック・ジャック』の単行本には、一定の需要はあると思う。それを見込んでの刊行なのだろうが、全話収録ではないのだからタイトルに「大全集」とは付けるべきでなかったと思う。もっとふさわしい名前を付けるとなると、どうだろう。『ブラック・ジャック愛蔵版』では秋田書店のハードカバーと紛らわしいから、『ブラック・ジャック保存版』や『ブラック・ジャック限定版』あたりか。
さらに言えば、前述の3話が今後も単行本収録予定がないと言うのも怪しい。手塚治虫文庫全集においても、やはり『ブラック・ジャック』は出来るだけ多くのエピソードを収録する事が触れ込みになっていたが、結果としては前述の3話に加えて「血がとまらない」「しずむ女」「水頭症」「最後に残る者」「魔女裁判」「壁」の6話が未収録となっていた。その6話が今回の『大全集』版では収録されるわけで、文庫全集の収録内容に期待して買った人が、いい加減にしてくれと思っても不思議ではない。
また、これは手塚作品ではないが、「未収録」「自主規制」が最近になって解除されたものに、アニメの『妖怪人間ベム [第1作]』がある。これまでは、第4話「せむし男の人魂」を「人魂」と題を変えた上で、全話にわたって「問題のありそうな部分」をカットしたヴァージョンのDVDが出ていたが、2010年になってようやく「初回放送オリジナル版」と銘打ったノーカットの本放送版DVD-BOXが発売された。
『ブラック・ジャック』と『妖怪人間ベム』とでは、自主規制の内容と理由が全然違うので、一概に比較してどうこうとは言えないが、こういう例があるのだと言う事は、心にとどめておいてもいいだろう。手塚プロだって、いつ方針を変更するかわかったものではない。
ここまで書いてきて、結局言いたいのは何かというと、3話未収録という中途半端さと、その対応で感じられる復刊ドットコム・手塚プロの事なかれ主義への苛立ちがどうにも収まらない、と言う事だ。
お前は買わないのだからどうでもいいだろうと言われればそれまでなのだが、もし全話完全収録なら無理して買っていたかも知れないのだ。そう思うと、非常に残念な気持ちだ。具体的に言えば、アニメ版『エスパー魔美』DVD-BOXの購入を見送った時の気持ちに近い。
ところで、手塚作品の復刻単行本に熱心な出版社と言えば、復刊ドットコムの他に小学館クリエイティブがある。
しかし、最近は小学館クリエイティブの出す本も、ネタ切れ感を強い。その最たるものが、手塚治虫レアコレクション 東光堂作品集だ。昭和30年代の再録単行本なんて、復刻されて嬉しい人がいったいどれだけいるのだろうか。「少年サンデー版」のシリーズも『勇者ダン』で終わってしまい、『スリル博士』は出ずじまいだ。今の小学館クリエイティブのラインナップには、私が惹かれる物はない。
それに加えて、今年になって始まった「GAMANGA BOOKS」シリーズの『三つ目がとおる』も、単に収録が発表順と言うだけで、内容的には従来の単行本と変わらず、非常に残念だった。これでは、次に刊行される『まんが道』も期待はできない。「あすなろ編」で「チャンピオンマンガ科」完全復刻をやってくれれば間違いなく買うのだが、まあまずないだろうな。そんな事をするなら、今頃すでに大々的に告知宣伝をしているだろうし。このシリーズでは、さらに『火の鳥』も予定されているが、こちらは今さらカラーと扉絵が付くくらいでは売りにならないはずで、どういった内容で出すつもりなのか気になるところだ。
手塚作品では、単行本化のたびに加筆修正が多くなされるので、オリジナル版や古い単行本(それ以降に加筆あり)の復刻にも意義はあると思う。しかし、ここ2年くらいの復刻本の濫発は、あまりにも読者不在になっている。いったい、全部を買っていると言う人はいるのだろうか。いや、いるのだろうとは思う。そういう人とは色々な意味で住む世界が違うのだろうなと思わざるを得ない。
と、言ったところで今回のエントリはおしまい。結局、貧乏人の愚痴になってしまい、実におはずかしい。とにかく、モヤモヤしていた気持ちはある程度落ち着いたと思う。よかったよかった。少年チャンピオンコミックスの『ブラック・ジャック』でも読むか。
実のところ、『ブラック・ジャック大全集』については、刊行が告知された時から今までずっと頭の中でいろんな思いがモヤモヤとしており、このままでは精神衛生上よろしくない。そこで、今回この場で文章として形にしておく事にした次第。今さらな話題も含んでいるが、ご容赦いただきたい。
まず、最初にことわっておくが、手塚作品の復刻については以前にも一度ならず書いた事がある。そのエントリは、こちらやこちらだ。今回、ネタ的に一部の内容が重複してしまうのは避けられないので、あらかじめご容赦いただきたい。
復刊ドットコムから刊行されている一連の手塚治虫作品の「大全集」は、全7ユニットで展開された『鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集』(ユニット3まではジェネオンエンタテインメントから発売)に遡る事が出来る。その後、『火の鳥《オリジナル版》復刻大全集』が全12巻+別巻2巻で発売されて、その次に現在刊行中の『ブラック・ジャック大全集』へと至るわけだ。
以前のエントリで書いたとおり、私は以上のうち『鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集』は全巻購入したが、『火の鳥』と『ブラック・ジャック』の購入予定はない。私はすでに『ブラック・ジャック』は少年チャンピオンコミックス(旧版)全25巻と手塚治虫漫画全集版 全22巻を持っており、内容的にほぼ変わらない本をこれ以上置く場所もないし、毎月3,675円が飛んでいくのも結構痛い。結局は、金がないのが買わない一番の理由だ。
この『ブラック・ジャック大全集』の内容だが、『アトム』『火の鳥』が雑誌掲載オリジナル版を完全収録(ただしセリフ変更はあり)していたのに対して、全話収録でもなければ雑誌掲載オリジナル版でもなく、非常に中途半端と言わざるを得ない。「指」「植物人間」「快楽の座」の3話は、手塚プロの意向で今後も単行本収録予定はないとの事だが、それがわかっていながら、なぜ「大全集」という名前を付けるのか理解できない。
大きいサイズ、綺麗な印刷などのコンセプトで作られる『ブラック・ジャック』の単行本には、一定の需要はあると思う。それを見込んでの刊行なのだろうが、全話収録ではないのだからタイトルに「大全集」とは付けるべきでなかったと思う。もっとふさわしい名前を付けるとなると、どうだろう。『ブラック・ジャック愛蔵版』では秋田書店のハードカバーと紛らわしいから、『ブラック・ジャック保存版』や『ブラック・ジャック限定版』あたりか。
さらに言えば、前述の3話が今後も単行本収録予定がないと言うのも怪しい。手塚治虫文庫全集においても、やはり『ブラック・ジャック』は出来るだけ多くのエピソードを収録する事が触れ込みになっていたが、結果としては前述の3話に加えて「血がとまらない」「しずむ女」「水頭症」「最後に残る者」「魔女裁判」「壁」の6話が未収録となっていた。その6話が今回の『大全集』版では収録されるわけで、文庫全集の収録内容に期待して買った人が、いい加減にしてくれと思っても不思議ではない。
また、これは手塚作品ではないが、「未収録」「自主規制」が最近になって解除されたものに、アニメの『妖怪人間ベム [第1作]』がある。これまでは、第4話「せむし男の人魂」を「人魂」と題を変えた上で、全話にわたって「問題のありそうな部分」をカットしたヴァージョンのDVDが出ていたが、2010年になってようやく「初回放送オリジナル版」と銘打ったノーカットの本放送版DVD-BOXが発売された。
『ブラック・ジャック』と『妖怪人間ベム』とでは、自主規制の内容と理由が全然違うので、一概に比較してどうこうとは言えないが、こういう例があるのだと言う事は、心にとどめておいてもいいだろう。手塚プロだって、いつ方針を変更するかわかったものではない。
ここまで書いてきて、結局言いたいのは何かというと、3話未収録という中途半端さと、その対応で感じられる復刊ドットコム・手塚プロの事なかれ主義への苛立ちがどうにも収まらない、と言う事だ。
お前は買わないのだからどうでもいいだろうと言われればそれまでなのだが、もし全話完全収録なら無理して買っていたかも知れないのだ。そう思うと、非常に残念な気持ちだ。具体的に言えば、アニメ版『エスパー魔美』DVD-BOXの購入を見送った時の気持ちに近い。
ところで、手塚作品の復刻単行本に熱心な出版社と言えば、復刊ドットコムの他に小学館クリエイティブがある。
しかし、最近は小学館クリエイティブの出す本も、ネタ切れ感を強い。その最たるものが、手塚治虫レアコレクション 東光堂作品集だ。昭和30年代の再録単行本なんて、復刻されて嬉しい人がいったいどれだけいるのだろうか。「少年サンデー版」のシリーズも『勇者ダン』で終わってしまい、『スリル博士』は出ずじまいだ。今の小学館クリエイティブのラインナップには、私が惹かれる物はない。
それに加えて、今年になって始まった「GAMANGA BOOKS」シリーズの『三つ目がとおる』も、単に収録が発表順と言うだけで、内容的には従来の単行本と変わらず、非常に残念だった。これでは、次に刊行される『まんが道』も期待はできない。「あすなろ編」で「チャンピオンマンガ科」完全復刻をやってくれれば間違いなく買うのだが、まあまずないだろうな。そんな事をするなら、今頃すでに大々的に告知宣伝をしているだろうし。このシリーズでは、さらに『火の鳥』も予定されているが、こちらは今さらカラーと扉絵が付くくらいでは売りにならないはずで、どういった内容で出すつもりなのか気になるところだ。
手塚作品では、単行本化のたびに加筆修正が多くなされるので、オリジナル版や古い単行本(それ以降に加筆あり)の復刻にも意義はあると思う。しかし、ここ2年くらいの復刻本の濫発は、あまりにも読者不在になっている。いったい、全部を買っていると言う人はいるのだろうか。いや、いるのだろうとは思う。そういう人とは色々な意味で住む世界が違うのだろうなと思わざるを得ない。
と、言ったところで今回のエントリはおしまい。結局、貧乏人の愚痴になってしまい、実におはずかしい。とにかく、モヤモヤしていた気持ちはある程度落ち着いたと思う。よかったよかった。少年チャンピオンコミックスの『ブラック・ジャック』でも読むか。