映画「グッバイ、ドン・グリーズ!」感想

 昨日、映画「グッバイ、ドン・グリーズ!」を観てきた。
 ここで、その感想を書きたい。例年のドラえもん映画感想と同じく、思いっきりネタを割って書くので未見の方はご注意いただきたい


 さて、「グッバイ、ドン・グリーズ!」は、テレビアニメ『宇宙よりも遠い場所』(よりもい)のスタッフが再び結集して作られた劇場アニメだ。ただし、よりもいスタッフのうちシリーズ構成・脚本を担当した花田十輝先生だけは抜けている。今回の脚本は、花田先生ではなくいしづかあつこ監督が自分で手がけているのだ。
 なぜこのような座組になったのかはわからないが、脚本を監督自らが手がけたことで、監督が伝えたいことがよりストレートに表現された作品になったのではないかと思う。

 本作の予告編を見た段階では、どんな作品になるのかあまり予想が付かなかった。おそらく、少年たちの一夏の冒険といった話になるのではないかとは思っていたが、その程度だった。
 この予想は、半分は当たっていた。実際に「少年たちの一夏の冒険」は描かれていたからだ。しかし、それだけでは話は終わらなかった。映画の後半には少年たちは日本を飛び出して、アイスランドへと行くことになる。そこで繰り広げられたもう一つの冒険は、作品前半で描かれたドローン回収の旅と比べると、非常にスケールの大きなものであった。
 二人が確かめに行った「黄金の滝」と、その傍にあるという電話ボックスで起きた出来事については、色々な解釈ができるところだ。
 本当に、ドロップがいた時に間違い電話があの電話ボックスにかかったのか。それが起きたのだとしたら、「盲亀の浮木」に匹敵するほどの信じられないほどのものすごい偶然だ。しかし、だからこそあの場面では非常に胸にくるものがあった。
 ドローンさがしの冒険だけでも話としては成り立っているのだが、それだけで終わらせなかったことで話のスケールが地球規模に広がった。その分だけ、受ける感動も大きくなったと思う。

 ここで、前半のドローンさがしの旅についても触れておこう。
 この旅は、ドローンが放火の無実の証拠を撮影しているのではないかと言うところからはじまったもので、正直言ってちょっと情けない動機ではあるなとは思った。
 しかし、この旅を通じて三人が心を通わせる様子は非常に丁寧に描かれており、特にドロップについてはほぼ全てが後半への伏線となっていたのだから、物語の組み立てが非常に周到ではあった。
 「よりもい」にも言えたことだが、本作でも挿入歌が効果的に使われており、印象に残る。特に、ドン・グリーズの三人で歌う「Twinkle Twinkle Little Star」がよかった。

 最後まで観て、この作品からは「よりもい」にも勝るとも劣らない感銘を受けた。
 とりわけ、アイスランドの雄大な自然風景と、そこで描かれた「物語の結末」は印象的だ。そこに至るまでで、あえて描かれなかったこともある。ドロップがどうやって亡くなったのか、具体的なことは何一つ描かれていないが、この作品ではそれでいいと思う。そこまで描かなくても、十分に「何が起こったか」は伝わってくるからだ。
 それにしても、最後に電話ボックスにかかってきた電話は、いったい誰からだったのか。謎を一つ残していることになるが、そこからまた想像をふくらませることもできる。いい終わり方だった。
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富田耕生さん、死去

 富田耕生さんが、亡くなられた。

 非常にキャリアが長く、演じた役は多岐にわたるため、いろいろなキャラが頭に浮かぶが、藤子不二雄ファンとしては、一番に思いついたのは『プロゴルファー猿』の「おっちゃん」だった。
 アニメのおっちゃんは猿とは非常にいいコンビで、アニメオリジナルの展開として原作では猿一人だけだったゴルフ特訓道場にまで、おっちゃんがついてくるくらいなのだ。基本的に猿とおっちゃんは「凸凹コンビ」という感じなのだが、時には猿の父親代わりといった感じの立ち位置になることもあり、そんなときのおっちゃんの優しい演技も印象的だった。
 シンエイ藤子アニメでは、他に「ドラえもん のび太の海底鬼岩城」のポセイドンや、『怪物くん』の保険怪物モンストロと言った役で出演している。また、最近ではインド版『忍者ハットリくん』でもゲスト出演していた。

 シンエイ以外の「藤子アニメ」となると、日本テレビ動画の制作した日本テレビ版『ドラえもん』の初代ドラえもん役のことは、避けて通れない。
 富田さんが亡くなったニュースの見出しで「初代ドラえもん役」との記述が多く目に付いたが、富田さんのキャリアを振り返るならば、妥当な選択とは思えない。
 富田さんには珍しい主演であり、かつ「ドラえもん」という有名キャラクターだから取り上げられたのだと思うが、日テレ版『ドラえもん』は、視聴した人が限られるため、どちらかというと知る人ぞ知るアニメといった方が正しい。少なくとも、「初代ドラえもんの人」と言われて富田さんを連想する人は、ほとんどいまい。どう考えても、裏番組だった『マジンガーZ』のDr.ヘルの方が有名だろう。

 私自身は、『ドラえもん』に関してはシンエイ版大山のぶ代直撃世代なので、小原乃梨子さんの「テレビ・アニメ最前線」を読むまでは、日本テレビ版の存在すら知らなかったし、読んでからも知識として知るだけだった。
 その後、ある方のご厚意で富田さんの歌う「あいしゅうのドラえもん」を聴く機会があり、さらに当時のスタッフだった真佐美ジュンさんと知り合い、ネオ・ユートピアの上映会などで本編を観る機会に恵まれたが、いずれも富田さん演じるドラえもんの声には、大いに衝撃を受けたのだった。
 なにしろ、絵は「ドラえもん」なのに、しょぼくれた感じの(失礼だが)おっさんの声でしゃべっているのだから、その違和感たるや並大抵のものではない。もちろん、このドラえもんに最初に触れた人にとっては感じ方は違うのだろうが、私は大山世代なので、どうしても観ていて笑いをこらえられなかった。
 そんな日テレ版『ドラえもん』だが、現在では真佐美ジュンさんによる上映会も開催されなくなったため、一般的には視聴困難な作品だ。それだけに、富田さんによる初代ドラえもんはイメージがしにくいキャラクターだと思う。

 それでは、富田さんの代表作は、なんだろう。
 先ほど挙げたDr.ヘルのような悪役も含めて、富田さんと言えば博士役が非常に多いことで知られる。個人的に好きなのは、熱血漢で気のいい四ッ谷博士(『超電磁ロボ コン・バトラーV』)だが、子供を亡くすなどして徐々に精神を病んでいって、最終的には敵に寝返った『宇宙大帝ゴッドシグマ』の風見博士も忘れられない。あの怪演は、実にすばらしかった。
 また、富田さんと言えば、多くの手塚アニメでヒゲオヤジ(伴俊作)役を演じたことでも知られる。キャラクターの知名度から言えば、これも代表作の一つと言ってもいいだろう。
 特に、近年の手塚アニメではほぼ全ての作品でヒゲオヤジを演じているが、意外にも『鉄腕アトム』に関しては、担当したのは第3作の『ASTRO BOY 鉄腕アトム』だけで、白黒の第1作と1980年の第2作では、ヒゲオヤジ役は別の方が演じている。
 ただ、白黒版『鉄腕アトム』では、富田さんはゲストで様々な役を担当されており、特筆すべきは最終話「地球最大の冒険の巻」で、アトムのパパ役を担当されていることだろう。アトムのパパは準レギュラーキャラだが、声優はあまり一定しておらず、富田さん以外の方があてている回も多いのだが、最終話に関しては富田さんなのだ。それだけに、特に印象に残っている。
 ちなみに、個人的に富田さんが演じたヒゲオヤジで一番印象的なのは「マリン・エクスプレス」で、これが私が最初に観たヒゲオヤジ登場アニメ作品だったせいなのだろう。他には、『ジェッターマルス』などもよかった。『ジェッターマルス』や「マリン・エクスプレス」でヒゲオヤジを富田さんが担当した流れで、1980年版『鉄腕アトム』では富田さんではなく熊倉一雄さんになったのは、ちょっとふしぎだ。

 他にも、富田さんの主演作と言えそうな作品に『平成天才バカボン』や『まんが 花の係長』などがある。
 前者は、キャラの知名度から言っても代表作の一つに挙げて差し支えないだろう。『平成天才バカボン』だけでなく、雨森雅司さん亡き後はバカボンのパパは富田さんの持ち役の一つになっていた。後者は、主役であることは間違いないが、作品自体がマイナーなので、代表作とするにはやや苦しいか。幸いなことに、全話がBD化されているので、視聴はきわめて容易ではあるが。
 富田さんは洋画吹き替えでも多くの役を担当されているが、この分野は詳しくないので、ここでは触れないことにする。多分、私が無理に触れなくても、詳しい人がどこかで振り返ってくれているのではないだろうか。

 富田さんの出演作で印象に残るものとしては『ゲゲゲの鬼太郎』もある。白黒の第1作と続く第2作では、ほぼ番組レギュラーとして様々な役を担当していたのだ。
 なかでも、「おぼろぐるま」では、なんと水木しげる先生の役を担当しており、これが非常にはまり役だった。他にも、第2作では「やまたのおろち」の呼子や、「妖怪反物」のチー妖怪と言ったところが印象深い。

 この調子で、印象的な役を挙げていくときりがないので、このあたりにしておこう。
 本当に長い間、様々な作品のいろいろなキャラクターで楽しませていただいた。ありがとうございました。心より、ご冥福をお祈りします。
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小林亜星&筒井広志コンビのアニメBGM

 先日まで、『女王陛下のプティアンジェ』を観ていた。全26話、なかなか楽しい作品だったが、劇中音楽が話を大いに盛り上げていた。
 劇中音楽担当は筒井広志氏、そして主題歌の作曲は小林亜星氏だ。アニメソングとアニメ劇中音楽の分野で大きな功績を残した人の中でもこのお二人は、私がお気に入りのコンビなのだ。
 藤子アニメでは、『怪物くん [第2作]』『プロゴルファー猿』『新 プロゴルファー猿』『藤子・F・不二雄アニメスペシャル SFアドベンチャー T・Pぼん』の音楽と主題歌を担当したコンビであり、藤子ファンにもおなじみと言える。ちなみに、筒井氏は『パーマン [第1作]』の音楽も手がけているが、こちらの主題歌作曲は小林亜星氏ではない。

 私が初めて、このお二人の音楽に触れたのは、『怪物くん [第2作]』だ。
 主題歌は言うまでも無いが、劇中音楽として特に怖い場面を盛り上げる曲の数々が、印象に残る。その中でも、シリアスな曲がさらにスケールアップしたのが、『怪物くん [第2作]』とほぼ同一スタッフによるテレビスペシャル版『プロゴルファー猿』(劇伴は筒井氏だが主題歌は存在せず)であり、その流れの上にあるテレビシリーズ版『プロゴルファー猿』だ。
 また、『怪物くん [第2作]』の後番組、『フクちゃん』でもコンビは健在。こちらは愉快な感じの曲が多かった。
 このあたりの作品は、個人的に非常に思い入れがあるのだが、残念ながらサウンドトラックCDは発売されていない。特に、『怪物くん [第2作]』は、『プロゴルファー猿』ともどもぜひサントラを出して欲しいものだ。藤子アニメのサントラも徐々にではあるが出ているのとは言うものの、このコンビによる作品や、『ドラえもん』以外の菊池俊輔氏による作品などが一切サントラが出ていないのは残念としか言いようがない。


 以下に、このお二人の手がけたテレビアニメ作品を、以下に一通りまとめてみた。「★」マークが付いているのは、サウンドトラックCDが発売されている作品だ。
 なお、テレビアニメ以外でもドラマ等でこのコンビが参加した作品はあるが、ジャンル的に私が詳しくないので、あえて今回はテレビアニメのみのリストとさせていただいた。



『ハゼドン』(1972年)
『ドロロン えん魔くん』(1973年)★
『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1976年)★
『ブロッカー軍団IV マシーンブラスター』(1976年)★
『超電磁マシーン ボルテスV』(1977年)★
『女王陛下の プティアンジェ』(1977年)★
『宇宙魔神 ダイケンゴー』(1978年)
『未来ロボ ダルタニアス』(1979年)
『科学忍者隊 ガッチャマンF』(1979年)★
『花の子ルンルン』(1980年)
『怪物 くん [第2作]』(1980年)
『宇宙大帝 ゴッドシグマ』(1980年)
『あさりちゃん』(1982年)
『フクちゃん』(1982年)
『ベムベムハンター こてんぐテン丸』(1983年)
『プロゴルファー猿』(1985年)
『Bugってハニー』(1986年)★
『新 プロゴルファー猿』(1988年)
『藤子・F・不二雄アニメスペシャル SFアドベンチャー T・Pぼん』(1989年)



 以上になる。

 ともかく、このお二人は1970年代から80年代にかけてのアニメ音楽を語る上では、欠かせない。小林亜星氏独特のスケール感の大きなメロディーで作られた主題歌を、よりダイナミックにアレンジする筒井広志氏。すばらしい組み合わせだと思う。
 残念なのは、筒井氏が既に故人であり、今後このコンビによる新作は望めないという点だ。もっとも、仮に筒井氏がご健在であったとしても、現在はかなり高齢になるので、いずれにしても新曲というのは望みにくい気はするが。
 そして、1980年代の作品の劇伴が『Bugってハニー』を除いてCD化されていないのも残念だ。先ほども触れたが、藤子ファンとしてはぜひ『怪物くん』や『プロゴルファー猿』をCD化して欲しいし、『あさりちゃん』や『フクちゃん』も、子供の頃に観ていたなじみぶかい作品なのでCD化されればうれしいのだが、こういったファミリー向けのギャグ作品はなかなかフォローされない傾向にある気がする。『フクちゃん』なんて、DVD化すらされていないわけだし。
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『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』について

 現在、CSのテレ朝チャンネルでテレビアニメ『じゃりン子チエ』と『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』が放映中だ。
 高畑勲監督による第1シリーズ『じゃりン子チエ』は有名なのでいいとして、問題は第2シリーズ『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』だ。1991年から1992年にかけて放映されたこの作品、関西ローカル放送(正確には、西日本の3局のみ)だったために知名度は極端に低く、第1シリーズのファンであっても観ていないという人も少なくないのではないか。
 そこで、今回はこの『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』について、語ってみようと思う。

 放映期間は1991年10月19日から1992年9月22日まで。約一年だが、全話数は39話しかない。これは、途中で何回か再放送と休止を挟んでいるからだ。
 そもそも、この作品はまずは全13話のシリーズとして企画されたもので、「好評ならどんどん作っていく」とされていた。放映枠は土曜17時で、前番組は『三丁目の夕日』(第19話以降、関西ローカルに移行)だった。土曜17時というのは第1シリーズの当初の放映枠と同じだが、第1シリーズと違うのは、関東での放映がなく、それどころか同時ネット局は一局もないローカル放送だったことだ。
 その後、年が明けて1992年2月になると、本作は枠移動する。火曜19時のゴールデンタイムに引っ越したのだ。当時、火曜19時と言えば『サザエさん』の再放送がやっていた時間帯で、あえてこの時間に持ってきたあたりに局の本気度がうかがえると言えよう。また、この作品が好評を持って迎えられたことの一つの証拠にもなるのではないか。なお、枠移動後の初回放送の視聴率は12.6%。『サザエさん』の再放送を裏に回して、十分に健闘した。
 そして、1992年3月には再放送を挟むこととなった。これは、当初全13話で制作が進んでいたために、第14話以降が間に合わなかったことによる措置だろう。

 この『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』のスタッフだが、第1シリーズに関わった人が多く参加していることが、特徴の一つだ。
 監督の横田和善氏は第1シリーズの各話演出で、キャラクター・デザインの才田俊次氏は同じく各話作画監督だったし、他にもプロデューサーの尾崎隠通氏や脚本の高屋敷英夫氏なども第1シリーズに引き続いての参加となっている。
 声優についても、極力第1シリーズと同じ人をキャスティングしようという姿勢が見られる。それでも、全員は集められなかったようで、ミツルやカルメラ兄弟、マサルにタカシと言ったキャラの声が変わってしまっているが、第1シリーズから8年たっていることを考えたら、かなりがんばった方だと思う。なにしろ、メインキャラとは言えない勘九郎やマサルの母なども同じ人がやっているのだから。
 ただ、声優変更で個人的に残念だったのは、マサルの声が変わったことだ。他のキャラはまだ許容範囲内なのだが、マサルに関してはまるっきり違うイメージで、しかも第1シリーズのような小憎らしさがうまく表現されていない印象を受けてしまうのだ。本作のマサルを演じた谷真佐茂氏についてはよく知らないが、声の感じからして当時の子役だったのではないか。

 演出に関しては、高畑勲監督が抜けたことで第1シリーズとは印象が変わったとも言われるが、原作の中盤のアニメ化としては妥当なところなのではないかと思う。初期のようなチエとテツの関係性をズバリ描くようなエピソード自体が、本作で描かれるあたりの原作にはあまりなかったのだ。
 本作の演出家としては、高畑勲監督の演出助手も務めたことのある片渕須直氏の回がおもしろい。片渕氏は本作の全体の約3分の1ほどの話数で、絵コンテ・演出もしくはそのいずれかを担当しており、本作の演出面を語るには欠かせない一人と言えるだろう。
 作画面では、京都アニメーションがローテーションに参加している点に注目したい。上宇都辰夫氏を作画監督として、原画には後に『涼宮ハルヒの憂鬱』で監督を務める石原立也氏もいて、若き日の京アニの面々の仕事の一つであるのだ。

 そして、本作で気になったのはシリーズ構成だ。原作を最初から順番にアニメ化していった第1シリーズとは違い、本作は原作の様々なエピソードからアニメ化に向く話を切り取ってアニメ化しており、第1クールは特にこの傾向が顕著だ。要するに、大河ドラマ的性格のある原作を無理矢理に一話完結にしているのだ。
 この結果として、たとえばカルメラ兄弟がラーメン屋を開くまでのいきさつはばっさりカットされて、いきなりラーメン屋開店のエピソードが作られることになるなど、そぎ落とされたエピソードが出る事になってしまった。
 また、第1シリーズの最終エピソードで登場した応援団長が再登場する話があるのだが、続きの話にもかかわらず第2クールの途中に挟まれるというやや無理のある構成になってしまったのも残念だ。これに関してはテツに次回予告のナレーションで「10年ぶりやな」とわざわざ言わせるなど、スタッフもわかってやっていたのではあろうが。
 さすがに、細切れのエピソードばかりでは無理があると判断されたのか、第2クール以降はある程度連続した話を選んでアニメ化されることになったが、それでもこの形式はちょっと残念だったと思わずにはいられない。

 なお、本作は全39話であるが、本放送では第36話までしか放映されていない。
 1992年9月いっぱいで火曜19時の枠での放映が終わって、10月からは再び土曜17時に戻ると告知されていたのだが、実際に土曜17時に戻ると、また第1話からの再放送となってしまったのだ。
 アニメージュのスタッフコメントを読む限りでは、10月以降も新作を続ける予定であったことがうかがえるので、急に製作打ち切りが決まったのかもしれない。このあたり、詳しく知りたいものだ。
 第37話から第39話も、再放送が続く中で放送されたのだとは思われるが、それがはたしていつだったのかははっきりしない。2000年頃にCSのキッズステーション(アニマックスだったかもしれない)で行われた放送では、確実に全39話が放映されていたのだが。これに関しては、私自身が録画して観たので間違いない。

 そんなこんなでうやむやのうちに放映が終わってしまったが、『チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ』も、決して悪い作品ではない。
 高畑演出以外は認めないという向きにはおすすめできないが、『じゃりン子チエ』のアニメをもっと観たいという人は、観ておいても損はないのではないだろうか。
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アニメ本放送途中の再放送事情

 10月期のテレビアニメも始まってから一ヶ月ほどが経ったが、はやくも放送を「落として」しまい、再放送やら旧作OVAやらで穴埋めする作品が複数出てきており、もうアニメ業界は限界じゃないかという声も聞かれる。

 それでは、昔はどうだったのだろうか。
 昔はよかった、放送できないから再放送で穴埋めなんてことはなかった、と言いたいところだが、事実はそうではない。実際には、大昔から本放送途中での再放送というのはあったのだ。その理由が「制作が間に合わないから」なのかどうかは、今となっては確かめようがない。しかし、「再放送を挟んでいた」という事実は、はっきり残っている。

 実際に、どのアニメでどれだけ再放送を挟んだのか、『TVアニメ25年史』(徳間書店)と『虫プロダクション資料集 1962~1973』(虫プロダクション資料集編集室)のデータを元にして、制作会社別にまとめてみた。



●虫プロ

『鉄腕アトム [第1作]』全210回中、17回が再放送
『W3(ワンダースリー)』全56回中、4回が再放送
『国松さまのお通りだい』全52回中、6回が再放送


●東映動画(現・東映アニメーション)

『狼少年ケン』全91回中、5回が再放送
『ゲゲゲの鬼太郎 [第2作]』全52回中、7回が再放送
『魔女っ子メグちゃん』全78回中、6回が再放送
『ゲッターロボ』全57回中、6回が再放送
『カリメロ』全51回中、2回が再放送
『ゲッターロボG』全45回中、6回が再放送
『鋼鉄ジーグ』全48回中、2回が再放送
『マシンハヤブサ』全22回中、1回が再放送
『マグネロボ ガ・キーン』全42回中、3回が再放送
『超人戦隊バラタック』全37回中、6回が再放送
『ゲゲゲの鬼太郎 [第3作]』全111回中、3回が再放送


●東映(本社テレビ部)

『超電磁ロボ コン・バトラーV』全58回中、4回が再放送
『超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)』全43回中、3回が再放送
『とびだせ!マシーン飛竜』全26回中、5回が再放送


●エイケン(旧・TCJ)

『仙人』全24回中、1回が再放送
『エイトマン』全59回中、3回が再放送
『遊星仮面』全44回中、5回が再放送


●タツノコプロ

『新造人間キャシャーン』全38回中、3回が再放送
『タイムボカン』全65回中、4回が再放送
『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』全109回中、1回が再放送


●サンライズ(旧・日本サンライズ)

『無敵超人ザンボット3』全25回中、2回が再放送



 以上、資料をザッと確認してまとめてみた。ここで挙げた以外に、『UFO戦士ダイアポロンII』のように、ちょっとややこしいケースで再放送が混じった作品もあったが、今回は省略した。どういう事情かは、ご自分で調べてください。さらに、『ドラえもん』など、帯番組で放送後半に再放送が混じるケースも多いが、多くは詳細不明のため省いた。
 また、『レインボー戦隊ロビン』のように、ひととおり最終回まで放送した後に、枠が余って何度か再放送で埋めたというケースもあるが、それも今回は省いた。

 こうやって見てみると、『鉄腕アトム [第1作]』『狼少年ケン』『仙人』『無敵超人ザンボット3』と、各制作会社の第一作が軒並み再放送を挟んでいるのは面白い。会社ができたてで、制作体制がしっかりしていなかったと言う事なのだろうか。
 中でも、『鉄腕アトム [第1作]』は、最後の半年間は4回に1回が再放送(一ヶ月に一回)となったが、これなどはおそらく『W3』『ジャングル大帝』と3本立て制作体制で大変だったのだろう。

 また、東映動画の作品数が多いが、元々手がけている作品数が多いから、当然なのかもしれない。
 個人的に気になるのは『ゲゲゲの鬼太郎』だ。どういう事情だったのか、第2作のDVD-BOXブックレットなどを読んでみたが、再放送についての記載は視聴率くらいしか載っていなかった。もしかしたら、東映動画でおきたロックアウト事件(『デビルマン』が大いに影響を受けて、謎の演出家「鈴木実」が大活躍した)の影響があったのかと思ったが、どうやらそれは最終話「死神のノルマ」だけのようなので、全体として7本の再放送を挟んだ理由は、よくわからない。
 第3作についても理由はよくわからないのだが、この頃になるとアニメ雑誌も複数出ていたので、それらのバックナンバーを調べれば、あらかじめ予定に組み込まれていた再放送なのかどうかは、わかるかもしれない。今度、機会があったら、実際に調べてみたい。
 『ゲゲゲの鬼太郎』以外で気になるのは『ゲッターロボ』で、5回連続で再放送をおこなっており、まる一ヶ月半新作の放送を休んでいたことになる。どんな事情があったのか、ぜひ知りたいものだ。

 他の制作会社も含めて、『ゲゲゲの鬼太郎 [第3作]』以外は1970年代までの作品なので、1980年代に入ると、さすがに制作体制が安定して再放送を挟む必要はなくなった、と言うことなのかもしれない。
 いずれにせよ事情はわからないので、ここに書いたことは「再放送があった」という事実以外は、すべて私の憶測になる。その点、ご注意いただきたい。

 しかし、昔は昔で結構酷かったのだな。特に、昔は子供向けアニメがほとんどだから、楽しみにして観てみたら再放送だったときのがっかり感は、想像するにあまりある。
 だからと言って、現在のアニメで放送を落としまくることを肯定する意図は、一切ない。スケジュールはきついんだろうが、仕事でやっているんだから「できませんでした」は、ダメだと思う。まあ、どう考えてもいまのテレビアニメの本数は異常なので、その点では根本的に制作体制に無理があると言えるのかもしれないが。

 最後に、放送を「落とした」あの作品やこの作品が、ぶじに最終回まで放送される事を願って、このエントリを終わりにしたい。
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追悼・肝付兼太さん

 10月20日に、肝付兼太さんが亡くなった。80歳だった。

 そのニュースを聞いてから10日ほど経ってしまったが、気持ちも落ち着いたので、ここで肝付さんの思い出について、まとめておきたい。


 私が、肝付さんの声を初めて聴いたキャラは誰だったかとなると、やはり『ドラえもん』(シンエイ動画版・第1期)のスネ夫と言うことになると思う。時期的には『ジャングル黒べえ』の黒べえ、『新 オバケのQ太郎』のゴジラ(いずれも、再放送)あたりの可能性もあるが、幼少時に観た藤子アニメで一番インパクトが強いのは、やはり『ドラえもん』なのだ。

 そして、最初に「声優・肝付兼太」を意識したのは、『怪物くん』(シンエイ動画版)のドラキュラだと思う。
 まだ私が幼稚園児の頃に放映されていたのだが、「この声はあのアニメのあのキャラと同じ人だな」と、声優について意識した初めての作品だったのだ。今考えてみると、早熟な幼稚園児だな。
 肝付さんの声は、もちろん『ドラえもん』のスネ夫ですでに知っていたので、スネ夫とはまた違うキザっぽい演技が面白くて、こんな声も出せるのかと思ったことを覚えている。

 それから、いや、それ以前も含めての、肝付さんの藤子アニメにおける活躍は、もはや私がここに記すまでもないが、念のためテレビアニメにおける肝付さんの出演作を、わかる範囲で挙げておこう。



◆レギュラーキャラ

・『オバケのQ太郎』(東京ムービー版)ゴジラ
・『パーマン』(東京ムービー版)カバ夫
・『怪物くん』(東京ムービー版)番野
・『新 オバケのQ太郎』ゴジラ
・『ドラえもん』(日本テレビ動画版)ジャイアン
・『ジャングル黒べえ』黒べえ
・『ドラえもん』(シンエイ動画版・第1期)スネ夫
・『怪物くん』(シンエイ動画版)ドラキュラ
・『忍者ハットリくん』ケムマキ
・『パーマン』(シンエイ動画版)パーやん
・『オバケのQ太郎』(シンエイ動画版)ハカセ
・『ウルトラB』パパ
・『キテレツ大百科』刈野勉三
・『ビリ犬』鳥野博士
・『21エモン』オナベ


◆ゲストキャラ

・『ウメ星デンカ』
・『プロゴルファー猿』
・『エスパー魔美』
・『藤子不二雄のキテレツ大百科』
・『SFアドベンチャー T・Pぼん』
・『パラソルヘンべえ』
・『笑ゥせぇるすまん』



 こんなところか。鳥野博士あたりは、レギュラーと言えるかどうか微妙かな。それなりに出番はあったと思うが。他に、『ポコニャン!』のおじいちゃん役と言うのもあるが、この作品をまともに観ていないので、レギュラーキャラなのかゲスト扱いか、どちらなのかよくわからない。テレビアニメ以外では劇場版の「21エモン 宇宙へいらっしゃい!」「ドラミちゃん ミニドラSOS!!!」でのゴンスケ役もある。
 逆に、肝付さんの出ていない藤子アニメ(テレビシリーズ)を挙げると、『チンプイ』『モジャ公』『ドラえもん』(シンエイ動画版・第2期)『忍者ハットリくん』(インド制作版)といったところになるのかな。他はともかく、『チンプイ』に出演されていないというのは、時期的に少々意外だ。


 このように、藤子アニメに欠かせない存在と言われた肝付さんだが、もちろん藤子アニメ以外にも多くの作品に出演されている。
 そんな中でも特に印象的なキャラクターを挙げると、『タイムボカンシリーズ 逆転イッパツマン』のコン・コルドー会長は、スネ夫声の老婆と言うのが面白かった。おなじみの三悪であるのび太・ジャイアンの上にスネ夫がいるという構図も面白い。
 初期『ドラえもん』でも、肝付さんは老人のゲストキャラを多く演じていたし、コルドー会長のルーツとも言うべき『男一匹ガキ大将』の水戸のババアなどは、30代の頃の役なのだから、よっぽど昔から老人役が向いている声だったのだろう。

 他には、ややマイナーな作品であるが、『緊急発進セイバーキッズ』のDr.バグ役もユニークだった。コルドー会長と同様に純粋な悪役だが、コミカルな面もシリアスな面もこなせる貴重なキャラだったと思う。
 最終回(正確に言うと、その後に総集編が3本あったが)「さらばセイバーキッズ」でのすごみのある演技は、ちょっと忘れられないものだった。特に、おまえは何者だと問われた時に答えた「夢を食べるバグだよ」というセリフが、よかった。

 さらに、肝付さんの印象的な役はまだまだあるが、書いていくときりがないので、これくらいにしておこう。


 藤子アニメに話を戻すと、肝付さんの日本製アニメでの唯一の主演作品『ジャングル黒べえ』の話題は、外せないところだ。

 黒人差別問題で、長い間事実上の封印状態に置かれてきたが、2010年になって藤子・F・不二雄大全集で原作単行本が復活し、さらには2015年にアニメ版がDVD-BOX化、今年にはアニメ版のサウンドトラックCDも出るなど、肝付さんがお元気だったうちに作品を取り巻く状況が改善されて、作品が陽の目を見たのは本当によかった。
 私自身、諸般の都合でDVD-BOXは購入を先送りしていたのだが、肝付さんの訃報を聞いて、ほぼ勢いで購入してしまった。藤子アニメの中でも名作と言われる作品だし、購入したことに後悔はない。付属のブックレットでは肝付さんと杉山佳寿子さんの対談も掲載されており、DVD化で肝付さんが本当に喜んでいるのが、今となっては「間に合ってよかった」という気持ちにさせられる。

 なんにせよ、原作もアニメも完全な形でパッケージ化されており、今や『ジャングル黒べえ』は、藤子作品の中でも恵まれた立場と言えるのではないだろうか。


 あとは、個人的な話になるが、実は一度だけ肝付さんからメールをいただいたことがある。
 私のサイト「ドラちゃんのおへや」の中の「アニメ・旧『ドラえもん』大研究」をご覧になった肝付さんから、自分がジャイアンであったことは忘れていたという旨のメールが来たのだ。

 最初は、署名もなかったので、まさか本物の肝付さんとは思わなかったのだが、後から肝付さんご自身がインターネット上で旧ジャイアンのことを見たと語っており、それを聞いて調べたところ「suneo」で始まるメールアドレスは紛れもなく肝付さんご自身のものだったのだ。
 残念ながら、私は肝付さんと直接お話ししたことはないが、唯一肝付さんと関わりがあったとすれば、このメールなのだ。当然、今でも大事に保存してある。


 以上、肝付兼太さんについて、思うところをまとめて書かせていただいた。スネ夫をはじめとして、数多くのキャラで藤子アニメを彩ってくださった肝付さんには、藤子ファンとして感謝するばかりだ。
 長い間、本当にありがとうございました。
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『劇場版 魔法少女 まどか★マギカ [新編]叛逆の物語』感想

 昨日、大阪の梅田ブルク7で『劇場版 魔法少女 まどか★マギカ [新編]叛逆の物語』を世界最速の0時からの上映で観てきた。

 地元の名古屋でも最速上映があるのにわざわざ大阪まで行ったのは、もともとこの『叛逆の物語』よりも、「新房昭之監督作品上映祭」として同時上映された『ひだまりスケッチ 沙英・ヒロ卒業編』の方が目当てだったからだ。もちろん、「新房昭之監督作品上映祭」がなくても『叛逆の物語』は観るつもりだったが、それよりも劇場公開は最初で最後のチャンスかも知れない『沙英・ヒロ 卒業編』の方が貴重だと思っていたわけだ(注:その後『沙英・ヒロ卒業編』は、BS-TBSで11/29の放映が決定)。




※以下、具体的な映画の内容に触れます。未見の方はご注意下さい。

 さて、そんな状態で実際に映画を観て、どうだったか。鑑賞前の期待値は『叛逆の物語』<『沙英・ヒロ卒業編』だったのが、観賞後の印象の強さは、『叛逆の物語』>『沙英・ヒロ卒業編』になってしまった。
 『沙英・ヒロ卒業編』も、丁寧に作ってあっていい作品だったのだが、原作があり、それに沿って三年生の二人の卒業を描く作品であることは分かっており、その通りの内容だった。印象としては、「ああ、よかったなあ」でおわってしまうのだ。
 それに対して『叛逆の物語』は、途中まで「多分、これこれこういう展開になるんだろうな」と予想していた展開を、完全にひっくり返して、おそらくほとんどの人が予想できなかったであろう結末を迎えた。成功作か失敗作かはおいておいて、おとりあえず「問題作」であることは間違いない。いや、「問題作」であると思う人が増えれば増えるほど、それはこの作品にとっての「成功」なのかもしれない。


 『叛逆の物語』前半は、5人の魔法少女が力を合わせて「ナイトメア」と呼ばれる存在に立ち向かう姿が描かれる。5人それぞれの特徴や協力技を描いたバトルシーンや、5人の仲のいい姿などは、テレビシリーズでは決して観られなかったものであり、私を含めてこのシリーズのファンが「観てみたい」と思っていたものだろう。
 その反面、観ていて誰もが「こんなのはウソだ」「ウソの世界が描かれているんだ」と思ったことだろう。もちろん、私も「いつ、このウソの世界が暴かれるのだろう」と思いながら観ていた。だから、ほむらによる謎解きが始まったときは、「ようやく話が本筋に入ったか」と安堵したものだった。
 また、前半~謎解きが終わるまでの中盤は少々既視感を覚えながらの鑑賞でもあった。と言うのも、「記憶を消されてウソの世界に閉じこめられている」という設定は、昔から多くの作品で観られたからだ。真っ先に連想したのは、少々古い作品ではあるが、手塚治虫の短編「赤の他人」(手塚治虫漫画全集『SFファンシーフリー』などに収録)だった。アニメでは『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』の第1話や『ゼーガペイン』などを思い出した。
 もちろん、過去に類例のある設定だから悪いと言いたいのではない。問題は、今作ではどのようにこの設定を料理しているかであり、その謎解き次第で成功も失敗も両方あり得ると思い、スタッフのお手並み拝見をするつもりで観ていた。

 では、その謎解きはどうだったかと言われると、「まあまあ」と答えるしかない。「誰かが魔女であり、その魔女が偽の世界を作っている」という真相が示された時点で、魔女がほむらであるという事は薄々感づいてしまった。ミステリで意外な犯人と言えば、探偵本人がそうである場合であり、今作ならそれはほむらだから、その可能性を疑わずにはいられなかった。だから、魔女の正体に驚きは少なかった。しかし、ほむらが自らが魔女であることに気づく場面はショックな心が効果的に描かれていて、いい演出だったと思う。そう言う部分も含めての「まあまあ」である。


 その後、色々あってアルティメットまどかが現れ、ほむらが円環の理によって救済されてハッピーエンド…。もう、そうなるものだとばかり思って観ていた。なんとなく物足りない気はするが、これはこれできれいな終わりかな。完全に終わっていたテレビシリーズおよび総集編映画から、よくこれだけ「続き」の話を作れたものだ、などと考えながら。
 そこに、「アレ」だ。具体的に言うと、「悪魔」と「愛」。あそこからの怒濤の展開は、全く予想していなかっただけに、あっけにとられたと言う表現がもっともしっくりくる。こうなったら、画面で起こることは可能な限り観のがすまいと思ってスクリーンに集中していたら、あっという間にエンディングを迎えていた。当然ながら、観逃したものもたくさんあるだろうから、さっそく第2回の鑑賞にいつ行くかを考え中だ。
 繰り返すが、ほむら悪魔化の展開は、まったく読めなかった。そこまでに至る話が比較的に予定調和な話となっていただけに、「やられた」感は非常に大きい。悪魔ほむらが「"愛"よ」と言ったときは不覚にも吹いてしまった。
 悪魔ほむらが作り出したあの世界、はたしてまどか達が幸せなのかどうかは判断しがたい。しかし、テレビシリーズの結末で幸せなのかどうかと問われると、やはりどちらとも決めつけがたい。その意味では、今作の結末はハッピーエンドと言っていいのかも知れない。少なくとも、個人的には「アリ」だと思う。

 本作は、1回観ただけですべての要素を鑑賞できるとは言い切れない。たとえば、ほむら魔女化についてキュゥべえが語った理屈。正直、私は完全に理解しているとは言い難い。なんかキュゥべえがたくらんだんだなと言うのはわかるが(簡略化しすぎ)。
 ともかく、そう言う点を含めて、また観返したくなる映画だ。はっきり言ってスタッフのもくろみ通りなのかも知れないが。そう言う意味では、やはり「成功作」なのかな。
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さようならAT-X

 今日は、2月28日。以前にも当ブログで取り上げたが、いよいよ今日でAT-X(スカパー!標準画質)の放送が終わる。
 AT-Xの視聴を続けるには、無料のスカパー!HDチューナーを貰うか、それともe2で標準画質を観続けるかの選択肢があったが、私はそのいずれも採らなかった。ここ半年ほど、AT-Xは旧作の録画(『おじゃまんが山田くん』『紅三四郎』など)と、単発放映作品(『ココロコネクト』の14~17話など)がほとんどで、新作のテレビシリーズ作品を観ることはなくなっていた。元々、それが目当てで入っていたのだから、AT-Xの契約について考え直すには、ちょうどいいタイミングだった。

 思い返せば、AT-Xに加入したのは2003年の1月、まだ関西の実家にいた頃だった。
 当時は、テレビ大阪ですらやらないテレ東アニメがいくつかあり、それを観たさにAT-Xに加入したのだった。確か、2003年1月期の関東ローカルテレ東アニメは『ななか6/17』だったと思う。
 そして、その2ヶ月後には名古屋に戻った。名古屋で就職が決まったからで、この機に実家とは別にスカパー!に加入した。テレビ大阪でやらないテレ東アニメは、ほとんどの場合はテレビ愛知でもやらない(例外…1年以上遅れて放送した『ガン×ソード』)わけで、依然として私にとってAT-Xは意味のある存在だった。そんなわけで、名古屋で独り暮らしを始めた当初、キッズステーション・ANIMAX・AT-Xの3チャンネルを契約して、色々なアニメを楽しみに観ていた。勝手知ったる名古屋とは言え、初めての独り暮らしで不安もあった毎日、AT-Xをはじめとするスカパー!のチャンネルが慰めになっていたような気がする。
 新作だけでなく、AT-Xはいわゆる「珍作」枠で、珍しい作品も多く放送されており、『ブロッカー軍団IV マシーンブラスター』や『合身戦隊メカンダーロボ』などの古いロボットアニメや『チャージマン研!』のようなネタアニメまで、楽しみに観ていた。特に、『チャージマン研!』を全話ノーカット放送できるのは、このチャンネルくらいだろう。事実、キッズステーションでは欠番が出てしまった。

 そうやってAT-Xを楽しんできて、早いもので10年が経ってしまった。
 いつの間にかUHFアニメが台頭して、テレ東アニメは元気を失っていった。UHFアニメは多くの作品がBS無料放送でも観られるようになり、私にとってのAT-Xの存在意義がどんどん薄れていた。繰り返すが、今回のことは本当に契約を見直すいい機会だった。
 とりあえず、3月のラインナップを見る限り、今の私にとってAT-Xは無くても困らないチャンネルだ。寂しいことだが、事実なので仕方がない。観ないチャンネルに1,890円を払う余裕はないので、とりあえず解約とした。

 また、いずれAT-Xを契約したいものだ。その時までに、スカパー!HD視聴環境を整えておかなければ。ともかく、まずはさようなら、AT-X。そして、ありがとう。
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アニメソングの「テレビサイズ」について

 最近、アニメソングの「テレビサイズ」版に、ちょっと凝っている。
 きっかけは、タイムボカンシリーズだった。なんとなく主題歌のテレビサイズを聴きたくなって、サウンドトラックCDに収録されているテレビサイズOP・EDを聴いたのだ。その後、他のタツノコ作品のテレビサイズも聴きたいと思うようになり、もうその後は止まらなかった。最終的には、手元にあるCDに収録されているテレビサイズ音源は全て聴いてしまおうと言う勢いになって、気が付いたらプレイリスト「テレビサイズ」の登録曲数は、100曲を超えていた。探せば、結構あるものだ。

 そもそも、テレビサイズの何がよいのか。一番大きいのは、「テレビ放送で聴いたのと同じもの」であることだ。テレビサイズの演奏時間は、大抵が1分~1分30秒くらいで、その中に作品のテーマを詰め込んでいて(そうでないのも最近は多いが)、しかも毎週かならず聴くのだから、思い入れはフルコーラスよりテレビサイズの方が大きい。しかも、大抵はフルコーラスより短いのでテンポもいいし、短い時間で多くの曲を聴けるのはありがたい。とは言え、「デビルマンのうた」や「ミクロイドS」のキー局版のようにテンポがよすぎる(演奏時間45秒!)のも、ちょっとどうかと思うが。

 そんなテレビサイズ音源の鑑賞だが、いくつかの問題もある。一番大きいのは、多くの曲はサントラを買わないとCD音源が入手出来ないという点だ。私の場合、サントラは余程好きな作品でないと購入しないから、どうしても聴ける曲が限られてしまう。また、権利上の都合などで、サントラにすらテレビサイズが収録されない場合もある。『タイムボカンシリーズ ヤットデタマン』のEDや『科学忍者隊 ガッチャマンII』のOP・EDなどが、そうだ。また、タイムボカンシリーズのサントラは『逆転イッパツマン』で終わりとなって、最終作『イタダキマン』のサントラはイッパツマンのおまけ扱いになったため、『イタダキマン』OP・EDのテレビサイズはCD化されていない。
 他にも、たとえば『マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ』2代目OP・EDのテレビサイズは、サントラには収録されていない。初代OP・EDはサントラに入っているが、その次のサントラが2年目シリーズ『マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ ピュア』のものとして出てしまったのだ。だから、1年目シリーズの後半分に使われた2代目OP・EDは、1年目と2年目の狭間に埋もれてしまったような扱いになったと言える。
 また、テレビサイズと謳っておきながら、実際のオンエア版とは微妙に違うものが収録されている場合も意外と多い。オンエア版との違いで一番多いのは、効果音の有無だろうか。あとは、「たたかえ!キャシャーン」(『新造人間キャシャーン』OP)のように、アバンナレーションが無いような場合がある。いずれも、オンエア版で親しんでいる要素なので、CD版では微妙に物足りない。

 と、色々と問題点はあるが、基本的には、テレビサイズの歌を聴くのは非常に楽しい。聴いていて、自然とOP・ED映像が浮かんできて、ワクワクする。今後は、ちょっと意識してテレビサイズ音源を集めてみようかという気にもなってしまった。
 Amazonで「アニメ テレビサイズ」検索をかけてみると、結構な数のアルバムがヒットした。自分の手持ちの音源と被るものも少なくないので、どれから手を出そうか、迷ってしまう。どうやら、また妙な領域に足を踏み入れてしまったようだ。
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なぜアニメを録画保存するのか

 昨日、東京・秋葉原で個人的なミニオフ会を開いた。
 会の詳細はここには書かないが、色々と話をした中で、アニメの録画に関する話題があった。録画はしているか、録画するならどんな環境なのか、などいろんな方面に話が及んだ。
 その時、ふと思った。自分は、なぜアニメを録画して、かつ保存するようになったのだろうかと。それを再確認するために、このエントリでは私とアニメ録画についての今までを振り返ってみたい。

 まず、私がアニメを録画保存するようになったのはいつ、どの作品だったか。
 我が家に初めてビデオが入ったのは、1987年のことだった。それから1~2年間は、特に録ったものを保存するという意識はなく、ごく一部の番組を除いて何度も何度も重ね録りをしていた事が、何本か手元に残った当時のテープからうかがえる。
 最初に「この番組を残しておこう」と思った作品は、どうやら本放送では1989年4月スタートの『青いブリンク』だったようだ。手塚作品にはまって、アニメも観ようとしていた矢先に手塚先生が亡くなり、アニメでの遺作の一つとなった作品で、それ故に特別な作品と思って観ていたため、どうせなら残しておこうと思ったようだ。同じく1989年の10月からは、テレビ東京系-テレビ愛知で『ジャングル大帝 [第2作]』も開始され、こちらも録画保存していた。木曜19時30分はリアルタイムでは『チンプイ』を観ていたせいもある。おかげで、『ジャングル大帝 [第2作]』の録画は何本か残っているが、『チンプイ』は1本も録画しておらず、今となってはもったいない事だったと思う。
 ちなみに、『青いブリンク』は本放送で全話観たが、『ジャングル大帝 [第2作]』は第1話・第2話(初回1時間スペシャル)を観たっきりで、その後第3話以降は録画したままで観ずじまいだった。「とりあえずとっておいてそのまま」と言う悪いクセは、録画保存を始めた当初からあったわけで、我ながら苦笑せざるを得ない。

 再放送では、1988~90年頃にやっていた『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』が録画保存の最初だと思う。これをきっかけに、他のタイムボカンシリーズ再放送も録画して、『ゼンダマン』『逆転イッパツマン』『イタダキマン』は、ほぼ全話の録画が今でも残っている。
 『ヤッターマン』を保存しようと思った最初の再放送は第44話「ドロンボー三銃士だコロン」からの放送だったため、前半分が録画できない状況だったのだが、その後すぐに局を替えてまた第1話から始まったので、無事に前半分を確保する事が出来た。当時は本当に『ヤッターマン』の再放送が多かったものだ。
 再放送は本放送と違って、大半が月~金の週5話放送だったから、中学生だった私にとってはテープの工面が大変だった。もはや、当時のテープ1本の相場はあまり覚えていない(1本300~500円くらいか)が、小遣いにかなり影響する額だったのはたしかだ。それ故に、保存用であっても録画は3倍モードにせざるを得なかった。

 この後、中学生から高校生になってもアニメを観続けて、もう後戻りが出来ない領域へと踏み込んでいくわけだが、この時期に、全話録画保存している作品は、ほぼないと言っていい。ここをご覧いただければわかるように、ある程度の本数の作品は観ているが、当時は夕方アニメが多かったせいもあり、大体の作品が本放送リアルタイム視聴だった。保存用に録っていたのは、せいぜい『藤子不二雄Aの 笑ゥせぇるすまん』や『さすらいくん』など「ギミア・ぶれいく」内の藤子アニメくらいだ。これも、今なら番組全体を録画→目的のアニメだけを切り出し、で済んでしまうのだろうな。当時はアニメが始まるまで番組に張り付いていたものだったが。
 とにかく、高校生になって小遣いも増えて、以前よりはテープが買える状況になったのに、録画保存をしなかった理由は不明。思い出そうとしても当時の心境がわからないのだ。少なくとも、アニメは一回観て終わりと言う考えだったらしい事は確かだろうが。

 アニメの録画保存を再開したのは、大学生になってからの事だ。きっかけはズバリ『新世紀エヴァンゲリオン』だった。テレビ愛知では毎週木曜日の朝7時35分から放送していたこの作品、時間帯が微妙なので録画はしていたのだが、重ね録りで観て消しにしていた。7~8話あたりで特に気に入った作品となったのだが、それ故に序盤の話数を観返したくなり、録画を残していない事を残念に思う気持ちが強くなった。
 それで、「次クールからは新番組の序盤は標準モードで録っておき、中でも特に気に入った作品はそのまま標準で残そう」と思いたったのだ。当時はVHSビデオデッキだったのが現在はPCへと変わってはいるが、録画保存の基本方針は、ほぼ変わらない。人間、なかなか成長しないものだ。
 いや、実は21世紀に入った頃に、録画スタイルに少々の変化があった。それまで標準モードで残していたのが、録画本数が増えてテープが足りなくなったために、3倍モードに切り替えたのだ。この頃の3倍モード録画分は後から観返すと見るに耐えない画質だったために、大半を処分してしまった。何でも、ケチってはいけないと言ういい例だ。

 と、ここまで書いてきて、あらためてわかったが、結局アニメを録画保存する動機は、やはり「好きな作品を何度も観返したい」なのだ。
 近年は、HDDレコーダーやPC上で扱えるデジタルデータとして録画しており、簡単に多数の作品を録画できて、いざ「要らない」となったときには簡単に消せるようになったが故に、安易に多量の作品をドンドン録画して、とても観られる量ではない分の録画が溜まっていく。そうやっているうちに、「観るために録る」ではなくて、「録るために観る(と言う動機付けをする)」という本末転倒な状態になっていったのだ。
 私の今までの人生の中で、視聴&録画アニメタイトル数のピークは、2000年代後半で間違いない。多くの作品を「いずれ観るかも知れない」と、録画した端からDVD-RAMにため込んでいた。その「観ていない」ディスクの大部分は、今年になってから行ったディスクの整理で、処分してしまった。冷静になって考えると、DVD-RAMにかけた金が非常にもったいないが、今になってDVD-RAMに別の用途があるかとなると容量的に微妙なので、苦渋の決断で処分せざるを得なかった。

 今年になってから色々と思うところがあって、アニメ視聴スタイルを、ある程度時間余裕を持った形に変えた。ようやく「録画を残す作品=特に好きな作品」という、本来あるべき形に戻る事が出来たと思う。
 現状の録画・視聴環境での、個人的な「特に好きな作品」ランクは、A:映像ソフト(BD)を買う、B:BD-RとHDDに保存する、C:HDDに保存する、の三段階となるが、予算の都合もあってAランク作品は年に1本程度だ。なお、更に下に「それなりに好きな作品」として、「観て消し」の作品があるのは言うまでもない。
 とにかく、保存する作品はかなり絞った形になった。

 今後も、「一期一会」の精神で、気に入った作品は出来る限り愛して応援したいと思う。
 もっとも、今観ている作品は主に深夜アニメだから、観ようとすると録画は避けられないのだけど。
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