『謎の五月祭X』に行ってきた

 もう一週間以上経ってしまったが、5月19日に東京大学五月祭(学園祭)で開催された「謎の彼女X」講演会『謎の五月祭X』に行ってきた。

 放映中のアニメ版『謎の彼女X』のみならず、原作を読み切り版(単行本の第0話)から追っている者としては、見逃せないイベントだった。
 この日の前後に用事が入っており、スケジュール的には厳しい状況だったが、参加申し込みをしておいたところ、参加者多数のために行われた抽選(倍率2倍)に、運良く当選した。こうなると、私の分で一人参加できない人が出てしまうわけで、申し訳なくて欠席するわけには行かない。これは、天が「参加しろ」と背中を押してくれたのだと思い、ギリギリで参加を決意した。

 出演者は、渡辺歩監督、吉谷彩子さん、広橋涼さん、那須利治氏(原作の担当編集)、池田慎一氏(アニメ版プロデューサー)の5人。
 当日のトークの内容については、大まかには2ちゃんねるのスレへの書き込みがこちらにまとめられており、これをご覧いただければ事足りるが、特に個人的に印象が強かった事について、箇条書きで紹介しておく。


・渡辺監督と植芝先生とで、初めて会った時にサインの交換をした。
・渡辺監督:「スタッフは自分のテンションがあがる人とやりたい。自分にとっての最強の布陣を強いた」
・渡辺監督:「卜部のキャスティングについては、『生っぽさ』を重視した。吉谷さん本人も謎の人。」
・渡辺監督:「オープニングはどこかで観たような懐かしさを狙ったが、思っていたよりも爽やかになった。階段を上るシーンは「とてとて感」を大切にした。あそこは、植芝先生に捧げる気持ちで作った」


 こんなところか。なんだか、渡辺監督の発言ばかりになってしまった。

 なお、このイベントは第一部「『謎の彼女X』アニメ化までの道のり+第一話ライブコメンタリ」、第二部「『謎の彼女X』の魅力とは」の二部構成で進められて、第二部終了後には、質疑応答のコーナーがあった。
 事前に配られたチラシには、質疑応答の質問は30秒以内と書いてあったのだが、このような場所に来る人は作品に思い入れが強いせいか、質問もその答えもずいぶん長くなって、単なる質疑応答に留まらない「第三部」のような印象を受けた。
 質疑応答で特に印象深かったのは、「『帰ってきたドラえもん』からの渡辺監督のファン」という女性がいた事だ。私も対抗して「『おしゃべり切手』(渡辺監督の初コンテ作)からのファンです」と言ってみようかと思ってしまったが、残念ながら質問を思いつかなかった。知りたいと思っていた事は第一部と第二部で、ほぼ語られていた。
 そう言えば、参加者は空気を読んだのか、「なぜ主題歌は単品発売せずにBDの付属なんですか」と質問した人はいなかったな。最初の質問者は主題歌について語り始めたので、これはもしやと思ったら、質問は違う方向(主題歌と吉谷さん、どちらが先にあったのか)だった(回答:主題歌が先)。

 出演者の5人の方々の話はそれぞれ興味深かったが、中でも広橋さんのトークは面白かった。どうも、あの人が喋ると「広橋ワールド」が形成されるなあ。質疑応答で「今、面白いアニメは何ですか」の質問に『タイガーマスク』と答えたのは、さすがだと思ってしまった。


 個人的に少々残念だったのは、席が後ろの方だったので、たまに発言が聞こえにくかったのと、那須氏が持参されていた植芝先生のメッセージイラスト(スケッチブックに描かれたもの)が、よく見えなかった事だ。
 それでも、全体としてはスムースに進められて、いいイベントだったと思う。ちなみに、なぜ『謎の彼女X』を取り上げる事になったのかというと、このコンテンツゼミのスタッフが作品を好きだったから、との事。特に、東大だからどうこうと言う事ではなかったようだ。

 あと、嬉しかったのは、最後に行われたポスタープレゼントのジャンケン大会で勝利して、番宣ポスターを手に入れた事だ。こういったジャンケンで勝った試しがなかったので、嬉しかった。名古屋まで折り目を付けずに持って帰るのが、少々大変だったけど。
 とにかく、名古屋から日帰りで少々きつかったが、行ってよかったと思える内容だった。アニメは8話まで放映されて既に後半に入っているが、あのスタッフ・キャスト陣なら最後までいい作品にしてくれるだろう。今後にも、大いに期待したい。
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『手塚治虫文庫全集』未収録作品を読むには

 『手塚治虫文庫全集』(以下、「文庫全集」)全200巻が、完結した。

 この文庫全集は、『手治虫漫画全集』(以下、「B6全集」)全400巻完結後に刊行された作品を増補した内容になる事が、売りの一つだった。
 B6全集未収録作品はまだまだ多いので、『ミッドナイト』の未収録話や、『キングコング』などの初期単行本が収録されればいいなあと期待していたが、結果としては期待はずれだった。『三つ目がとおる』は全話収録に出来るのに、『ミッドナイト』は秋田文庫にも収録済みの最終話のみ追加というように作品によって扱いが違うのは、理解に苦しむ。『ミッドナイト』の未収録は、あと11本も残っているのだ。
 初期単行本も、今回追加されたのは『バンビ』『ピノキオ』と『新寳島オリジナル版』の3本のみ。『怪盗黄金バット』『キングコング』『妖怪探偵団』『月世界紳士』などは未収録のままだ。せめて、文庫全集刊行中に小学館クリエイティブからの復刻が実現した『月世界紳士』だけでも、何とかならなかったのだろうか。

 この他、文庫全集に対する不満を言っていくときりがないが、B6全集を再編集して今度こそきちんとした「全集」にする事ができたチャンスだったのに、結果としてB6全集とあまり代わり映えのしない内容になってしまったのは残念だ。
 文庫全集の刊行末期には、『手塚治虫漫画全集未収録作品集』(全3巻)なるタイトルも刊行された。この本で、B6全集完結後に単行本に収録された作品が、ある程度まとめられたが、収録内容を見ると「残り物の寄せ集め」感は否めないし、この本に漏れてしまったタイトルも、いくつか存在する。

 そこで、このエントリでは、文庫全集を補完する意味でB6全集完結後に刊行された単行本のうち、文庫全集未収録作品を収めているタイトルをご紹介する。「もっと手塚作品を読みたい」という方へのガイドとなれば幸いだ。



・『手塚治虫 カラー秘蔵作品集』(ジェネオンエンタテインメント)
 「ぎっこちゃんまっこちゃん」
 「ピンピン生ちゃん」
 「しらゆきひめ」
 「せむしのこうま」
 「かにとへび」
 「孔雀石」(未完)
 「山小屋の灯」


・『手塚治虫 予告編マンガ大全集』(ジェネオンエンタテインメント)
 「無題」
 「らびちゃんつきへいく」
 「びいこちゃん」(※『手塚治虫の昆虫博覧会』にも収録)
 「びいこちゃんのゆめ」
 「ロックホームの冒険 赤壁邸の密室」
 「ロックホームの冒険 赤壁博士」
 「ロックホームの冒険 6」(未発表・未完成原稿)
 「じょうだんスリラー 骨」


 以上の2冊は、カラー作品は全てフルカラーで収録。「しらゆきひめ」「らびちゃんつきへいく」などは絵本形式の作品のために文庫全集から漏れたと思われる。「ぎっこちゃんまっこちゃん」「じょうだんスリラー 骨」あたりは、1ページ物だったためだろうか。



・ちくま文庫『二階堂黎人が選ぶ!手塚治虫ミステリー傑作集』(筑摩書房)
 「探偵ブンチャン」
 「鳩時計事件」
 「犯人あて大懸賞」


 3作品とも、1ページのクイズ的作品。


・『おもしろブック版 ライオンブックス2』(小学館クリエイティブ)
 「双生児殺人事件」


 旧「ライオンブックス」シリーズ唯一の全集未収録作品。代筆や作品の出来など色々と問題はあるようだが、復刻されてはいるのだから文庫全集にも入れるべきだったと思う。



・『漫画教室』(小学館クリエイティブ)
 「漫画教室」
 「漫画教室」(ダイジェスト版)
 「漫画つうしんぼ」
 「漫画中学」
 「マンガ千一夜」
 「こうすれば まんが家になれる」


 単行本初収録の漫画入門書的作品をまとめた一冊。



・『銀河少年 手塚治虫少年漫画作品集』(国書刊行会)
 「前世紀星」(未完)
 「風之進がんばる」


 国書刊行会のこのシリーズで復刻されたうち、「銀河少年」「快傑シラノ」「豆大統領」「ハリケーンZ」は『全集未収録作品集』に収録された。この二作品が外された理由はよくわからない。



・秋田文庫『ブラック・ジャック Treasure Book』(秋田書店)
 「壁」


 『ブラック・ジャック』は、刊行時期を「B6全集完結後」に限ると、未収録は「壁」1本なのだが、それ以外に少年チャンピオン・コミックス(全25巻)に収録されていた作品が、いくつかこっそりと外されている。
 タイトルを挙げると、3巻「血がとまらない」、4巻「しずむ女」、4巻(初版~16版?)「植物人間」、6巻「水頭症」、13巻「最後に残る者」、17巻「魔女裁判」の6本(「植物人間」を外すと5本)。
 あえて多くは語らないが、こうやって眺めてみるとなんとなく作品の傾向がわかる。これらが、手塚プロがこっそり「封印」したい作品群と言う事なのか。旧版チャンコミは古書店で容易に入手可能なので、全集版や新版チャンコミしか持っていない人は、今のうちに旧版の該当巻をおさえておくといいだろう。



・秋田文庫『どろんこ先生』(秋田書店)
 「おはよう!クスコ」を全話収録(全集はセレクション)

 この本を、「おはよう!クスコ」目当てで買った人は、果たして私以外に何人いるのだろう。そもそも、この本が「「おはよう!クスコ」完全収録」を売りにしていないので、最初から知らないと言う人がほとんどのような気がする。



・サンデーコミックス『ジャングル大帝レオ』第2巻(秋田書店)
 「パンジャの死」
 「レオの誕生」
 「恩師キバア」

 これは、「小学三年生」版の前半部分(全集では後半のみ収録)。おそらく、正編と内容が被るので未収録になったと思われる。実際、この「小学三年生」版の前半から、正編(全集版)にかなりの原稿が流用されている。ストーリー的に小三版独自のエピソードは「恩師キバア」のみ。



・『鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集』Unit7(復刊ドットコム)
 「小学一年生」版
 「小学四年生」版(後半)

 Unit7は追加で発売されたもので、「少年」「鉄腕アトムクラブ」連載分以外の『鉄腕アトム』全編を収録している。「小学一年生」版の一部は、後述の「ぴっかぴかコミックス」にも一部収録されている。「小学四年生」版は、連載前半が「アトム還る」として全集に収録されているが、後半部分は初単行本化。



・『火の鳥《オリジナル版》復刻大全集』(復刊ドットコム)
 「COM」版「望郷編」(第5回配本「復活編・羽衣編」)
 「COM」版「乱世編」(第7回配本「乱世編(上)」)

 「COM」版「望郷編」「乱世編」は、いずれも未完に終わったため、これまで単行本には未収録だった。



・ぴっかぴかコミックス『ふしぎなメルモ』(小学館)
 「ゆうかいはんをやっつけろ」(1巻)
 「のんちゃんのくせ」(2巻)
 「らんぼうな車」(2巻)
 「花火」(2巻)
 「くまのお母さん」(2巻)
 「スケート場」(2巻)
 「デザイナー」(2巻)


・ぴっかぴかコミックス『ガムガムパンチ』(小学館)
 「ガムの神様」(1巻)
 「ままごとのうち」(1巻)
 「テレビあらそい」(1巻)
 「怪獣動物園」(1巻)
 「山登り」(1巻)
 「オニたいじ」(1巻)
 「いたずらガムン」(1巻)
 「遊園地」(1巻)
 「おみやげきょうそう」(1巻)
 「すて犬」(1巻)
 「ガムくらべ」(1巻)
 「ゴリラの親子」(2巻)


・ぴっかぴかコミックス『鉄腕アトム』(小学館)
 「アトムふっ活」(1巻)
 「はえのかいじゅう」(1巻)
 「お母さんかいじゅう」(1巻)


・ぴっかぴかコミックス『ユニコ』(小学館)
 「北風の神様」(3巻)


 近年の手塚単行本で、意外とあなどれないのが「ぴっかぴかコミックス」で、ここで挙げた未収録作品が含まれているだけでなく、全集収録作品も扉絵付き・カラーで読む事が出来る。残念なのは、「小学二年生」版『鉄腕アトム』以外は完全収録でないところか。『ガムガムパンチ』など全50話もあるのだから、その気になれば第3巻以降も出せただろうに、もったいない。



・『手塚治虫デビュー作品集』(毎日ワンズ)
 「マァチャンの日記帳」
 「AチャンB子チャン探検記」
 「グッちゃんとパイコさん」
 「ぐっちゃん」


 1991年に毎日新聞社から刊行されたものの復刻本。ただし、「象のくしゃみ」「光速旅行時代!」「パンサーを探せ」はカットされている。
 「マァチャンの日記帳」は言わずと知れたデビュー作だが、全集はリライト版「マァチャン トンチャン」を収録。「AチャンB子チャン探検記」は、全集では二コマカットあり。「グッちゃんとパイコさん」は全集には完全に未収録。「ぐっちゃん」は全集はセレクト版。



・『手塚治虫の昆虫博覧会』(いそっぷ社)
 「びいこちゃん」(※『手塚治虫 予告編マンガ大全集』にも収録)

・『手塚治虫の動物王国』(いそっぷ社)
 「あわてみみちゃん」
 「こぐまのブブ」
 「ほんのちょっぴり物語」
 「かわいそうなゾウ」

・『手塚治虫の理科教室』(いそっぷ社)
 「宇宙旅行」


 以上の三冊は、テーマに沿って収録した漫画に解説を付けたもの。これらの本で単行本初収録となった作品は他にもあるが、それらは文庫全集の『手塚治虫漫画全集未収録作品集』第2巻に再録された。


・『ボクのまんが記』(朝日新聞出版)

 『ボクのまんが記』を、初めて全回にわたって、初出当時の形式で復刻。本来ならB6全集の「別巻」に入っていてもおかしくない作品だと思う。



・立風ベストムック『未発掘の玉手箱 手塚治虫』(立風書房)
 「さるかに合戦の真相」ほか、全集未収録の短編漫画・挿絵多数

 1ページ物・4コマ・1コマや小説の挿絵・イラストなどの細かい仕事が多数フォローされた一冊。



 以上、確認できる範囲で「文庫全集未収録作品」を、順不同で挙げてみた。多分、私の把握していないものが、まだあると思う。ご指摘下されば、幸いです。

 なお、「B6全集完結後の本」という定義から外れるので今回は取り上げていないが、以前に当ブログで取り上げたとおり、文民社版『手塚治虫作品集』第6巻では『ガムガムパンチ』全50話が完全収録されているし、第8巻「カラー作品集」には全集未収録作品が多数収録されているなど、全集とは関係ない独自の編集で出された本に、全集未収録作品が入っている場合もある。
 また、最近はやりの「雑誌掲載オリジナル版」単行本も、作品によっては従来の単行本とは別物と言えるものもあり、まだまだ手塚作品は奥が深い。
 どこまで読んでいくかは個人の好きずきだが、ここにあげた本はまだ大半が入手容易なはずだから、読んでおいても損はないと思う。
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