十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

黄落

2017-02-05 | Weblog
黄落や信号渡るビートルズ     圭 々

ビートルズが横断歩道を渡るあのシーン。アルバム、『Abbey Road』のジャケットの撮影で使われたアビーロードだ。私たち世代の誰もが知ってる映像である、という了解のもとで詠まれて、俳句の可能性がさらに広がる一句である。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

散紅葉

2017-02-03 | Weblog
渓川の奥の消息散紅葉     井芹眞一郎

「渓川」とは、渓谷に流れる川である。きっと、このたびの大地震で、通行止めとなった熊本県北を流れる菊池渓谷だと思われる。美しい紅葉で知られる名所も、昨年ばかりは見ることができず残念であった。「渓川の奥の消息」に、心を痛めている作者であるが、「散紅葉」が淋しさを一層募らせる。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori

大綿

2017-02-02 | Weblog
大綿を見失ひたる刻の隙     山下しげ人

「刻」は「時間」のと同義であり、途切れることなく続いて行くものである。しかし、「刻」に、「隙」があるという発見。まさしく、時間は刻まれてゆく一瞬一瞬であることを実感する。その「刻の隙」に、大綿を見失ったという。大綿の漠とした存在感が、無理なく伝わって来る作品である。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

年忘

2017-02-01 | Weblog
年忘地震を超え来し人ばかり     岩岡中正

熊本市内で毎月開催される例会は、常に50人ほどの参加者で一杯になる。昨年4月の大地震を境に、「地震」を詠んだ句が大半を占めるようになったが、次第にその数も徐々に減りつつある。それだけ、会員の誰もが地震を目の当たりに経験し、今も尚その復旧の最中にあるということだ。しかし、句会場で見る句友の顔は、いつもと変わらない笑顔である。まるで、地震などなかったかのように・・・。「年忘」で、ともに過ごした人々の顔も、そんな笑顔であったと思われる。「地震を超え来し人ばかり」には、互いに言葉にしなくてもわかり合える共通の感情が、流れているように思えた。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)