十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

☆師(19)

2016-03-26 | Weblog
先師、鬨也先生は「馬」という素材を、好んで詠んでいたが、東北で「馬」と言えば、南部駒である。広辞苑によると、南部駒は、〈青森・岩手・秋田地方から産する日本馬。体躯大で強靭。〉とある。源義経が、奥州平泉を出立する際、藤原秀衡より愛用の南部駒を贈ったと伝えられているが、戦国時代を支えて来たのはこの南部駒の存在であった。東北の厳しい気候が産んだ名馬だったと思われる。「馬」の句を二句挙げる。

さざなみの中に馬立つ桜かな
林檎齧つて片手さばきの馬上かな
    
一句目、南部駒への限りないロマンが感じられるが、すでに絶滅してしまった名馬だからこそのロマンだろうか。「馬」と「桜」の長閑な構図は、古代東北の原風景かもしれない。さざなみの中に立つ馬は、すでに幻なのだ。二句目、平泉の義経の武者振りが想像されるが、上五から中七へ一気に詠まれたスピード感は、若さが漲り、臨場感に溢れる。(Midori)