十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

師☆追悼(18)

2016-03-22 | Weblog
 第5句集『曲炎』には、民族性のある句がいくつか見られるが、「阿弖流為=朝廷軍とたたかった古代東北の英雄」という前書のある一句をはじめ、次の5句を挙げる。

阿弖流為の鞭や響みて雪解山
阿弖流為と母禮に遭ふべく鶏頭過ぐ
まつろはぬ者の涙や冬銀河 
荒蝦夷滝凍ててこそ尊けれ
薪能うしろに蝦夷の大樹あり

 「蝦夷」についての形式上最古の言及は『日本書紀』神武東征記中に詠まれている愛濔詩として登場する。大和朝廷から続く歴代の中央政権から見て、東方の人々を異端視して使う言葉であったが、中央集権の拡大とともにその範囲は北上し、近世以後、北海道以北に住む人々をいうようになった。また、「阿弖流為」は、『広辞苑』のよると、平安初期、北上川流域を支配した蝦夷の族長であり、789年大和朝廷を破るが、802年征夷大将軍、坂上田村麻呂に降り河内国杜山で斬殺されたという。初出は『続日本書紀』にその名があるだけで、阿弖流為の人物像は定かではない。
 鬨也先生は、阿弖流為の哀史を折に触れて語っていたが、平成十二年には、田村麻呂が創建したと伝えられる京都の清水寺を訪れ、4句目にあるように「阿弖流為・母禮の顕彰碑」に遇っている。鬨也先生にとっても阿弖流為は郷土が誇る歴史上の英雄だという認識があったことは確かである。近年になって、阿弖流為と母禮の「顕彰碑」が建立されたことから推察すれば、阿弖流為の復権が成されたものと解釈できるだろうか。(MIdori)