ガリバー通信

「自然・いのち・元気」をモットーに「ガリバー」が綴る、出逢い・自然・子ども・音楽・旅・料理・野球・政治・京田辺など。

蓬摘みのおばあさん

2005年10月31日 | 季節の話題
 10月31日である。何と明日は11月1日。早くも2005年の6分の5が過ぎ去ったことになる。

 なんとも早く時間が経過して一年がこんなにも早く過ぎ去って行くとは、子どもの頃の時間経過と、何故にこんなにも違うのかと思うほどである。

 今年の場合は、9月,10月と日中の暑さはずっと続いていた様に感じていて、つい1,2週間前までは「いつまでも暑いですね」と挨拶していたのであるが、阪神が日本一になれずロッテに4連敗で完敗してからというもの、急に朝晩の寒さが増して、秋を通り越して冬の到来だという方もおられるくらいになった。

 現に、ここ2週間ほどは「涼しくなりましたね」と言えば、「寒いわ」と言われることが多くて、夏から一直線に冬へと気候がまっしぐらに変化している感じでもある。

 そんな中、昨日の昼下がりに私の議会報告の配布のために急ぎ足で少々汗をかきながら、家から家へとポスティングしつつ歩いていたら、一人のおばあさんに出会ったのである。

 小柄で上品そうなおばあさんは、近くの住宅街にあった古い市営住宅の跡地で空き地となって木の柵で囲われて雑草が生えている場所に立ち入って、草を摘んでおられたのである。

 私は「蓬ですか?」とたずねてみた。するとおばあさんは腰を起こして、手に一杯の蓬を握ったまま、「ええ、団子をつくろ思って」とにこやかに返答されたのである。

 秋の夕暮れ時に、住宅街のはずれの囲いの中の空き地にいて、黙々と草を摘むひとりのおばあさん。年の頃なら80前後と思われる彼女に続けて聞いてみた。

 「蓬はいい香りやけど、犬、猫のおしっこがかかってへん?」とちょっと意地悪な質問である。すると彼女は「そう思って囲いの中のを摘んでるんです」と返答されたのである。

 私は心の中では「おばあさんが入れる囲いなんだから、犬、猫も簡単に入れるよ」と思ったのだが、「そうだね、美味しい蓬団子作ってくださいね」と声をかけて、その場を立ち去ったのである。

 とにかく現代社会の中で、自然に生えている草や薬草を食材のひとつとして、手作りでおやつやお惣菜を作る知恵や工夫が最近少なくなってきている状況の中で、なかなかほっこりとした一コマの光景に出会った気がしたのである。

 コンビニやスーパーに行けば、蓬団子は買えるだろう。しかし身近な自然の中に蓬を見つけて、手間のかかる手作りで団子をつくる、ゆっくりとした時間の流れの中で創られる様を想像したのである。

 蓬を持ち帰ったおばあさんは、自宅で蓬を整理して水で洗い、ごみや汚れを落として、茹でて小さくきざんで、すり鉢ですって捏ねる。少なくともこれだけのプロセスで蓬を料理して、最後にあんこを入れるかどうかは分からないが、手間隙かけた「蓬団子」が出来るはずである。

 今頃、昨日摘んだ蓬で作った、おばあさん特製の団子を召し上がっているのではないだろうかと目に想像してみるだけでも、心がほっこりする秋の夕べである。

 
コメント
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