BORIS/NOISE
世界に誇る日本のへヴィロックバンド、Borisのメジャーからの第二弾アルバムが登場。
世界中のファンが、このへヴィかつ、メロウなロックチューンの数々に酔いしれる。
アンダーグランドに立脚した活動スタンスながら、近年ビジュアル系のアーティスト(DEADENDなど)との親交もある。ジャンルを超えた存在であるBorisであるが、今作はよりLIVEでの実像に近い、へヴィだがメロディアスな側面がコントラストを描くような楽曲集。10分超の長尺もフィーチャーした、まさに日本の至宝のロックバンドを余すことなく捉えたドキュメントとも言える内容である。
収録曲:黒猫メロディ/Vanilla/あの人たち/雨/太陽のバカ/Angel/Quicksilver/シエスタ 全8曲収録
BORISを初めて観たのは2006年3月26日下北沢Shelterでの朝生愛との対バンライヴだった。『ラヴェンダー・エディション』というこのクールな女性シンガーのCDをサイケデリック・バンドTHE STARSの物販で音も聴かずに購入して以来、大いに気に入ってライヴに通っていた。THE STARSの石原洋と栗原道夫+PEACE MUSICの中村宗一郎がバックを務めた朝生のライヴは、細く消え入りそうな声が楽器の合間から見え隠れする幻想の世界。HEAVY ROCK/STONER ROCKの代表格とされるBORISとの対バンはミスマッチの極みだと思ったが、以降も両者はさらに親交を深め、BORISのギタリストWATAが朝生のライヴにゲスト出演したり、写真集付きSPLIT SINGLEをリリースしたりした。他方THE STARSの栗原がBORISに参加し、朝生/THE STARS/BORISの人脈が交差した。現在も変わりなく活動するのはBORISだけだが、ライヴ会場には必ず朝生や石原の姿がある。
2011年のメジャー・デビュー作『NEW ALBUM』は1曲目のハイパーなダンスビートに面喰らったが、アソビ・セクスとの対バンライヴで相変わらずへヴィでドゥームな世界を確認し溜飲を下げた。惜しくも解散したアソビ・セクスとは2012年のレコード・ストア・デイにSPLIT SINGLEをリリースした。以来毎年ライヴに通っているが、日本の柵(しがらみ)を打ち壊すオープンな精神性とジャンルに限定されない自由なサウンド志向、そして何よりもクール・ビューティーWATAの殺人ファズ・ギターに中毒しきり。今年1月のワンマンも凄まじかった。
⇒Boris@東高円寺U.F.O.CLUB/BiS@代々木公園野外ステージ 2014.1.11(sat)
新作『NOISE』でも、ずっと追求してきたテンションの高いHEAVY ROCKが貫かれている。「黒猫メロディ」「太陽のバカ」といったクサい邦題もイイ。特に「雨(HEAVY RAIN)」のWATAのフローティングヴォイスにトバされる。彼らにとっての「ノイズ」とは"ノイズ好きのリスナーが聴いたときに、「ウワッ」って思うようなもの"だと語る。その意味では前作を聴いたときの筆者の反応こそ理想の「ノイズ」に違いない。"自分たちの中では今までで一番音楽的な作品"と語る『NOISE』は聴き手に「ウワッ」よりも「ウワヮヮフワフワワァァァヮァア」と思わせてくれる強力な世界が展開されている。
⇒インタビュー「BORISはなぜ海外で成功し得た? 文脈を喪失した時代に輝くバンド」
●BORIS「黒猫メロディ」の秘密に迫る
海外盤は真っ黒に近いヘヴィロックらしいジャケットだが、花模様のカーテンの前に佇む黒猫の横顔の日本盤の方が断然いい。黒猫=BLACK CATは古くからブルースの定番のテーマとして歌われてきた。海外のインタビューで"『NOISE』は日本のブルースだ"と語る通り、1曲目に「黒猫メロディ」(英題は単に「Melody」)とタイトルしたのは、黒猫ブルースの伝統に因んだのかもしれない。
世界の音楽を密かに支配する黒猫神話(Black Cat Mythology)をひも解いてみた。
●皆川おさむ「黒ネコのタンゴ」
アラフォー以上の日本人の心に棲む黒猫ソングといえば、当時6歳の皆川おさむが放った国民的ヒット。黒猫=気紛れとは本質を突いている。
●人間椅子「黒猫」
ニューアルバム「無頼豊饒』をリリースしたばかりの文芸ロックの雄の1996年の6thアルバム『無限の住人』収録ナンバー。泉鏡花の同名小説にインスパイアされた曲。
●Acid Black Cherry「黒猫~Adult Black Cat~」
V系バンドJanne Da Arcのヴォーカルyasuのソロプロジェクト、通称「ABC」の17作目のシングルナンバー。黒猫を大人の女の象徴として描く。
●ジャネット・ジャクソン「ブラック・キャットt」
マイコーの妹ジャネットの1990年の全米No.1ヒット。曲調はヘヴィメタルで、リミックスヴァージョンにエクストリームのギターヒーロー、ヌーノ・ベッテンコートが参加したのも話題になった。
●ジョニー・ウィンター「ブラック・キャット・ボーン」
Black Cat Bone(黒猫の骨)はブルースのスタンダード。ジョニー以外にもアルバート・キング、バディ・ガイ等多くのブルースマンが歌っている。
●ベック・ボガート&アピス「黒猫の叫び(Black Cat Moan)」
Black Cat Moan(黒猫の嘆き)のスタンダード。70年代のスーパートリオの筆頭BBAのカヴァーでロックファンにもお馴染み。
●ブラック・キャット・ボーンズ『有刺鉄線サンドウィッチ』
有名ブルース・ナンバーをバンド名に冠した彼らは、ヒットはしなかったが、フリー以上の英国地味渋ブルースバンドとしてマニアに知られる。
黒猫は
荷物も届ける
優れもの