A Challenge To Fate

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リシャール・ピナス/灰野敬二/メルツバウ/吉田達也@六本木スーパー・デラックス 2013.5.30 (thu)

2013年06月01日 01時18分58秒 | 灰野敬二さんのこと


リシャール・ピナス 幻の来日公演が二年の時を経て実現!
出演:リシャール・ピナス (エルドン)/灰野敬二/メルツバウ/吉田達也

幻の来日公演が二年ぶりの実現! 2011年4月4日に公演開催を予定、告知スタート後、東日本大震災の影響により中止となったリシャール・ピナス幻の来日公演が二年の時を経て実現。超実力派アーティスト4人の共演をどうぞお見逃し無く。



30数年前キング・レコード・ヨーロピアン・ロック・コレクションというシリーズがあった。イタリア、ドイツ、フランス、スペイン等欧州各国のプログレの名盤・レア盤をオリジナルLPに忠実な装丁で廉価盤で国内発売した意義はとても大きい。レコード店で配布された小冊子「European Rock Hand Book」には同シリーズの紹介だけではなく輸入盤カタログが掲載されユーロロックの芳醇な世界を教えてくれた。「Fool’s Mate」「Marquee Moon」といったプログレ系音楽誌の隆盛と相まってこのシリーズにより日本にプログレ人気が根付いたことは間違いない。シンフォニック系中心のラインアップに交じって時々実験的・前衛的な作品もリリースされた。そのひとつがリシャール・ピナス率いるフランスのエルドンだった。「フランスのクリムゾン」と紹介され興味を惹かれ聴いた「エルドン4th」はギターの音色こそロバート・フリップを思わせるがロックというより電子音楽、しかも今でいうアンビエント風でかなり面食らった覚えがある。ミニマルな電子音の中を浮遊するピナスのフリッパトロニクス・ギターが非ロック的な酩酊感を醸し出し部屋を暗くして瞑想しながら聴くのが相応しかった。

当時のプログレ・シリーズのラインナップが既に解散・活動停止したアーティストのカタログ中心だった中でエルドン/ピナスの作品があまり時差がなく日本発売されたという事実は注目に値する。化石化した古典ではなく生きている前衛作品。パンク/ニューウェイヴとは無関係だが同時代的な共振性がある。今思えばクリムゾンなどのプログレではなくノイ!やクラスターといったジャーマン・エレクトロの流れを汲んでいたのがエルドンだった。’80年代プログレ・ブームに育った世代にとってエルドン&リシャール・ピナスの名前とヘルメットや放射能保護服の未来的なジャケットには神にも似た畏怖の念を感じるに違いない。


1979年にエルドンは活動停止、ピナスはソロ活動を続けよりミニマルなギター・アンビエント作品を続々発表する。哲学者でもある彼の学究的な創作活動は世界各地の前衛的音楽シーンとリンクしてきた。2006年に初来日し秋田昌美=メルツバウと共演したのをきっかけにコラボレーション・アルバムを数作リリースしている。

今回の来日はコメントにあるように震災で中止となった2011年のリベンジ・ツアー。初日は六本木で日本の先端音楽のカリスマと共演。プログレ天国の様相を呈する2013年にさらなる大物到来という話題性に加え日仏の歴史的邂逅ということもありスーデラは満員御礼。プログレ系とノイズ・アヴァンギャルド系両方の客層に加えフランス繋がりの外国人客が入り交じる。客席は期待感でざわざわしている。

●灰野敬二+メルツバウ+吉田達也


ピナスの来日コンサートという思い込みがあったのでいきなりピナス抜きのセッションに意外な気がした。しかし考えてみればそれぞれデュオやユニットでの共演はあるがこの3人だけのセッションは史上初でありそれだけで大事件。この日がいかに奇蹟的な夜なのかを実感する。オープニングということもあり気合十分の演奏。灰野とメルツバウの轟音の波を切り裂く吉田のパワー・ドラムが心地よい。ギターとエアシンセの演奏に没入する灰野の激しいアクションに呼応した吉田の乱打がシンクロする。全体を包み込みのはメルツバウのノイズの砂嵐。


(写真・動画の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

●リシャール・ピナス+灰野敬二


秋田と吉田は前回の来日で共演しているが、灰野との共演はおそらく初めてだと思われる。ピナスのギターの重層的なアンビエント・サウンドが灰野のヘヴンリーかつダークかつデーモニックな表情豊かなヴォーカリゼーションを荘厳かつ幻想的にバックアップする。この展開は予想していなかっただけに驚きに似た感動が沸き上がる。灰野のヴォーカル・パフォーマンスは何度も観てきたがこれほど豊饒なコラボレーションは滅多に経験できない。この日最も印象深かったのがこのセッションだった。



●リシャール・ピナス+メルツバウ+吉田達也


最初のセッションとはギタリストが代わっただけだが演奏の表情は全く違う。強烈な存在感を主張する灰野がアクション・ペインティングだとしたら暗闇に佇み空間を埋める音響を奏するピナスは水墨画。メルツバウのノイズと親和性のあるギターノイズに異物的に注入される吉田のドラミングが未知のアルケミーを生む。ノイズとドラムのミックスは最近のメルツバウの方向性に合致するが、音楽的含蓄に満ち溢れる三者の激突はまさに現場でしか起こりえないマジカルな光を放つ。



●リシャール・ピナス+灰野敬二+メルツバウ+吉田達也


アンコールは全員のセッション。灰野はエアシンセを演奏。力のぶつかり合いではなくお互いを尊重したうえで展開されるバトルは10分弱という短時間に各自のエッセンスが凝縮された濃厚なヘヴィネスに溢れていた。



この日を皮切りに6月9日まで計7日間公演が開催される。最終日は吉田率いる是巨人との共演でエルドンの「スタンド・バイ」も演奏するとのこと。

フランスの
狂気に満ちた
ナイス・ミドル

ロバート・フリップ翁はいかがお過ごしだろうか。



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