ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

農耕の価値

2008年07月11日 | 通信-環境・自然

 私の住むアパートは2階建て4世帯で、1世帯2DK(約10坪)の小さなアパートだが、敷地は広い。6台は十分停められる駐車場があり、1階の2世帯にはそれぞれ7坪ほどの庭があり、また、店子用にと区分けされた畑も付いている。
 畑は10坪ほどあり、その内の4坪を私が使っている。たったの4坪だが、除草したり耕したり、植え付けしたり、なかなか時間を取られている。そして、たった4坪だが、私の食卓の食糧自給にまあまあの役に立っている。安全で新鮮な野菜を得ている。

 昔、高校を卒業する前のこと、「農業がやりたい」と両親に話したことがある。両親は大反対であった。父は、「農業で生きていけると思ってるのか!百姓なんてのは他に能力の無い者がやるんだ!」とまで言った。父は、定年退職後、家の屋上にプランターを置いて、また、親戚の畑を借りたりして農作業を嬉々としてやっていたので、けして、農業が嫌いというわけではなかったようだ。ただ、息子には、大学に行って、ちゃんとした会社に勤めて、結婚して、マイホームを建てて、などという生活をおくって欲しかったのであろう。そのためには、農夫よりも会社員が近道と思ったのであろう。
 私もまた、農業が好きで「農業がやりたい」と言ったわけでは無い。将来何になりたいという確固とした意志も夢も持たなかった少年は、食い物さえあれば生きていけるという漠然とした考えからそう言っただけで、結局、その後、農業を目指すことも無く、農夫になるための何の努力もしないまま、だらだらと生きてしまう。

  20年ほど前、高校の同級生に自然農法を実践している人がいるということを聞き、弟子入りして、彼女から農業のいろはをちょっと学ぶ。その後、学んだことを生かす機会はしばらく無かったが、14年前に今のアパートに越してから役に立つことになった。
 夏は暑く冬は寒いボロアパートであるが、畑があるというだけで私は大いに満足している。食料自給の思いは若い頃から持っていた。たった4坪では、自給率は千分の一にもならないが、僅かであっても食糧自給への小さな歩みだ。今の仕事が定年、またはリストラになったら、300坪ほどの畑を借りて、農業をやりたいと思っている。
 「概ね粗食ほぼ小食」の生活を始めて7年ほどになる。10個しかないアンパンを一人で5個も6個も食う奴がいるから、1口も食えない人がたくさん出てくる、と私は考えており、これからも粗食小食を続けるつもりである。芋を米の代わりにしてもよい。豆腐を肉の代わりにしても よい。300坪で芋と大豆、その他、季節季節の野菜を育て、粗食小食の人間二人分は生産できるのではないかと机上の計算をしているところだ。
 食い物さえあれば生きていける。生きていける安心感は心に余裕を生む。余裕は平和を生む。それが農耕の価値となる。それで世界が平和になったら農耕の勝ちである。
          
          

 東京の1割の人が1坪の家庭菜園を持つと、合わせておよそ400haとなる。これは、東京ディズニーランド+ディズニーシーの約4倍だ。その広さの農地ができる。東京も多少は住み良い街になるに違いない。採りたて野菜は美味いですぜ。
 今週サミットがあった。地球環境や食料問題などが議題になった。どの国も納得するような妙案は無いと思うが、この先、良い方向へ向かうことを期待する。

 参考(になるか?)写真:新鮮野菜料理
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 記:2008.7.11 島乃ガジ丸


瓦版062 恋する季節が来にけらし

2008年07月04日 | ユクレー瓦版

 久しぶりにユーナが里帰りした。ユーナにとってはユクレー島が故郷だ。だから、里帰りとなる。ちなみに、子供の頃からユクレー島にいて、長く暮らした者はごく少ない。ユーナとチシャだけである。チシャは今、漁師となって遠洋漁業の仕事に就き、もう2年ほど帰っていないが、彼にとっても故郷はユクレー島の他に無い。
 ユーナは今年の春、大学生となり、オキナワの大学に通っている。帰ろうと思えばすぐに帰れる距離にいるので、夏休みになって、早速の帰省となったようだ。それと今回は、マナが産休ということで、マナの代わりにユクレー屋の手伝いという役割もある。

 ユクレー屋に入ると、いつものようにカウンターにケダマンが座っていて、既にジョッキのビールを口にしている。そして、カウンターの向こうには久しぶりのユーナだ。ケダマンの隣に腰掛けながら、
 「やー、元気そうだね。私もビール。」と声をかける。
 「うん、久しぶり。」と言って、ユーナはニカッと笑う。口を横に大きく広げて、歯を見せて笑う。ちっとも変わっていない。子供の頃と同じ笑い方だ。
 「はい、お待たせ、ビール。」と言って近付いたユーナの顔が、柔らかく微笑んでいる顔がしかし、それは以前とどこかちょっと違う。
 「ユーナ、何だかちょっと雰囲気違うな。」(私)
 「ん?そうか?おっ、そういえば、どことなく大人びて見え・・・あっ、ユーナ、おめぇ、もしかして化粧して無ぇか?」(ケダ)
 「私だって女子大生だよ。もしかしなくても化粧くらいするさあ。」
 「そうか、そうだね。女子大生なんだな。でも、そう濃くは無いね。」(私)
 「えへっ、元がいいからね。濃くする必要は無いのさ。ナチュラルメークさ。」
 「元が良いかどうかにはちょっと疑問があるが、まあ、そうだな、口紅も薄いし、ケバっている感じは全く無いな。でも、どこか何か違うなあ。」(ケダ)
 「そうだ、あれだ、眉毛抜いたりするんだよ、今時は。」(私)
 「残念ながら、あいにく私は元々薄くてさ。逆に描いているよ。」
 「あー、それだ。ユルユルだった顔が、それでキリっとしてるんだ。だから全体の雰囲気がちょっと違って感じられたんだ。」(私)
     

 と、ここで、ガジ丸一行(ガジ丸、ジラースー、勝さん、新さん、太郎さん)がやってきて、話は一時中断した。ジラースー、勝さん、新さん、太郎さんは奥のテーブルでウフオバーを加えて、いつもの会議となり、ガジ丸は我々に加わった。

 「化粧が濃いって言えば、マナは濃かったな。ここに来た時分は。」(ケダ)
 「でもすぐに、さっきユーナが言ってたようなナチュラルメークになったよ。」(私)
 「あれだよ、この島でケバっても詮無きことと気付いたんだぜ。」(ケダ)
 「そういえば、この島の女の人はほとんど薄化粧だよね。そういえば、マミナ先生の家にもウフオバーの家にも化粧品なんて一つも無いよ。」(私)
 「マミナはともかく、ウフオバーに化粧品は不要だぜ。何しろあの魔女は、顔を手でゴシゴシするだけで美女に変身できるからな。」(ケダ)
 「何の話さ?」とユーナが訊くが、我々は知っている。ケダもそれには答えず、
 「しかしよ、化粧なんてのは男を騙しているようなもんだぜ。俺も人間だった頃、何度化粧に騙されたことか。まったく、女はバケモンだぜ。」
 と、ここで、今まで黙っていたガジ丸が口を開いた。
 「見た目に騙される方がバカだと俺は思うけがな。」
 「そうだ、そうだ。」とユーナが大喜びする。それを制して、
 「あのな、」とガジ丸はユーナの方に顔を向けて、話を続ける。「ユーナもそろそろ恋する季節だから言っとくけどな、良いことも悪いこともひっくるめて人格なんだ。化粧したって良いんだ。きれいな服や宝石で着飾ったって良いんだ。禿げがカツラをしたっていいさ。それもこれも全部ひっくるめて、その人がその人であることを認めてあげるのが先ず第一だ。そうして、その後に、付き合えるかどうか判断すればいいんだぜ。」
 何か随分と真面目な話を、珍しくガジ丸が語ったが、
 「うん、分った。」とユーナは素直に肯いた。ガジ丸に対しては元々素直なんだが、ガジ丸が言う通り、ユーナは恋する季節に差し掛かっているのかもしれない。

 「あー、そんな話で思い出した。そういう唄があったんだ。昔、クガ兄が、オキナワがオキナワらしさを失いつつあるのでは無いかと案じて作ったそうだ。」ということで、この後、ガジ丸が、クガ兄作『シークヮーサーの反逆』を歌い、それをきっかけにカラオケ大会となり、古い曲しかなかったが、ユーナも大いに歌って、ユーナが久しぶりに里帰りした日の夜は、賑やかに更けていったのであった。

 記:ゑんちゅ小僧 2008.7.4 →音楽(シークヮーサーの反逆)