折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

予行練習

2007-08-11 | 日常生活
週4日ほど勤めに出ている妻が今週の初めから約2週間の夏休みに入った。

そして、朝から掃除、洗濯、後片付けにと忙しく動き回っている。
妻からすれば、日頃、中々手をつけられない家事を片付ける時間がやっとできたわけだから、精を出して立ち働く気持ちは良くわかるが、妻が勤めに出ている間は100%自分の時間であり、この自由な時間を大いにエンジョイしている小生にとって、この生活リズムは、少々せわしなく、落ち着かない。

最近の話題の一つに、『亭主元気で留守が良い』と揶揄されてきた亭主族が、定年退職し、留守どころか毎日家にいて、ゴロゴロしていることにより、妻が強いストレスを感じ、体に変調を来たす症状を称して『主人在宅ストレス症候群』と言うそうで、今、この現象が主婦の間に広まっているのだそうだ。

かく言う小生も、定年退職後の4年余、妻が勤めに出ている平日は、自由な時間をマイ・ペースで過ごして来たわけで、決して無関係、無関心でいられる問題ではない。

確かに、家にいる主婦の立場としては、今までどおりの気楽で自由な生活を続けて行きたいと思う気持ちは、小生も同じ立場であるから痛いほど良くわかるが、小生としては、『家庭生活』と言う『共同生活』をしている以上甘受しなければならない制約があるという『現実』を決して疎かにはしていない積りである。現に、彼女が勤めに出ている日と休みの日とでは、生活のペース配分は当然ながら全く違ったものになっている。

これから先、『夫婦揃って毎日在宅』時代を迎えた時の基本は、お互いがそれぞれの生活のペースを認め合うと同時に、一方では、お互いが知恵を働かせて、『折り合い』をつけていくことに尽きるのではないだろうか。心の『つながり』が切れていない限り、『折り合い』をつける方法は幾らでもあるように思える。

以前、妻が休みの時、たまたまこの問題をテレビのワイドショーで特集しているのを見たことがある。
丁度、昼時で一緒に食事をしていて、『へえっ』て思わず顔を見合わせると、『おとうさん、危ないわね、かかりそう』と言って妻が『ニャッ』と笑った。

例によって、マスコミのいささか過激な取り上げ方と言えなくもないが、2週間の長丁場の妻の夏休みは、いつか必ず迎えることになる『夫婦揃って毎日在宅』に向けての一つの予行練習になるかもしれない。

『実力差』の世界

2007-08-07 | 武道
以下は、8月5日(日)行われた県下居合道大会に参加した時の感想である。


『試合の開始線に向かって歩み始めた時からすでに勝負が始まっているのです。『仮想の敵』をしっかりと意識に描いて油断なくあたりに気を配りつつ進みなさい。試合において審判員は真っ先にそこを見ます。』

先日開催された『居合道特別講習会』での講師の先生のお話(7月24日付ブログ『言葉の重み』)を反芻しながら、開始線へと1歩1歩、歩む。これまでは、そんなことを意識する余裕はなかったが、今日は自分ながら不思議なくらい落ち着いている。

『始め』の合図でおもむろに着座、試合が始まる。

試合中は、特に緊張することもなく、古流1本、制定居合の指定技4本を、ほぼ思い通りに抜くことが出来た。

そして、いよいよ判定。
旗は3本とも相手方に上がった。完敗であったが、今の自分の実力を出し切ることが出来たことに満足した。


試合を終えて戻ってくると、仲間の一人で上位者のTさんが、

『Kさん、前回(7月7日)の時もそうだったけど、今回もクジ運が悪かったね。Kさんが下手というより、相手が上手すぎたと言うことですよ。』と声をかけてくれた。

『同じ3段と言っても、Kさんのように昇段してまだ1年にならない3段の人もいれば、4段が目前と言う3段の人もいるんですよ。前回も今回もKさんの相手は、3段の中でもかなりレベルの高い人ですから、負けてがっかりすることはないですよ』

『前回も今回も見ていてKさんだいぶ落ち着きが出てきて、体も十分に動いていたし、技のメリハリもしっかり出ていて良い居合でしたよ。』と評してくれたので、

『ありがとうございます。今日は自分の実力を余すところなく出せたので、満足しています』と返した。

着替えを終えて、小生が完敗した相手の試合を見た。

一目見て、先刻Tさんが『クジ運』が悪かったんですよ、と言う意味がすぐにのみこめた。それほど、その人の居合は美しく、正確で、今の自分の実力を100%発揮しても、到底届かぬ『実力差』の世界をまざまざと見せ付けられる思いであった。

そして、『試合は、否応なく自分の実力を白日の下にさらす鏡である』と言うことを改めて実感した。

それにつけても、同じ段位でありながら、この優劣の『差』はどこから生まれるのだろうか、練習量の差、練習の質の差、練習方法の違い、それとも個人の資質の違い等々次々に色々な思いが脳裏をよぎる。

そして、追いかけても、追いかけても追いつけそうにないように見える、この人たちとの『差』、『距離』を自分は縮めることが出来るのだろうかと思いを巡らせた時、『実力差の世界』に立ちはだかる『壁』を前に、わが道ははるかに遠く、かつ険しいと言う現実を再確認した1日となったのである。

『振り込め詐欺』顛末記

2007-08-03 | 日常生活
昨日の昼下がりのことである。

電話が鳴った。

『もし、もし』と電話に出ると、無言で電話が切れた。

そして、それから数十秒後、再度電話が鳴る。

『もし、もし』

『おとうさん、俺だけど』

全く聞き覚えがない、若い男の声。
『俺だけど』と言っているが、息子の声とは違うと瞬時に見極める。

そして、すぐに、これは、世に言う『振り込め詐欺』の電話だな、と確信する。すると、さっきの電話は、在宅確認の電話か。

まさか、よりによって『振り込め詐欺』犯から俺のところへ電話がかかってくるなんて、と一瞬緊張し、電話の前で気持ちを引き締める。

『俺だけどって言うけど、どちらさま』

『おとうさんだろう、俺だよ、Tだよ。』

(へえ、こいつ息子の名前名乗ってやがる、名前を知ってるなんて油断できないな、と思いながら、)

『声が違うけど、どうした?』(と先ず『牽制球』を投げてみる。)

『ちょっと、風邪気味で声がおかしいんだ。』

『あのさあ、どっからこの電話してんの?』

『会社からだよ』

(しまった、ちょっと見当違いの質問しちゃったな。慌ててるな、落ち着け。まさかこいつ息子の職業までは知らないだろうと)

『お前、今、何の仕事してるんだっけ?』(とカマをかけてみる。しかし、今考えてみれば変な質問だ)

『前と同じだよ、保険の仕事してるよ』

(ええっ!、こいつ息子の職業まで知ってやがる、ますます油断ならぬなと思っていると、)

『悪いんだけど、お金立て替えてくれないかな。すぐに返すから』

(いよいよ、来たな、と身構えつつ、お前さんの正体は、もうばればれなんだよ、と言う意味合いを言外に込めて)

『声が違うし、電話では本人かどうか確かめようがないもんね』と返す。

『頼むよ、時間がないんだ、お金立て替えてよ』

『お前さん、息子じゃないよね。それとも息子本人だと証明できる?』とダメを押す。

相手からすれば、『本人だと証明してみな』と言う、全く珍妙な、予期せぬことを言われて、このおやじ少々、おかしいんじゃないかと思ったのだろう、一言、二言『悪態』をつくが、何と言ったのか聞き取れない。

そして、唐突に電話が切られた。

以上が『振り込め詐欺』犯とのやり取りの再現である。

この間、時間にすればわずか1~2分だが、緊迫したやり取りだったのだろう、受話器を置いた手のひらがじっとりと汗ばんでいた。

すぐに息子の携帯に電話し、『お前の偽者から、お金を立て替えてくれって言う電話が、今あったよ』と言うと、
「何それ、『振り込め詐欺』の電話ってこと。おやじ、俺はお金の事なんかで心配かけないから安心して。それよりも、ブログのネタが出来て良かったじゃん」


『振り込め詐欺』の電話がかかってきた時の心構えについては日頃、色々考えていたのだが、、今回は当初想定していた、からかい半分に『あしらう』余裕はなく、真剣勝負のような対応になってしまったことに、内心『忸怩』たる思いである。
そして、いざその場になって見ると、仲々思ったようには行かないものだと再認識した次第である。

それにしても、息子の名前や職業まで知っているとは、油断も隙もない話であり、『個人情報』が野放しになっている実態を目の当たりにして、空恐ろしさを感じたのは小生だけではないだろう。