折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

大人の童話

2007-09-28 | 読書
今年は、図書館にある〖藤沢周平全集(全25巻)〗の読破を目指して、これまでひたすら借り続け、読み続けてきたが、ここにきてさすがに少々飽きが来て、気分転換にたまには毛色の変わったものを読んで見ようと本屋の店先をのぞいた時に見つけたのが、〖犬と私の10の約束〗(川口晴  文芸春秋)と〖川の光〗(松浦寿輝 中央公論新社)の2冊の本である。

〖犬と私の10の約束〗については、9月4日付ブログ〖愛犬との約束〗で書いたので、
今回は〖川の光〗について、感想を書いて見たい。


主人公は三匹のクマネズミの一家(お父さん、お兄ちゃんのタータ、弟のチッチ)。
この一家が河川工事のためそれまで住んでいた川べりの巣穴に住めなくなり、新しい住みかを求めて川を遡って行く波乱万丈の冒険物語である。

なあんだ、ネズミの物語かよ、と侮ることなかれ。旅先では、これでもかと言わんばかりに、さまざまな危険が三匹を待ち受けていて、三匹はその都度絶体絶命のピンチに陥るのだが・・・・・・・・・。

「わくわくして、どきどきして、はらはらする。ふうっと一息ついたかと思うと、すぐにまた胸が高鳴る場面が訪れる。危ないよチッチ、がんばれタータ、いいぞお父さん・・・ページをめくりながら、何度も声をあげそうになった。いや、実際にあげた。いい年をして恥ずかしい。でも気持ちいい。ひさしぶりだ」、と作家の重松 清さんが朝日新聞の書評欄で書いているが、手に汗を握るストーリーの展開には、大人が読んでも〖読書の醍醐味〗を満喫すること請け合いである。

そして、全く久しぶりに、子供の頃に吉川英治の〖三国志〗を読んだ時に味わった興奮と感動がよみがえってきた。

この本の素晴らしいところは、大人が読んでも楽しいし、子供が読んでもわかりやすく、面白いところである。大人も子供も等しく共感できる本は、そう沢山あるものではない。
いうならば、みんなが久しく求めていた、大変上質な〖大人の童話〗であり、格好の〖情操教育〗の生きた教材である。

だから、本書は老若男女を問わず多くの人に読んでもらいたいが、特にお子さんを持つお父さん、お母さんには、先ず本人自身がこの本をぜひ読んで欲しい。そして、子供が小学校の高学年であれば自分で読むように薦めて欲しい。また、お子さんが小さい場合は、お父さん、お母さん、声を出して、読んで上げて欲しい。

子供たちは、自分で読むこと、またはお父さん、お母さんに読んでもらうことでテレビでは得られない、想像すること、空想することの楽しさ、面白さ、喜びを十分に感じてくれると思う。
そして、この物語を通して、〖家族の絆〗、〖友達・友情〗、〖勇気〗、〖知恵〗そして〖生命の大切さ〗等々の意味を〖ああ、そういうことなんだ、そういうことだったんだ〗と、あたかも大地が水を吸い込むが如く理解してくれるに違いないと確信している。

心が洗われるようなさわやかな感動を与えてくれる本に久しぶりに出会った。

早速、息子たちに読み終わった本を送ってやろう。そして、ぜひ子供(孫)たちに読み聞かせてやって欲しいと思う。