ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『苦役列車』

2012-07-06 14:53:21 | 新作映画
----この映画、原作は芥川賞受賞だけど、
かなりエグイ内容だよね。
見るからに不潔そうなんだけど…。
「うん。でも作っちゃった。
この映画は、映画とは何かをあらゆる方向から
考えさせてくれる
ぼくにとっては刺激的な作品だったね」

----あらゆる方向からって?

それはね大別すると次の3つ。
(1)なぜ、映画は作られるのか?
(2)なぜ、人は映画を観にいくのか?
(3)映画を論じるとはどういうことか?
まずは最初の、なぜ、映画は作られるのか?
これは次の、なぜ、人は映画を観に行くのか?
と一緒に語っていいのかもしれない。
自主製作映画でない限り、
映画は人が観に来てくれなければ
興行として成立しないし、
作者側も映画を作り続けていくことはできない。
この原作『苦役列車』の場合、
原作が芥川賞であること、
そして受賞のスピーチで原作者・西村賢太
挑発的とも思えるスピーチをしたことなど話題性は十分。
だけど、その内容たるや
19歳の肉体労働者の青年・貫多(森山末來)が
屈折した生活を送る姿を描いたもの。
世はバブルで、周囲は浮かれている。
そんな中にあって主人公は、1万円代の家賃を何ヶ月も滞納。
なのに、風俗には足しげく通っちゃう」

----最低じゃん。
映像で観たら、かなり汚さそう
「そこなんだよ。
おそらくほとんどの人が
この主人公には嫌悪感に近いものを抱くと思われる。
せっかくできた友人・日下部(高良健吾)にも
酔ってその彼女に絡んだりで愛想を突かされちゃう。
“友だち”となってくれた古本屋の女性・康子(前田敦子)にも
青春の悶々をぶつけ、相手の気持ちなどお構いなし」

----イヤなヤツだね。
お近づきになりたくないニャあ。
「だよね。
周りにいたら迷惑なだけ。
なのに、映画になっちゃった。
これはどういうことなのだろう?
ここから社会的な問題の告発に進むわけでもなく、
人間とは何ぞや…を突き詰めるでもない。
まあ、それらが皆無というわけではないけどね。
しかし、映画として観たら、
これがオモシロいのだから困ったもん(?)だ」

----映画としてオモシロい?
「うん。
なかなか、ここまでの人は周囲にはいない。
どこかで、世間と折り合いを付けているのが普通。
だって、生きていかなくてはならないもの。
ところが、この主人公・貫多たるや
外での荷役から倉庫内勤務に昇格(?)したものの、
仲間内が事故に遭ったのを見て、
自ら荷役仕事に逆戻りしてしまう。
と、話していてぼくは
ポール・トーマス・アンダーソンの『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を思い出したね。
あの映画の主人公と同じ、この貫多は怪物、モンスター。
ただ、前者は上昇志向。後者は今のまま、もしくは下降。
さあ、この映画、そういう風に観れば
ほんとうにオモシロいんだけど、
たとえば、カップルが月に一回映画を観に行くとして
あえて、この映画を選ぶかどうか?」

----そりゃあ、もっと美しい世界を観たいよね。
「(笑)。
さて、そして最後に、
映画を論じるとはどういうことか?について…。
ネットが普及して
映画に対するレビューをけっこう目にしたけど、
なぜか、そこで語られているのは
主人公に対する、自分の好き嫌いだったり、
ストーリーに対する、不満だったりすることが多い。
でも、この映画の場合、原作もの。
しかも、その原作は芥川賞というお墨付き。
そこで、そういうところ(主人公のキャラ、ストーリー)ではない
純粋に<映画>としての見どころで語ることができる。
こういう映画がもっと増えてくると、
日本映画もオモシロくなると思うよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これ、全国のシネコンでかかるらしいのニャ」身を乗り出す
※言い忘れた。監督は『マイ・バック・ページ』の山下敦弘だ度…

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