ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『花蓮の夏』

2007-10-12 23:29:23 | 新作映画
(原題:盛夏光年 Eternal Summer)


----これって台湾映画だよね。
東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 2007 の
クロージング上映っていうじゃニャい。
観に行くとは思わなかったなあ。
「うん。でもこれが
ゲイだのホモだのということを別にしても
意外によくできた映画なんだ」

----どういうお話ニャの?
「男二人に女一人が絡むお話。
男二人は小学校からの幼なじみの少年たち、ショウヘンとジェンシン。
しかし、この二人は初めから友だちだったわけではなく、
先生の命令によるもの。
クラスで一番の優等生ジェンシンとは対照的に、
ショウヘンはクラスでもわんぱくで厄介者。
ジェンシンがショウヘンと一緒に過ごすことで
その品行を正してあげるようにという
先生のもくろみが彼らの人生を狂わせてゆくんだ」

----ニャるほど。
それがこの男たちの愛か…。
「いや、そう単純なものではない。
それを意識しているのはジェンシンの方だけ。
彼のショウヘンに対する秘めた思いは
高校のとき転校してきた女性ホイジャに見破られてしまう。
この映画は実はこの<秘密>がキーワード。
優等生ジェンシンは大学に落ち、ショウヘンとホイジャ。
ショウヘンはホイジャに交際を申し込むわけだけど、
ホイジャは実はジェンシンを恋している。
しかもそのジェンシンが同性のショウヘンに
友情以上のものを抱いていることを知ってしまったわけだから、
ショウヘンの一言一言に心揺らいでいるジェンシンを
いつも複雑な思いで見つめている。
つまり<秘密>の共有者だね」

----ニャるほど。それは心理ドラマとしてもオモシロそう。
「うん。しかもそこに
実は『先生の命令で友だちになった』という
<秘密>まであるわけだからね。
そして最後には、もっとビックリする<秘密>が明らかになる」

----えっ。ニャにニャに?
「まあ、さすがにそれは言えないけど、
この映画、繊細な心の動きを捉えた映像や
青緑色を基調としたフィルムの質感など、
観るべきところは多い。
男同士のラブシーンも出てはくるけど、
あまり先入観をもたずに臨んだ方がいいかもね」



(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でもこの世界、よく分からないニャ」小首ニャ

※切ない映画だ度

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猫ニュー 

『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』

2007-10-11 23:45:34 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:Waitress)


----この映画、評判いいようだね。
でも、ニャによこの顔。
ちょっと不自然じゃニャい?
「いやあ。このシーンがまたいいんだ。
男に誘われて喜びが隠せないという顔。
きれいな白い歯をニカッとさせて、もう夢見心地」

----確か、物語は
自分の気持ちをパイに込めることができる女性のお話だよね。
『赤い薔薇ソースの伝説』みたいに…。
「そう。でも、ああいうマジカルなお話じゃないよ。
そうだね。まずはストーリーを簡単に説明しよう。
パイ作りの天才的才能を持つジェンナ(ケリー・ラッセル)。
ところが嫉妬深い夫アール(ジェレミー・シスト)のせいで
彼女の人生は失敗続き。
家出計画を進行させていたジェンナだったが、
ある日、予想外の妊娠が判明。
絶望と困惑に駆られる中、
なんと産婦人科医のポマター先生(ネイサン・フィリオン)と急接近してしまう……」

----ニャるほど。
このヒロインの設定からして
子供を生まないという選択はなさそう。
「そうなんだよね。
おなかが膨らむにつれて、
ジェンナの夢はしぼんでいく。
そのため、彼女は『赤ちゃんなんて欲しくない』」

----ありゃりゃ。
「しかもさっきも言ったように
彼女には新しい恋も芽生えるわけだからね。
自分がどうしていいか、まったく見えなくなる」

----ふむふむ。どうニャるんだろう?
「この映画の素晴らしいのは、
このヒロインだけではなく、
他のウェイトレスの恋も追いかけているところ。
それによって映画全体が活気づいてくる。
もちろん、ケリー・ラッセルの魅力が一番輝いているのは
言うまでもないけれどね。
そのキャラクター造型もユニーク。
ポマター先生が現実に戻って
不倫に深入りしないようにすると宣言すると、
いつも飛びついていってキスしちゃう」

----ありゃりゃ、でも不倫は不倫だよね。
どうやってこの映画終わらせるんだろう?
元の鞘に戻るのかニャあ…。
「そこが、この映画最大の見どころだね。
それまで欲しくないと思っていた赤ちゃんを抱いたとき、
彼女の中に何が起こるか?
これは、ある意味、久しぶりに観た女性映画とも言えるね」

----うん?どういうこと?
「70年代末期にちょっとブームになった女性映画。
そこでは女の自立が語られていた。
代表作が『結婚しない女』」

----あっ、それ以上言わないで。
パイの方はどうニャの?
「これがほんとうにおいしそう。
少しフィルムスピードを変えているのかな。
じっくりと写し出されるんだ。
ぼくなんか、観終わった後、
パイを作りたくなったものね」


(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これはおいしそうだニャ」身を乗り出す


※甘~いパイが食べたくなる度

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猫ニュー 

画像はフランス・オフィシャルより。

※ちょっとCM。けっこう凝ってるかも。
(画像のどこでもクリックしたら動画が観られます)

<キスミント

『北京の恋ー四郎探母』

2007-10-10 23:32:03 | 新作映画

(原題:秋雨)

----変わったタイトルの映画だね。
あれれ、日本人も出ている。
「うん。この映画はね。
途中で邦題が変更になったんだ。
『四郎探母』というのは宋代の中国の物語。
敵国の遼に捕らえられた宋の将軍・四郎が身分を隠して暮らすうち、
遼の王女に見初められて結婚。
だが宋が再び力をつけ母と弟が国境付近まで攻め込んでくる。
望郷の念に耐えきれない四郎は
妻である王女に身分を明かし懇願して母と弟に会いに行く----
というようなお話らしい」

----ふうん。一種の『ロミジュリ』だニャ。
「そうだね。
そこに京劇を勉強するため
中国に来た日本人女性・梔子(前田知恵)と
京劇俳優の青年ミンの恋が重ねられていくんだ」

----そうか。日本と中国だと障壁があるものね。
「そう。
実はこの京劇一家に梔子を送り込んだのは
彼女のおじいさん。
祖父同士がチャット仲間というこの設定は、
少しどうかと思うし、
梔子のおじいさんが重大な秘密を明かすところも、
なぜこのタイミングで…など、
ツッコミたいところはいくつもあったね」

----そう言われても、意味が分からないんですけど…。
「あっ、ごめんごめん。
梔子のおじいさんは、戦時中に中国である罪を犯している。
それがこの映画の背景に流れているんだ。
でも、中国映画で、
戦後も贖罪意識を持ち続ける日本人が出てくるというのは珍しく
北京で行なわれた大学生映画祭の上映作品にも選ばれたらしい」

----でも、映画としてはどうニャの?
「梔子が恋するミンという青年は
芝居を棄てて家を飛び出し、
8年ぶりに戻ってきたという設定。
クライマックスではその彼と梔子が『四郎探母』を上演する。
ここも、京劇ってそんなに簡単に踊れるようになるの?
という疑問符がついてしまう。
でも、この映画、ある見方をすれば意外と楽しめるかも」

----ニャにニャに?
「それはね。ミュージカル」
----えっ?
「たとえば食事の用意をする間も
登場人物たちは、この演目『四郎探母』を
それぞれ思いのままに歌い始める。
それは練習しているようでもあり、
みんなで楽しんでいるようでもあり。
一種、ミュージカルのような効果を出しているんだ」

---そうか。ミュージカルと思えば、
リアリティのなさも
逆に楽しみに変わってくるというわけだニャ。
ふむふむ。

(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「戦争はいやだニャ」悲しい

※う~ん。これも一種の反戦映画だ度
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猫ニュー


『ヒッチャー』

2007-10-09 23:39:44 | 新作映画
(原題:The Hitcher)

----あらら。いくら公開中の映画が続いたとはいえ、
これまた古すぎるんじゃニャいの。
ルトガー・ハウアーが全盛期の頃の映画でしょ?
「チッ、チッ、チッ。
これはリメイクなの。
マイケル・ベイも設立に加わったことで知られる
制作会社プラチナム・デューンズが手がけた
『テキサス・チェーンソー』『悪魔の棲む家』
『テキサス・チェーンソー ビギニング』に続く4作目に当たる映画。
しかもこの作品はローグ・ピクチャーズとの共同制作。
なんと脚本にも前作と同じエリック・レッドを迎えている」

---でも、えいは確か前作を観ていないよね。
「うん。それでも携帯を小道具に使ったり
(あまり伏線としていかされてはなかったけど…)するなど、
おそらくここが現代的なリメイクだろうなというところは
いくつか分かったね。
ま、いずれにしろ、これは辺境サスペンスの一種だね」

----やはり相当怖いんだ…。
「うん。
でもけっこうツッコミどころも多かったけどね」

----そういえば、さっき前作の内容を調べていたようだけど…。
「そう、確認のためにね。
一人の男ジョン・ライダーに
付け狙われる主人公。
彼はジョンによって逆に殺人鬼に仕立て上げられ、
警官にも追われてしまう……
という大筋は同じなんだけど、
前作では主人公は男一人。
今度はカップルになっている。
しかも、クライマックスの車による“人体引き裂け”は…。
あっ、これ以上言ってはヤバいな」

----そうか。狙われるのが一人か二人かの違いは大きいね
「そうだね。
前作でも途中からウエイトレスが協力。
結果、二人が狙われるみたいだけどね」

----ところでルトガー・ハウアーの役は
だれがやるの?
「『ロード・オブ・ザ・リング』のボローニャで人気爆発のショーン・ビーン。
不敵な笑みで自分を制することのできない異常殺人鬼を好演。
アクション・ヒロインとして溜飲を下げてくれるのが
カップルの女性の方、グレース役のソフィア・ブッシュ。
あと、警部を演じたニール・マクドノーも
いかに田舎の警部って感じでハマってたね」

----あらら、カップルの男の方は?
「ザカリー・ナイトン。
う~ん。彼はどこにでもいるって感じで、
あまり印象に残らなかったな。
申しわけないけど…。
そうそう。
モーテルでグレースが観ているテレビが
ヒッチコックの『鳥』。
これも後で知ったことだけど、
どうやらこのプラチナム・デューンズの次回作が
『鳥』のリメイクらしいよ」


(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でもフォーンは怖いニャ」悲しい

※事件は雨の日に起こる度
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猫ニュー

画像はドイツ・オフィシャル(ダウンロードサイト)ウォールペーパーより。

『人が人を愛することのどうしようもなさ』

2007-10-08 22:49:46 | 映画
「さて、今日もずっと前に観た映画の話をしちゃうかな」
----あ~あ。石井隆の長いタイトルの映画ね。
こういうの苦手な方じゃなかった。
女性がいたぶられて堕ちていく話でしょ?
「う~ん。でもね、
その実、石井隆の映画は
女性が悲惨な目に遭いながらも物語の最後には再生し美しく輝くという、
男性に対する優位性(と言っていいのかな?)を描いているんだ。
特に『天使のはらわた』をはじめとする
名美シリーズではそれが顕著に表れている」

----今回もその名美シリーズというものニャの?
「うん。21世紀最初の名美映画。
このシリーズでは
堕ちていく名美をひたすら愛する村木の存在が語られることが多いんだけど、
今回は、役名こそ違うもののマネージャー役を演じる津田寛治が
その役割を受け持っている」

----ちょ、ちょっと。
いきなりマネージャーと言われても
ニャンのことか、さっぱり分からないよ。
「そうか、ごめんごめん。
映画の大筋はこういうもの。
喜多嶋舞演じる女優・名美。
彼女は私生活では同じく俳優の夫・洋介(永島敏行)と破局の危機を迎えていた。
多忙を極める名美を横目に、
下り坂の洋介は若い女優(美景)と浮気。
現在撮影中の新作映画では、夫・洋介が名美演じるヒロイン鏡子の夫役として共演。
しかも、洋介の浮気相手の女優まで出演という
スキャンダラスなキャスティングがマスコミの注目を集め、
マネージャーの岡野(津田寛治)はその対策に忙殺されていた。
そんな中、ひとりの編集者・葛城(竹中直人)が
名美にインタビューを試みる。
さて、その映画の内容が問題。
夫の不倫と粗暴な行為に傷つき悩む“鏡子”は
夜ごと売春婦としてネオンの街に立つ」

----うわあ。ワケ分かんない。
「いやいや、こんなもんじゃないよ。
じゃあ、別の言い方で分かりやすく言おうか。
夫の不倫と粗暴な行為に傷つき悩むひとりの女“名美”。
夜ごと売春婦としてネオンの街に立つことで
彼女は行き場を失った心を解放していく」

----あれっ?さっきネオンの街に立つのは「鏡子」と言ってなかった?
今度は「名美」になってる……??????
「そう。それがこの映画の核心。
いくつもの話が重層的に絡み合って、
どれが真実でどれが虚構なのか、
あるいはすべてが名美の妄想なのか……
すべて分からなくなってしまう。
もう、ここまでくると石井隆マジックだね」

----そう言えば、喜多嶋舞の演技が話題になっているね。
「そうだね。『花と蛇』の杉本彩とはまったく正反対のアプローチ。
映画の中で自分のすべてをさらけだそうとした杉本彩に対して、
喜多嶋舞は、
自分には名美のような翳りが100%ないから演じることができた、
というんだね」

----それ、ニャんだか分かる気がする。
自分とは別人格の方が演じやすいものね。
「そういうこと。
話を映画に戻すけど、
この作品は、それこそ結末でガクッとくる人もいるかもしれないけど、
ぼくにとっては初めて石井隆映画で涙した映画だったね」

----それはどうして?
「うん。
途中までは女優の内面を描いた映画と思って観ていたわけだけど、
最後には彼女を愛して守り抜いたマネージャー岡野が
浮かび上がってくるという構造になっている。
実は長いタイトルの意味もそこにあるんだ。
岡野の妻は次のような証言を行なっている。
『おそらく夫は名美さんを愛していたと思います。
「人が人を愛することってどうしようもないですよね」って。
つまり、ぼくはこの映画の陰の主役を岡野と見ているわけ。
しかし、その愛を描くためにこんな複雑な物語を作る石井隆。
彼はやはり日本映画では異色の存在だね。
照明と撮影で作りこんだ画面へのこだわりも相変わらずスゴい。
これまでの石井隆作品の中では
おそらく『夜がまた来る』以来じゃないかな」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「しっかし、信じられない映像だニャあ」身を乗り出す

※雨の電車のシーンは圧巻だ度

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猫ニュー

『キサラギ』

2007-10-07 22:53:37 | 映画
----えっ。どうしていまごろこの映画?
『恋空』とか、ほかにもあるじゃニャい。
「だって、話題にはなっていたけど、
ぼくが観たのがつい最近。
フォーンも一緒に行って笑ってたから
まあ、いいじゃない(笑)」

----いや、笑ってたのはえいの方でしょ?
「それは確かにそうだね。
もう、笑いすぎて涙が出ちゃったもの。
だけどさ。
フォーンも、観ながら横で次の展開を
予想しながら囁くことないじゃない」

----あれっ。そんなことやったかニャあ。
「やった。やった。
『お父さんだ』とか『地震だ』とか。
まあ、この映画のオモシロさは、
思わずそう口に出ちゃうほど、
観る者を引きずり込むところにあるけどね」

----でも、あんまり評論家筋には受けていなかったよね。
映画館ではロングランしていたけど…。
「それは分かる気がするなあ。
この映画は、なんと言っても
凝りに凝った脚本と、
それを喜々として演じている役者とが
幸せな出会いをしたところにある。
これってお芝居でもよくて
映画である必然性はあまり感じなかったからね。
(ここでgoogle)
いま調べて分かったけど、もともとはお芝居だったんだね」

----う~ん。それなのに、えいは気に入ったわけだ。
「だって、オモシロいという事実に間違いはないんだもの。
しかも最後はきちんと泣かせてくれる」

----えっ、泣いたの。
だれのエピソードで…?
「やはり、小栗旬かなあ。
自分だけ如月ミキとのつながりが薄いことが分かり、
仲間はずれというか疎外感を感じていた彼が、
最後に報われるというか、救われる。
この映画、主要人物5人の誰に対しても
やさしく温かい視線を送っている。
まさか、こういうハッピー・ミステリーだったとはね…」

----ニャルほど。フォーンはやはり香川照之だな。
そういえば振り付けはラッキィ池田だったでしょ。
「そして如月ミキの歌の歌詞がサエキけんぞう。
これもよかったね。
みんなほんとうに楽しそう」

----そういえば、この映画にも小出恵介出てたよね。
『恋空』のお話をしてくれるのはいつになるのかニャあ?

         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「もう、笑ったニャあ」もう寝る

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猫ニュー

『サーフズ・アップ』

2007-10-06 00:31:13 | 新作映画
(原題:Surf's Up)


----ペンギンのアニメって
ちょっと前にもあったよね。
同じような企画が続いている気がするけど…。
「うん。でもこの映画はミュージカル仕立てだった
『ハッピー フィート』とはまったくアプローチが違う。
最初はぼくも二番煎じと食指が乗らなかったんだけど、
さすが日比谷スカラ座のチェーンで公開するだけあって
なかなか凝った作りになっている」

----どういうこと?
「物語自体はシンプル。
伝説のサーファー“ビッグZ”に憧れる
イワトビペンギンのコディが
サーフィン・ワールドカップに臨むというもの」

----ふうん。それのどこが凝っているの?
「そうだね。まず、その構成が
インタビュー仕立てになっているところ」

----ん?よく意味がわかんないニャあ。
「主人公のコディだけではなく
他の登場人物それぞれに対してインタビューが行なわれ、
それに答える形で話が進むんだ。
しかもそのコメントの中身が過去の回想に及ぶに至って
映像が古いフィルムのように
褪色してピントも甘くなり、
さらには雨まで降る(傷が入る)」

----ニャるほど。それは確かに凝っているニャあ。
「それによって、
今度は逆にサーフィンの映像を際立たせるんだ。
とりわけ、チューブライド、
パイプラインの中のサーフィン映像は
もう目を見張る美しさ。
もう、CGということを忘れて
恍惚としてしまう。
昔、CGは水が一番難しいと言われたけど、
隔世の感があるね」


(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンも水は怖くないのニャ」ご不満

※これは驚く度
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猫ニュー 

『レディ・チャタレー』

2007-10-03 22:47:36 | 新作映画
(原題:"Lady Chatterley)

----これって「芸術か猥褻か」のチャタレー裁判で有名な
小説の映画化だよね。
「うん。実はその原作には3つものヴァージョンがあるらしい。
で、今回はその中の第2稿が基になっているんだって。
ぼくは、この小説を読んだことがないから
チャタレー裁判、
あるいは先行して作られたシルヴィア・クリステル主演映画や
ケン・ラッセル監督作などのイメージしかなかったから
ほんと驚き」

----そのイメージってどういうの?
「まあ、それらも完全な形で観たというわけではないから
あくまでもイメージとして聞いてほしいんだけど…。
それは夫が下半身不随になってしまった人妻が
森の猟番パーキンの獣性の虜になっていくというもの。
しかもそこでは、
<性>が挟まれることでそれまでの主従の関係が逆転する…」

----ニャんだか『流されて…』に似ているニャあ。
「そうなんだ。
だから相手の男パーキンは
オリバー・リード、
もしくはジャンカルロ・ジャンニーニのようなヒゲ面(笑)。
そう、勝手に決めつけていただけに
これはいい意味で裏切られたね」

----“いい意味で”って?
「今回の作品がどこまでが原作に忠実なのかは知らないけど…。
積極的に関係を求めたのはチャタレー夫人。
まあ、これはよしとしよう。
ところがこれが驚きなんだけど、
ラストで
パーキンが自分の内なる女性的な部分について
延々と悩みを打ち明け始めるんだ。
そこで彼はチャタレー夫人を『自分の家』と語り、
『君が世界を広げてくれた。君が自由を与えてくれた』とまで言うんだ。
この言葉を聞いて涙流すチャタレー」

----へぇ~っ。それは確かにイメージと違うね。
監督が女性ということも関係しているのかニャあ。
「そうかもね。
もし、ぼくが原作を読んでいたら、
監督の解釈について
もっと突っ込んだ分析ができるんだけど…。
う~ん。悔しいなあ」

----原作は映画とは別ものと考えるえいにしては
珍しい発言だね。
「だって、そこが分からないから
なんとももどかしいんだもの。
いま、ぼくが話しているのは
自分のイメージを覆す『チャタレー夫人』であって、
映画史の中で異彩を放つ『チャタレー夫人』とは
とても言い切れないわけだから。
まあ、いまさらこれはどうしようもないから先に話を進めるとして、
映画としては抑えに抑えた性描写で
アレレ?って思わせながら、
徐々に大胆になってゆく。
クライマックスの雨の中での全裸シーンは
最近ではあまり見かけない映像だけに衝撃だったね。
いわゆる濃厚なエロスや官能というのではなく
自然と一体化した性と生の歓び。
これも70年代っぽいかな。
なにせ体の茂みに花を挿す…」

----フラワー・ジェネレーションてわけだ(笑)。
「しかし、これも原作にあるのかもしれないしね。
そういえば、チャタレー夫人が花をいけるシーンもあるし、
彼女が着ている服も花柄ばかり」

----へぇ~っ。少女っぽいね。
「そう、それも驚き。
最初は年相応。
しかも夫の看病でくたびれて見えた彼女が
パーキンとの関係が深まるにつれて、
子供っぽく見えてくる。
性に目覚めて官能的な大人になるんじゃないんだ。
このことだけ取っても、
シルヴィア・クリステル版とはまったく違うことが分かると思うよ」

----あっちは『エマニエル夫人』だもんね(笑)。


    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「風景もきれいそうだニャ」身を乗り出す

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猫ニュー

『プラネット・テラー in グラインドハウス』 

2007-10-02 21:24:30 | 映画
(原題:Grindhouse)

----10月の映画の日は、ロドリゲスってワケだね。
「うん。9月はタランティーノを見逃したからね。
前からこれって決めていたんだ」

----で、どうだったの?
映画館に来る観客も特別って気がするけど…。
「そうなんだよね。一番周りに受けていたのが出演のタランティーノが
『エヴァ・ガードナーって知ってるか?』と言うところ。
確かにこの映画のローズ・マッゴーワンは
エヴァ・ガードナーに似ていなくもない。
噂のエンド・クレジット後のワンシーンでも
『あれ、どういうこと?』と聞く女性に
『子供を殺すわけにはいかない。あれが監督の優しさなんだ』と
カップルの男性が答えていたり、
フィルムの傷やノイズについて
『こんなことする監督はいまどきいないよ』など、大絶賛の嵐」

----へぇ~っ。えいはどう思ったの?
「うん。ロドリゲス映画の中では
『フロム・ダスク・ティル・ドーン』に次いで、
オモシロかったかな。
あっちはヴァンパイア、こっちはゾンビ映画。
この監督、こういったジャンル・ムービーが巧いね。
でも、観ていて思ったのはゴダール」

----あらら、どういうこと?
まったく正反対って気がするけどニャあ。
「この映画で彼がやっている、
上映中のフィルムのずれや飛びなどは
1967年に彼が『ウィークエンド』でやっている。
実に40年も前の手法。
そこでゴダールはご丁寧に『つなぎ間違い』というテロップまで出しちゃう。
今回は、『一巻紛失』という説明とお詫びのテロップ。
でもゴダールは、あれをアートフィルムでやっちゃったわけだからね」

----でも、ロドリゲスとヌーヴェル・ヴァーグって
あんまり関係ないように見えるけど…。
「確か、『フォー・ルーム』のときだったかな。
ロドリゲスの来日記者会見に出たことあるけど、
そのとき気づいたのが
彼の盟友であるタランティーノの製作会社の名前。
それは『BAND APART』。
これってゴダールの『はなればなれに』の仏題『band a part』を
英語にもじったものなんだ。
ゴダールの言葉に
『撮られるべきすべての映画はすでに撮られた。』ってあるけど、
まさに皮肉だね。
この映画、冒頭に流れた予告も含めて
まあ、オモシロいと言えばオモシロいんだけど、ね」


フォーンの一言「膿と血ばかりで気持ち悪いニャ」もう寝る

※あのラストの意味、それいいのか分からない度

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猫ニュー

画像はイタリア・オフィシャルより。