ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ここに幸あり』

2007-10-18 21:40:27 | 新作映画
(原題:jardins en Automne)

----まるで日本の昔の歌謡曲みたいなタイトルだニャ。
「うん。でも原題はまったく違っていて
フランス語で『秋の庭』を意味する言葉。
監督のオタール・イオセリアーニいわく
『秋は失ってしまった時間を悔いる季節』。
そう、この映画は、生きる喜びの再発見の物語なんだ」

----再発見?
「物語はいたってシンプル。
職を追われた大臣が、
酒を酌み交わしたり、音楽を奏でたり、
さらには幼い頃過ごした場所に帰ったりする中で
仲間とともに生きる喜びを再発見するというもの。
その中で、
権力に固執したり成功の道を目指す人が滑稽に描かれる。
まあ、一種の寓話でもあるね」

----でもテ-マとしては
そう珍しくもないよね。
「うん。ただ、いまの日本では“勝ち負け”が人生の価値基準とされやすいだけに
このような生き方はあまり描かれることがない。
それだけに新鮮に映るかもよ」

----映画としてはどうニャの?
「至るところに象徴的なエピソードが詰め込んである。
たとえば冒頭、
棺桶屋で自分にあった棺桶を争う老人たちが登場。
でもその後、彼らは最後まで物語には関わらない。
他にも大臣がチーターを飼っていたりとかね。
それらの出演者はほとんどが無名。
これは監督オタール・イオセリアーニの特徴らしいけどね」

----ニャるほど。映画ということを意識させないようにしてるんだ。
「うん。俳優は映画を引きずってやってくるから、
その映画の記憶が観客の頭の中で結びつかないようにという
なかなかユニークな考え方」

----でも、名優ミシェル・ピコリが出ているんだよね。
「これが実はどこに出ているか…。
気づいた人はエラい。
実は僕はその役はジェラール・ドパルデューじゃないかと思ったけど(笑)。
あっ、これはスゴいヒントになってしまったかな。
でも、この映画、実はスゴい作りこみだと思う。
省略に省略を重ねてシーンとシーンを繋ぎながら、
そのシーンの中身は、
おそらく何度もリハーサルを重ねたであろう俳優の動きと
それを追うカメラ移動という、バックステージがほの見える。
実に緻密に計算されているんだ。
街角シーンなんて『アメリカの夜』の冒頭の撮影シーンを思い出したな」

----でも、それってスタッフたちが
映画製作を楽しんでいるということだよね。
「だと思うよ。
見ていてこっちも楽しくなったもの」


(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンはいつも休むのニャ」もう寝る

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