----原恵一監督って、
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』や
『河童のクゥと夏休み』を作った人だよね?
「うん。
ぼくのお気に入りの監督のひとり。
アニメの作家の中では一番。
その彼が、なんと実写で映画を撮るというのだから
これは観ないわけにはいかない」
----でも、不安とかはなかった?
「多少はね。
実際、原監督自身もアニメとは勝手がだいぶ違ったようで、
そのいくつかは『はじまりのみち』のプレスにも載っている」
----確か、原監督が敬愛する木下惠介監督の実話の映画化とか…。
「そうなんだ。
しかも、木下監督が一時期
松竹を離れるきっかけにもなった『陸軍』公開後の話になっている。
この『陸軍』、
ずいぶん前にNHKで放映していたのを偶然に観て、
そのラストの流れに驚いた覚えがある」
----『陸軍』なんて聞いたら
戦意高揚映画みたいだけど…。
「ところが、その逆。
出征する息子を走って追いかけていく母(田中絹代)。
その顔には、
“お国のため”などという誇らしげなものでなく悲愴感が…。
途中、群衆の中を転びながらもやっと追いついた彼女は、やがて…。
というラストシーンなんだね。
この『陸軍』、当時の日本の空気が驚くほど伝わってくる。
いったい、どのような撮影をしたんだろう?
と、実はそっちの方も興味深いんだけど…。
いやいや
『はじまりのみち』に話を戻そう。
その『陸軍』が女々しいと目を付けられ、
映画が撮れなくなった木下恵介は松竹に辞表を提出。
脳溢血で倒れた母、たま(田中裕子)が療養している浜松の気賀に向かう。
だが、戦局は厳しさを増し、
その気賀も安住の地とは言えなくなり、
山間の気田へ疎開することになる。
しかし、病身の母にバスでの山越えはつらい。
恵介は兄(ユースケ・サンタマリア)と共に
母をリヤカーに乗せて峠を越える…」
----リヤカーの方がつらそうだけど…。
「うん。正直、ぼくもそう思った。
実際、途中では雨に降られたりで、
かえって体に良くないのではないかと…。
そういうことも含め、
この映画によると木下恵介像、
それはよく言って信念の塊。
でも強情とも言えないこともない。
決して広く一般に好かれるタイプじゃないだろうなと思ったね。
でも一方では、
そういう個性の強い人だからこそ、
信念で、あれだけの映画を生んだんだろうなということを
納得させてもくれる」
----木下恵介監督映画の特徴って?
「う~ん。
一言では言えないんじゃないかな。
ほんとうにバリエーションに富んだ映画を作っているからね。
実はこの『はじまりのみち』のラストには、
原恵一監督自らがセレクトし編集した
『陸軍』以降の木下惠介作品集が…。
それを観ると内容ばかりでなく、
木下惠介監督がその作品ごとに
いかにさまざまな映画表現手法を見せているかが分かる。
そしてこの『はじまりのみち』が秀逸なのは、
そのまさに“はじまり”がこの母とのリヤカーの“みち”の中で生まれたことが
よく分かる構成となっていることなんだ。
『わが恋せし乙女』のストーリーを思いついたり、
『二十四の瞳』の元となる情景を見たり…。
あるいは『破れ太鼓』のアイデアを得たり…。
実はその『破れ太鼓』の軍平のカレー好きの元ネタとなる役を
濱田岳が演じているんだけど…。
まあ、この話はここまでにしておこう」
----えっ。かえって聞きたくなるニャあ。
「じゃあ、
ぎりぎり一言だけ。
コメディリリーフ的な彼の喋りに
ここまで泣かせられるとは思わなかったな。
ただ、さらに深い感動はその後、
実は映画作品集の中にある。
原監督がラストのラストに持ってきた
ある一本の木下惠介映画。
そこで使われるセリフ。
ここに、原恵一監督の
木下恵介監督への思いが凝縮。
と同時に、自分が日本の映画監督のひとりとして
そのDNAを受け継いでいるということを宣言している。
ここまで真摯に
ひとりの監督とその世界に向きあった映画を
ぼくは他に知らないな。
尺は1時間30分そこそこと短いけど、
これは今年のベストワンを争う作品の一本だと思うよ」
「これは観たくなるニャ」
※今の時代に必要な映画ということが最後の最後に分かる、原恵一監督の決意表明だ度
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そして本当に見事な実写デビュー作でした。
俳優を活かしきった手腕も、木下映画の精神性をしっかりと受け継いたテーマ性も。
客入りが悪いというのが我が事の様に悔しいですが、間違いなく年末ベストを賑わせるでしょうね。
「アニメ界の木下惠介」ですか…。
ぼくはツイッターで読んだ
本作のプロデューサーの
「恥ずかしい」の言葉に、
自分も含めた映画界そのものが、
そう言われているような気持ちになりました。
いい映画がヒットするとは限らないというのは
昔より自明の理ですが、
やはり悔しいですね。
見たいと思っていたけれど劇場には行かないかも・・・
と思っていたこの作品。
えいさんとノラネコさんのtweetを見て、
見に行かなきゃ!! と思い、見てきました!
木下作品だけでなく、映画そのものにも愛情を感じて、
素晴らしい作品でした。
見に行ってよかったです!
ありがとうございました☆
ぼくとノラネコさんのtweetで観に行っていただいたなんて
ほんと光栄です。
おっしゃる通り、この作品には映画への愛が詰まっていますよね。
これからもよろしく!