ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ドレスデン、運命の日』

2007-03-13 12:31:35 | 新作映画
(原題:Dresden)

----ドレスデンって、ドイツの都市の名前だよね?
「うん。かつては
“エルベのフィレンツェ”と呼ばれたらしい」

----“かつては”……ってどういうこと?
「この街は、
第二次世界大戦末期、
連合軍が行なった
徹底した大空襲によって完全廃墟となったわけだ。
ところがこれまでこの史実が映画化されることは
ほとんどなかった」

----それはニャぜなの??
「一つは戦後の冷戦構造。
ドイツ空襲の加害者はアメリカとイギリスだからね。
もしこれを映画化すれば
同盟国となる国が犯した残虐な史実を明らかにすることになる。
しかもその発端が自らの国が仕掛けた戦争。
これではなかなか踏み切りにくい。
しかし、ここ最近ドイツでは
『ヒトラー~最期の12日間~』
『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の祈り』
『戦場のアリア』
そしてアカデミー外国語映画賞受賞の『善き人のためのソナタ』
など、自国の歴史に目を向けたあいついで映画が製作。
この映画もその流れにあると見ていいんじゃないかな」

----でもこのビジュアルからすると
メロドラマ的な匂いもするけど…。
フォーンは『哀愁』なんてのを思い出した。
「うん。そういう感じもあるよね。
いわゆる“戦火の恋”ってヤツだね。
物語も
ドレスデンで看護士をしているアンナが
アレクサンダーと言う婚約者がいるにもかかわらず
英国のパイロット、ロバートと恋に落ちると言うもの」

----えっ?なぜドイツにイギリス兵がいるの?
「彼はドイツへの飛行任務中に追撃を受けてパラシュートで脱出。
しかも腹部に銃弾を受けたため、
病院にひっそり隠れていたわけだ」

----そんな危険なことあり?
「ぼくもそれが信じられなかったね。
いくらキモが座っているとは言え、
ナチスの支配する街の中を歩き抜け、
しかも病院にたどり着くわけだから…。
しかしこれもやがて理由が明らかになる。
ロバートの母親はドイツ人。
つまりある程度のドイツ語は話せたわけだ」

----でもそれでもアンナとアレクサンダーは婚約しているわけでしょ。
そんなに簡単に恋に落ちるというのも不思議。
「まあね。
ここはあまり説得力がなかったね。
ふたりは傷病兵でいっぱいの病室のベッドで結ばれるし、
婚約パーティの最中にもセックスしてしまう」

----ありゃりゃ。それじゃ感情移入しにくいよね。
もしかしてアレクサンダーってとても悪い人?
「いやあ。それがそうでもないんだ。
恋にも仕事にもなかなか誠実な医師。
ただ、ロバートの方が包容力はあるし男前(笑)。
でも、得てしてこういう人は映画では損な役回り。
こういうところは40~50年代のハリウッドぽい気もしたね。
さて、そんなメロドラマが大きく動くのはドレスデンに空襲が始まってから…。
ロバートとアンナ、それにアレクサンダーは
なんと3人で戦火の中を逃げ惑う。
ここの描き方は『硫黄島からの手紙』、あるいは『ひめゆりの塔』を思わせる。
地下壕から地下壕へと地獄めぐり。
酸素がキレて神に祈っている一軍もいれば
兵士に『殺してくれ』と祈るものもいる」

----うわあ。それは息苦しそうだ。
「外でも凄まじい爆風が絶え間なく吹いていて、
体を支えていないと
火の海の中に巻き込まれてしまう」

----う~~ん。それを聞いて思ったけど、
日本ではそんな映画、あまり聞かないよね。
「一説では
新藤兼人監督が原爆投下直後の広島を映画化したいと言う
強い希望を持っているらしい。
80歳を超える高齢ながらもその不屈の精神。
難しいだろうけど、実現させてあげたいよね」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「2時間半もあるんニャ」複雑だニャ

※監督ローランド・ズゾ・リヒターは『トンネル』も作った度
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猫ニュー

※画像はドイツ・オフィシャルより。


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