ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『14歳』

2007-03-12 00:37:55 | 新作映画
----この映画「今年最大の問題作」と
書いてあったけど、そんなにスゴいの?
「チラシの言葉を借りれば
<容赦なく>スゴいね」

----どういうところが?
「日本の映画って戦後は民主主義の発達とともに、
ヒューマニズムが美徳として礼賛されてきた。
ところがこの映画は、前提として信じられてきたはずの
ヒューマニズム=オールマイティに冷や水を浴びせる作品となっているんだ」

----う~ん。よく分からないニャあ。
「この映画は現在14歳でそれぞれの問題を抱える生徒たちと、
かつて14歳だったときのできごとをトラウマとして持ち続けている教師たち----
この二つの物語を軸に進んでいく。
中学生を描いた物語と言えば、
これまでは『話せば分かる』が基軸となっていた」

----確かにそうだね。
テレビの『金八先生』などでも
先生は生徒に真っ正面からぶつかっていってた。
「これは『青春とはなんだ』に始まる
熱血青春ドラマの流れを汲んでいるわけだけど、
この映画では、そんな先生はどこにも存在しない。
強いて言えば、香川照之演じる46歳の小林先生。
ところが彼は<熱血>部分の役割を担ってはいるものの
『校則の方が憲法より上』と豪語。
生徒との話し合いなど頭から信じていない。
その底にあるのは
『あいつら(生徒たち)は生き残るためなら何でもする』という
生徒たちへの憎悪にも近い不信感だ」

----それじゃあ。
最初から問題の解決策を放棄しているようなものだ。
この小林先生というのは、
主人公である26歳の教師・深津綾(並木愛枝)と
意見が対立。
ところが深津は14歳の時に
教師を背後から彫刻刀で刺した過去を持っている」

----!!!!!!!!!
「深津はその教師から
飼育小屋放火事件の犯人と疑われていた。
だが、当の深津自身にもそのときの記憶が定かではない。
その後、精神科に通うことになった深津は
医師の影響で教師の道を選び、
いまは中学教師として生徒に真剣に向かい合おうとしていた。
ところがそんな彼女の気持ちをあざ笑うかのような
事件が次々と起こる。
ま、ここから先は話さない方がいいだろうな」

----でもそれじゃ、話にならないよ。
「確かにそれはそうだね。
では簡単に…。
いまを生きる生徒同士、
あるいは生徒とその親の間にも
いくつもの問題や溝が横たわっている。
しかしもっとも<痛み>を伴って描かれるのは、
この深津と生徒たちの関係。
従来の映画だと、
不幸な過去を持つ主人公(この場合は深津だね)が
自分の体験を基に次の世代の生徒たちにはそんな悲しい思いをさせないようにと
誠心誠意を込めた教育に従事する。
ところが、この映画では
彼女はいつの間にか自分が14歳だったときの気持ちを失っている。
決して言ってはならない一言を吐いてしまうんだね。
結果、それが生徒の<悪意>を引き寄せてしまう。
これでは生徒は教師を尊敬しえないし、
いったんその脆さを見せてしまった教師にとっては、
毎日が地獄と同じ。
教育どころか自分の身を守ることで精一杯だ」

----それは確かに<容赦なく>スゴいや。
でも映画として観るにはヘビーすぎニャい。
「そうなんだ。
仮にこれが嘘のない現実だとしても、
世界はそればかりじゃないような気もするんだけどな」


       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「学校は恐いニャあ」身を乗り出す

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2 コメント

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あらら、一番ノリ (隣の評論家)
2007-05-20 21:06:55
こんにちわ。早速、観に行って来ました。
むーん、えいさんのところと言えどもガラガラなんですね。やっぱり、「一人ぼっちレビュー」だ

『あいつら(生徒たち)は生き残るためなら何でもする』

小林先生のこのセリフは衝撃的ですけど、憎悪にも似た感情の裏で生徒に怯えているように見えたのが印象的でした。

「彼の目を見て注意できません。」

教師も一人の人間なんですよね。完璧な教育者というのも存在し得ないような気持ちになりました。
イジメ等、中学生の姿にも驚かされますが。私は、全編を通して、教師の立場の方に感情移入しての鑑賞となったようです。

何かどこを取ってもガツンとくる作品で、ブログでレビューを書くだけでは片付かない作品だなぁと思ったり。書くのが難しいんだけど、色々と自分に湧き起こった気持ちをどうにかして形にしたいと悩みながらのカキカキでした。

『ある朝スウプは』は未見なんですが、どんな感じなんでしょうか。急に興味を持ちました。
返信する
■隣の評論家さん (えい)
2007-05-21 00:15:27
こんばんは。

「彼の目を見て注意できません。」
このセリフも強烈でした。
教育の現場と言うのは、
いまやほんとうに戦場なのかも。

隣の評論家さんも書かれていましたが
「窒息しそうな毎日を変える方法がある」とは
少なくとも僕の感性では理解できませんでした。

現実を痛いほど見せつけられた映画でしたが、
その先に希望が見える映画がいいな……と。
やはりぼくはそう思います。
返信する

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