(原題:STILL ALICE)
----あれっ。
珍しい時間に映画のお話。
「ちょっと、いつもより早く出かけるので、
その間にと…。
さて、今日は『アリスのままで』。
若年性アルツハイマーを患った女性の物語で、
主演のジュリアン・ムーアが
アカデミー主演女優賞に輝いたことで話題の作品」
----アルツハイマーがモチーフの映画って多いよね。
『アイリス』とか『君に読む物語』とか。
カナダだと『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』。
日本にもけっこうあるよね。
「そうだね。
最近では『ペコロスの母に会いに行く』が話題になった。
これらは高齢化の問題とも合わせて
避けては通れなくなってきている。
ただ、今回の映画は“若年性”が加わっている。
このテーマで有名なのは
日本のテレビドラマを映画化した『私の頭の中の消しゴム』。
日本だと『明日の記憶』だね。
ぼくは、この『明日の記憶』がとても怖くって、
主人公が渋谷の街で道が分からなくなるシーンとか、
主演の渡辺謙の名演もあって鮮烈に覚えている。
自分がどこにいるのか、
空間の感覚がつかめなくなったその恐怖が見事に映像化されていた。
この『アリスのままで』は
とても心に沁みる映画だけど、
その道が分からなくなる感覚処理に関しては
『明日の記憶』に道を譲っていた気がする。
なにせ、こちらの描き方は
全体が白っぽくなって
道行く人がぼやけて見えるという感じ。
夢幻的ではあるけれど、
現実的な怖さでは『明日の記憶』」
----ニャるほど。
でも、感動の種類が違うっててなかった?
「そうだね。
普通、この認知症をテーマとした場合、
夫婦を軸に置くか、子供による親の介護が前面に出てくることが多いんだけど、
この映画では、それらよりも
自分がアルツハイマーだと自覚したヒロイン、アリスの生き方がテーマとなっている。
アリスは高名な言語学者。
その自分が物忘れどころか、
言葉をうまく操ることができない。
これは大学で教鞭をふるう自分にとって致命的なわけだ。
言語不明瞭な言語学者じゃ仕事などできるわけはない。
彼女は言う。
『みんなに理解してもらえるガンとは違う』と。
そこで彼女はある“決意”を固める。
この“決意”が映画の中に不穏な空気をもたらし、
後半のサスペンスへと繋がっていく」
----ええっ?
サスペンスという言葉が出るとは思わなかったニャ。
「でしょ?
ここはお楽しみとして、
この映画のもう一つの試みとしては
アリスとその子供たちとの関係がある。
実はこのアルツハイマーは家族性のもので、
遺伝の確率は高い。
しかも遺伝すると発症は免れないという。
ところが子供の中には結婚して子どもをほしがっている娘もいる。
だて、自分が遺伝しているかどうかを調べるか否か…」
----うわあ。キツイ話だニャあ。
「さて、
主演のジュリアン・ムーアに戻ろう。
彼女は、自分の感情を
目じりの皴、頬の筋肉までコントロールしながら
アルツハイマーに冒れたヒロインを繊細に演じていく。
そんな彼女が
認知症の介護会議でスピーチする姿が素晴らしい。
体の不調を考慮して
自分の体験談を話せばいいと言う娘に対して、
アリスは
『私は闘っています、自分であろうとして。
だから瞬間を生きています』とスピーチ。
そう、これがこの映画のタイトルに繋がってゆく。
監督はリチャード・グラッツァーとウォッシュ・ウェストモアランド。
自身もALSに冒されていたグラッツァーは病気を押して監督。
最近その生涯を終えたのは記憶に新しい。
アカデミー作品賞にこそノミネートされなかったけど、
これは多くの人に見てほしい映画の一本だね」
フォーンの一言「そう、だれもが避けては通れないのニャ」
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