ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『母べえ』

2007-10-28 22:18:43 | 新作映画
----これって最近、よく聞くタイトル。
お母さんの話だろうということは想像つくけど、
この“べえ”というのは一体ニャによ。
「じゃあ、順番に分かりやすく説明しよう。
この映画は、黒澤明監督のスクリプターとして知られる野上照代が、
幼い頃の家族の想い出を綴ったノンフィクションが原作。
彼女の父であるドイツ文学者の滋(坂東三津五郎)は、
家族全員に“べえ”をつけて呼ぶようにしていたんだ。
自分は“父べえ(とうべえ)”
母親・佳代(吉永小百合)は“母べえ(かあべえ)”。
長女・初子は“初べえ(はつべえ)”。
そして次女・照美は“てるべえ”。
この映画は大人になった“輝べえ(てるべえ)”のナレーションによって
彼女の回想の中に綴られていく」

----ふうん。それってどんなお話ニャの?
「昭和15年2月。
戦争反対の姿勢を曲げない父・滋が治安維持法違反で検挙されてしまう。
映画は、その苦難の中で夫を信じ、
娘たちを愛し、つつましくも気高く生きる“母”の姿を描く----。
あらら。こんな簡単に要約しちゃっていいのかな」

----あれっ、浅野忠信の役は?
「滋のかつての教え子で、
今は小さな出版社に勤める山崎徹の役。
これまでぼそぼそと喋る役が多かった彼だけど、
ここでは思わぬコメディのセンスを披露して
思いっきり場を和ませてくれるよ」

----笑いと言えば、鶴瓶も出ていなかった?
「彼の役はさらに印象的だったね。
我が道を行くその姿が
窮屈な世相に風穴を開けてくれて痛快。
でもやはり見どころは主演の吉永小百合だろうね。
ここでは幼い子供たちの母親役。
たくましくも情愛深く、凛々しく美しくそして若々しい。
実年齢と役の差による違和感をまったく感じさせないんだ。
なかでも溺れる山崎を助けるべく
海に飛び込むシーンは息を飲んだね。
ワンカットでカメラに収めているんだもの」

----ふうんボディダブルじゃないんだ。
当時の風景はどうやって撮影したの?
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』を始め、
昭和を描いた最近の映画は時代再現のために
CGを多用するのが常となってきているけど、
ここではオープンセットが中心。
おそらくノスタルジーにはしたくなかったんだろうね」

----そうか、テーマがテーマだからね。
「そうだね。
キャッチコピーは『日本はもう、この「母」を忘れている----』。
確かにラストでは
“日本の母親の偉大さ”をたたえる印象的な詩(?)が流れるけど、
その少し前、“母べえ”の最期の言葉には、
これ以上ないくらいに強く平和への思いが込められていた。
原爆詩の朗読等を通じて、
長年にわたって平和の尊さを訴え続けてきた吉永小百合にとっても、
これは忘れられない記念碑的作品となるだろうね」



(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そういう映画とは思わなかったニャ」身を乗り出す

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは (ノラネコ)
2008-03-01 00:19:50
早く観ないと終わっちゃうと思い、やっと行ってきました。
やはり山田洋次は凄いなあと、改めて思わされる作品でした。
テーマをしっかりと描く術を心得ていますよね。
セット撮影の見事さも含めて、非常に良く出来た作品だと思います。
ただ、どこか微妙な居心地の悪さを感じたのですが、それが何なのか良くわかりません。
もしかした、母べえを主人公にしているけど、山田洋次の視点は父べえにより強く向いている様な気がしかからかもしれません。
返信する
■ノラネコさん (えい)
2008-03-02 16:17:28
こんにちは。

山田洋次=どっしり
つまり安定感があるって感じですね。
最近の日本映画は
一時期、そう80年代のころに比べて
オモシロくなっているとは思うのですが、
才気が勝っている感が強いです。
こういう撮影所あがりの監督は、
これからは減る一方でしょうし、
とても貴重な監督だと思います。

あっ、山田洋次が父べえ視点というのは、
ぼくもそうだと思います。
返信する

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