ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ウディ・アレンの夢と犯罪』

2010-01-31 22:53:14 | 新作映画
(原題:Cassandra's Dream)


----あれっ。苦手なウディ・アレンの映画の割には、
どことなく顔が綻んでる。
「いやあ。
いつ以来だろう。こんなにアレン映画に引き込まれたのは…。
この映画、タイトルに監督の名前なんて付けているから
思わず身構えてしまうけど、
そんなことやめた方がいい。
本当にウェルメイドのサスペンス映画。
それも青春の夢と野望が思わぬところから挫折していくというタイプの、
なんとも懐かしい作品なんだ。
60年代のフランス映画には、こんなのが多かったような…」

----う~む。60年代のフランス映画ね…。
「うん。それもヌーヴェル・ヴァーグではなくて、
どちらかというと、そのアンチの方。
たとえばルネ・クレマン『太陽がいっぱい』みたいな…」

----それって、船が出てくるから?
「あっ。それもあるかな。
日本でも『八月の濡れた砂』で、
やはりヨットが“犯罪”の小道具として使われている。
だれも見ている者がいない大洋の上は
犯罪に向いているという物語上の理由もあるだろうけど、
海=地上(社会)の縛りから解き放たれた若者の世界というイメージが
作者と観客の間で共有できうるからかもしれないね」

----ということは、これは犯罪映画なんだニャ。
「(笑)。それはそうだよ。
日本語タイトルが“夢と犯罪”だし…。
物語はこういうもの。
ホテルへの投資を目論み、
恋人のカリフォルニアでの新生活を夢見る兄イアン(ユアン・マクレガー)、
いまのささやかな暮らしに幸せを感じている弟テリー(コリン・ファレル)。
ある日、テリーがギャンブルで大穴をあけ、巨額の借金を背負ったことで、
大金持ちの伯父ハワード(トム・ウィルキンソン)と、
ある取引をしたことから、
とてつもない代償を伴う人生を賭けた運命の渦に巻き込まれていく…。
まあ、定番と言えば定番なんだけど、
これが3人の名優のこなれた演技もあって、
ひとときも目を離せないほどにオモシロい。
特に、殺人の重責から徐々に壊れていくテリーを演じたコリン・ファレルは秀逸だね。
あの太い眉を八の字にして、
何も知らずに見ていると
思わず笑ってしまいそうな顔だけど、実はその悩みは底がないほどに深い。
これって、ウディ・アレン映画の二面性。
悲劇と喜劇をよく表した顔だと思うね」

----そういえば、ウディ・アレンって
日本では最初、喜劇作家のようなデビューだったけど、
実はとんでもないペシミストなんだよね。
「そう。
この映画の中にも『人生において確実なのは“死ぬこと”だけだ』というセリフが出てくる。
アレンは、現実は不条理。
“表面的には楽しい瞬間のある本質的な悲劇”と言いきっている。
チャンスに恵まれている人あれば、そうでない人もいて、
彼らは違う列車に乗って旅をしているけど、行先は…」

---STOP!あまり聞きたくないニャあ…。
「まあね。でも、そういうことを考えずに、
単純にサスペンスと見ても、これはオモシロい
ヴィルモス・ジグモンドを撮影に起用したことが功を奏しているのかも…。
ぼくは彼の撮影した作品の中ではブライアン・デ・パルマ『愛のメモリー』が好きなんだけど、
この映画もあの作品に共通したところが…。、
サスペンスの中に含まれる悲劇性。
やはり、この映画には彼の作り出すクラシカルな画はピッタリだったと思うよ」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「人生晴れたり曇ったりなのニャ」ぱっちり

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