ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『息もできない』

2010-01-09 19:20:39 | 新作映画
(英題:Breathless)



----あらら、スゴく興奮しているようだけど…。
「いやあ、まいったまいった。
とんでもない映画に出会った。
恐るべし、韓国。
こんな才能がまだ隠れていたとは…」

----と言っても、この作品、東京フィルメックスでは
映画祭初の最優秀作品賞と観客賞をW受賞。
ロッテルダム国際映画祭タイガー・アワード(グランプリ)ほか
国際映画祭・映画賞で25もの賞を受賞しているらしいよ。
知らなかったのは、えいだけ…ニャのかも。
「そうだったか…(汗)。
じゃあ、あまり詳しく喋らなくてもいいかな。
なにも知らずに臨んだ方が、
その衝撃も大きくなるし…」

----あらら。そうは言っても、
ここを読んでいるのは、映画通の人ばかりじゃないし。
少しでも多くの人に観てもらうには、なんらかの手がかりがなくちゃ…。
そんなにいい映画だったら、とくに。
「それはそうだね。
じゃあ、簡単に…。
主人公は情け容赦ない借金取りのサンフン(ヤン・イクチュン)。
母親と妹の死の原因を作った父親に対して強い憎しみを抱き、
その苛立ちをぶつけるかのように周囲に暴力的にふるまっている。
ある日、サンフンは女子高生ヨニ(キム・コッピ)と知り合う。
ヨニもまた強権的な父親や粗暴な弟との間で問題を抱えていた…。
と、これは、その東京フィルメックス公式カタログに書かれていた
ストーリーの冒頭部分」

----へぇ~っ。よくある話っぽいけど…。
おそらく、そのふたりの心が惹かれあっていくんでしょ?
韓流タイプのロマンスものなのでは?
「それは大いなる勘違い。
実を言うと、冒頭から暴力シーンが激しく、
人によってはそこで嫌悪感を抱いてしまう可能性も…。
しかも、韓国映画でよく見受けられるゲロを吐くシーンに代わって、
ここでは唾を吐くシーンが何度も出てくる。
サンファとヨニの出会いも、
サンファが吐いた唾がヨニの制服のネクタイを汚したことから。
この時点で、
果たしてこの映画、
生理的に受け入れられるのかという危惧を抱いたんだけどね。
ところが、唾を吐かれたヨニが、
強面のサンファに対してひるむことなく、立ち向かっていく。
このヒロインの思わぬ行動によって、
先を先を観たくなる衝動に駆られるんだ」

----サンファって、
やくざっぽいんでしょ?
そんなことされたら、
普通の女子高生は怒る前にビビりそう。
「そう。
しかし彼女は威圧的態度や暴力には絶対に屈しない。
そこで観る側は考える。
このヨニって子は、なんて気が強いんだ。
そうやって観る者を惹きつけながら、
やがて、映画は、
その気の強さの裏にあるものを描きだしていく」

----ニャるほど。
確かに彼女の生活ぶりを覗いてみたくなるよね。
「そして同時に、
観客は、彼女の過去に何があったかを知りたくもなる。
この語り口の巧さったら、もう、舌を巻くしかない。
監督はヤン・イクチュン
主人公のサンファ自身を演じている
『すべてを吐き出さなければ、この先、生きていけない』という切実な思いから脚本を書き始め、
家を売り払うなどの多くの困難を乗り越えて完成させたのだとか。
そこにあるのは、韓国の歴史的な背景。
国が自分たちの父親や母親の世代の心に傷を負わせてきたと、
そう、ヤン・イクチュンは言う。
映画の中にも、
『人を殴るやつは、自分は殴られないと思っている。韓国の父親は最低だ』という強烈なセリフが…」

----mmmm。
「この監督のインタビューの中にも名セリフはいっぱい。
『人はどれほどどん底にいても、
幸せの記憶がなければ生きていけない』。
暴力に次ぐ暴力で、疲れるし、辟易しそうになりながらも、
最後まで観客を引っ張っていくのは、
『人生は一度きりのものだから、
できることなら幸せを望んだ方がいい』という、
監督の基本となる考えが奥にあるから。
とにかく、ここまで暴力的でありながら、
なおかつ泣ける映画というのは久しぶり。
なかでもクライマックス、
ふたりの傷ついた心がむき出しとなり漢江の夜風にさらされるシーンは
映画ならではの官能

映画史に残る名場面として、
いつまでも語り継がれること間違いないと思うよ。
ただ、甘い追憶さえも許さないラストは、
あまりにも辛すぎるけどね」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「『二人でいるときだけ泣けた』がすべてを表しているらしいのニャ」身を乗り出す

※まさに“息もできない”度

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