ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『理想の女』

2005-06-15 18:47:23 | 新作映画
------これまた時代色豊かな映画だね。
原作がオスカー・ワイルドなんだって?
彼って確か「唯美主義者」と言われてるよね。
「うん。彼のセリフに
『私は生きた時代の芸術と文化において象徴的な存在だった』
と言うのがある」

------かっこいいニャあ。
「実際にオスカー・ワイルドが活躍したのは19世紀後半。
原作の『ウィンダミア卿夫人の扇』も
19世紀末のロンドン、二つの客間を舞台に書かれている。
ところが映画ではそれをあえて1930年、
南イタリアのアマルフィという避暑地に置き換えている」

------へぇ~っ、なぜだろう?
「監督のマイク・パーカーによれば
原作どおりに映画化したら、
映画がこぢんまりなって、映像的な魅力に乏しいものになっただろうと、
まあこういうことなんだね。
そこで、暗くじめじめしたロンドンのテラスとは対照的な
温かいイタリアの海岸を選んだということのようだ。
こういう映像と言う観点からの
柔軟な発想ができる監督の作品って期待できるよね」

------で、これはどういうお話なの? 
周りの話ばかりで、中身をまったく話してないじゃニャい。
「ごめん、ごめん。でも映画を語るのに、
原作のストーリーを喋ってもなあ。
ま、いいか。
ニューヨーク社交界の華として知られている
若いメグ・ウィンダミア(スカーレット・ヨハンソン)と夫ロバートは、
イタリアの避暑地で魅惑的なアメリカ人女性アーリン(ヘレン・ハント)と出会う。
ところが、ほどなくアーリンと夫の噂が社交界で囁かれ始める。
混乱するメグ。そこにプレイボーイのダーリントン卿が言い寄る、という話さ」

------なんだか、ありふれてるな。結局はダブル不倫の物語かあ....。
「いやいや、そうと見せかけて実は全然違う。
途中から話は思わぬ方向に転がってゆき、
結末を知らないぼくとしては息を潜めて成りゆきを見守ったね。
しかし、これを観る限り(未読だから想像だけど)、
オスカー・ワイルドと言う人は、そうとうな物語の達人。
“できごと”と“心理”が絶妙に絡み合ってまったく飽きさせない」

------ニャるほど。原作がしっかりしていると、
あとはそのテーマをどう見せるか、
いわゆる語り口が監督の手腕となってくるよね。
「うん。時代と場所を移し替えたのもその一つ。
冒頭は、なんとニューヨークから始まる。
そこでは、いろんな男たちとつきあったことから、
“悪い女”の噂が立ったアーリン夫人がレストランや宿の支払いに苦しみ
金策に走るエピソードが
まるでフィルム・ノワールを思わせる沈んだトーンで描かれる」

------ふうん、けっこうヘビーなんだ。
でも、それってどういう意味があるの?
「この前年、アメリカは大恐慌に見舞われている。
その“空気”を出すと言うこともあるんだろうけど、
アーリン夫人=ファム・ファタルの効果を出す役割も果たしている。
果たしていまから、何が始まるのか?
それこそミステリー映画を観ているかのよう」

------『理想の女』ならぬ『運命の女』だね(笑)。
「で、次のエピソードで、映画は一挙にイタリアへ飛ぶ。
そこは青い海、切り立った崖、絶壁に点在する白いヴィラと、
陰鬱なアメリカとは正反対の陽光眩しい風景が開ける。
これでぼくは一気にこの映画にノレたね。
人によっては、物語の古めかしさにシラケる人がいるかも知れないけど、
ぼくとしては、まあ満足の部類かな」

(byえいwithフォーン)

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