ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『マラソン』

2005-06-07 18:32:52 | 新作映画
------この映画って実際のモデルがいるんだって?
その人、自閉症という障害があるにも関わらず
健常者でも困難なマラソンのフルコースを
2時間台で完走したというんでしょ。すごいよね。
「うん。映画の中で使われている言葉を借りれば
『100万ドルの足』となるわけだけど、
でもこの映画のキーワードは、
<足>ではなくむしろ<手>だね。
と思って改めてプレスを見てみたら表1にも表4にも
その<手>の写真が出ている?」

------どういうこと?
「その前に、簡単にストーリーをおさらいしよう。
主人公は5才の心を持つ19才のチョウォン(チョ・スンウ)。
母親のキョンスク(キム・ミスク)はそんなチョウォンから目が離せず、
息子より一日だけ長生きしたいと思っている。
何とか息子の自立心を育てようとする母親は、
走るときだけは、他の人と同じものが見えるのではないかと、
マラソンを選択。
チョウォンの才能も開花してハーフマラソンに入賞。
これを機に彼女は、息子をフルマラソンに挑戦させるべく、
かつてボストン・マラソンランで優勝した経歴を持つ
ソン・チョンウク(イ・ギヨン)にコーチを依頼。
最初は煩わしく思っていたチョンウクだが、
実直なチョウォンに心動かされて......というお話だ」

------う~ん。なんだか思った通りの話という気がするけど...。
「ところが、この映画ではこのコーチを通して、
母親の行動がエゴなのでは?......と言う批判がなされる。
これって、なかなかできることじゃないよね。
だって、そういう子供を抱えた親の苦労は
それこそ常人の想像を絶するもので、そんなこと簡単に口にはできない」

------それはそうだね。
「さらには次男(ペク・ソンヒョン)の
母親への痛烈な批判の言葉も飛び出す。
かくして映画は、彼女の内面深くに切り込んでいくんだ」

------ビターと言うかシビアと言うか。
さすが話題になっただけのことはあるね。
「話が脇にそれてしまったけど、
いったん走り出すと、
ペース配分なんて関係なしのチョウォンに、
コーチのチョンウクが手を差し伸べ並走。
チョウォンのもう一方の手は、道ばたの草をすっと撫でていく。
ふたりの心を初めて繋ぐ<手>。
その姿に静かに寄り添う旋律も効果的。
観る者の心に最初のさざ波を起こす名シーンだね」

------なるほどね。<手>って人間ならではの
コミュニケートの手段だものね。
(※注:ネタバレに繋がる部分あり)
「初期のスピルバーグ映画も<手>が印象的だったな。
ま、それはともかく、
チラシにまたまた『秘密』の文字が踊っているんだけど、
その『秘密』はやはり、この<手>と関係あるエピソードに。
ほんとうは、そこを詳説したいけど、
そうなると完全ネタバレになっちゃうからなあ。
ただ、その<秘密>が明らかになってからの<手>は、
この映画をより美しいものにする。
レースを走るチョウォンに差し伸べられる観客たちの声援の<手>。
あの日の草のように、彼はそれらの<手>と軽くタッチしながら
自分の幻想の中の歓喜の渦の中を走り抜けていく。
映画はセリフで語るものでなく<画>で語るもの。
そのことを示してくれた、まさに感動のクライマックスだったね」

(byえいwithフォーン)

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