ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『愛についてのキンゼイ・レポート』

2005-06-14 18:46:30 | 新作映画
-------「キンゼイ・レポート」って言葉、
なんかどこかで聞いたことあるような....?
「うん。懐かしい言葉だね。でもフォーンはもちろん、
ぼくもリアルタイムで知るわけはない。
だってこれって1948年に初めて発表されたレポートだもの」

------なんのレポート?
「『性』の実態の発表レポート。
350の質問項目を1万8000人にインタビュー。
当時、アメリカを一大センセーションに巻き込んだらしい」

------じゃあ、この映画はそのレポートを再現してるの?
「そう思っちゃうよね。でもこれは生涯をかけてそのリサーチにあたった
科学者キンゼイと、彼と苦楽を共にした妻クララの話。
原題も主人公の名前を取ってシンプルに『KINSEY』と言うんだ。
日本でこのタイトルになったワケは映画のテーマにも関係してる。
これは後で話すけど...」

------ということは人間ドラマにスポットを当ててるんだね。
そうなると、キャスティングが重要ポイントとなりそうだ。
「キンゼイにはリーアム・ニーソン。
彼はロサンゼルス映画批評協会賞主演男優賞を受賞。
そしてクララ役にローラ・リニー。
彼女は受賞こそ逃したものの、アカデミー賞助演女優賞にノミネート。
他にもナショナル・ボード・オブ・レビュー賞優秀助演女優賞などを受賞している」

------で、観てみてどうだった? こういう実話を基にした映画の場合、
これまでその物語の中身よりアプローチの仕方に力点を置いて喋ってたけど...。
「なかなか、オモシロい構成だったね。
キンゼイ・レポートというのは個人個人へのインタヴューによって行なわれるらしい。
この映画でまず映し出されるのは
キンゼイが助手たちにそのインタヴュー方法を教えるシーン。
彼らにキンゼイ自身へインタヴューをさせ、彼が細かいところをチェック。
自慰、婚前交渉、初夜と言った質問にキンゼイが答える形で、
映画では彼の生い立ちが語られていくんだ。
このインタヴューは映画の背骨となっていて、
後年、キンゼイと対立関係にあった父親との再会シーンでも用いられる。
日曜学校の教師も務め、不道徳な行為を戒める厳格な父。
そのインタヴューで、彼の父が生涯語ったことのないある事柄を口にするシーンは、
ジョン・リスゴウの名演もあって実に感動的。
リスゴウの言葉を語るまでもなく、
真実が人間を解放する---というこの映画のテーマを最も強く語っている」

------真実が人間を解放する。なるほどね。
「センセーショナルなテーマをレポートにしたため、
アメリカン・カルチャー史の中でも
冷静な考察には長い時間が必要だったんだろうけど、
『性』をモチーフにした人としては、
ラリー・フリントなどと並ぶ大物という気がするな。
だって、このレポートの中で語られていることは、
現代では、そう珍しくないことばかり。
もし、このキンゼイのレポートがなかったら、
いまの人々の性意識はどうなってたか、ちょっと予測がつかない。
もちろん、違う形で現れた可能性もあるけどね。
ただ、映画としては今にも通用する内容として、
後半は時代を感じさせない普遍的映像にしたということらしい」

------そろそろタイトルの秘密教えてよ?
※ネタバレ注
「映画の中では、性を調査する過程で
キンゼイはホモも体験するし、クララもまたその相手と関係を持つ。
このレポートで次第に明らかになるのは、
人がいればその数だけの性があり、
そこには多数派か少数派かはあっても、
ノーマル、アブノーマルというものはないということ。
と、これはどんな性もありという、
後のフリーセックスに繋がる開けた性意識を提示する。
ところが、その空気はスタッフ間にも広まり、
それは婚外交渉、つまり不倫関係をも生み出してしまう。
となると、そこには当然、愛の問題が絡んでくる。
だが、それはキンゼイにも測定不能。そう、科学ではないからだ。
つまり、この映画の到着点、それは科学の限界。
そのことにスタッフたちから指摘されたキンゼイが悩みを抱えながら、
それでも自分のやってきたことは意味があったと、
これもやはりインタヴューの中で、
その相手から教えられるエピソードは、
予測がついたとは言え、
心優しいシーンになっていたよ」

(byえいwithフォーン)

※だれもが知りたがってる度人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー