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ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『亡国のイージス』

2005-08-07 00:48:10 | 映画
-----この映画、もう公開されているよね。
巷で話題になっているみたいだけど、どうだった?
「ぼくの個人的なこの映画への興味としては、
監督があの阪本順治だということ。
『顔』『KT』の彼が、
今年相次いで映画化された福井晴敏の原作に取り組むんだから、
それだけでもセンセーショナルだ」

-----でも原作読んでないでしょう?
「映画は原作に縛られてはいけないと思うし、
小説と比べてどうのというのは、あまり意味をなさないと思う。
ただ、原作がどうであれ、この中で
阪本監督が最も力を入れて描いていたのは
真田広之演じる仙石になっていた」

-----いきなりだニャあ。物語を少し説明してよ。
「この映画は、某国の工作員に乗っ取られたイージス艦を舞台に、
首都・東京攻撃を阻止しようとする仙石と如月ふたりの鑑内での動く戦い、
そしてイージス艦を沈めようという決断をめぐる官邸内での動かない戦い、
このふたつの<戦い>を軸に進んでゆく。
その中で、工作員の首謀者ヨンファの取る言動が
いまの日本の防衛的問題を浮き彫りにしていく」

-----そんな簡単にまとめられる話なの?
「いや、そんなことないよ。
第一、某国の工作員がそんなに簡単に乗っ取りができるはずはなく、
そこに、彼に協力した自衛隊員それぞれの思いや葛藤が絡み合っていく」

-----そうか、ポリティカルサスペンスにして
一種の群像劇でもあるわけだ。で、どうだったの映画は?
「どう言ったらいいんだろうな。
退屈はしないし、ある意味よくできた映画ではある。
最初から最後まで、ある一定のテンションを保って映画は進んでいくし…。
すっかり巨匠になったという感じだったね。
でも、手に汗握ることもなかった。
おそらくその破綻のなさが、ぼく的には逆にもの足りなさとなっている」

-----よくできているけど、もの足りない?
それってどういうこと?
「映画って、後で同じくその映画を観た人と話すとき、
それぞれが心に残ったワンシーンを話すことが多いよね。
この映画には、そう言う突出したシーンがない。
晩年の黒澤映画みたいなんだ。
悪くはないけど、印象に残る“これ”といったワンシーンがない」

------うん。それって分かる気がする。
『猿の惑星』だったら自由の女神、『卒業』だったら教会ってヤツでしょ。
「(笑)例が古いな。でもそういうことだね。
ただ、ぼくとしては冒頭のシーンには目を瞠ったね。
雨の中をヨンファが副長の家へ向かう。
よくハリウッド映画なんかであるように、
一見、本筋とは関係なく見えるエピソードを冒頭に置く。
しかもなんの説明もなく、それは唐突に終わる。
映画が進むにつれて、あのシーンの意味が分かってくるんだけど、
そのフィルムの質感といい、色調といい、いまの映画には見えない。
昔のベテラン監督が撮ったのかと錯覚してしまいそうな感じだ。
そして、続けて描かれるのが仙石が鑑に向かうため家を出るシーン。
ここは一転して穏やかな映像に変わる。
実はこのシーンに、すでにここに阪本監督のこの映画への姿勢
「個」「家族」の優位性が描かれている。
冒頭の大時代的な映像は、
それを強調するためにも必要な手法だったのでは…
と、いまはそう思えてならないんだ」

         (byえいwithフォーン)

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猫ニュー

『宇宙戦争』

2005-07-03 12:01:33 | 映画
------これってもう公開されてるよね。
すごい秘密主義だったみたいだけど、予想と比べてみてどうだった?
「スピルバーグって『未知との遭遇』で
それまで映画で描かれていた宇宙人=侵略者のイメージを覆した人。
そこで放たれた<We are not alone>のメッセージは
『E.T.』で個と個の友情にまで発展していく。
でもこの『宇宙戦争』は
H・G・ウェルズの原作を基に侵略をテーマに描かれた映画。
すでにバイロン・ハスキンが53年に映画化。
50年代SFの代表とも言われている。
もっとも製作のジョージ・パルの方が有名で、
この映画はジョージ・パルの名で語られることが多いけど...」

-----そういうことはどうでもいいから、この映画はどうだったの?
「うん。これは<家族愛>を前面に打ち出した宣伝展開になってるけど、
どちらかというと<ホラー>映画という感じだったね。
もちろんタイトルに偽りなしで<戦争>もあるし<SF>もある。
でも、観ている途中ぼくの頭をよぎっていったのは
『ゾンビ』『タイタニック』『プライベート・ライアン』
『ポルターガイスト』『エイリアン』、そして『GONIN』」

-----えっ?『GONIN』って石井隆の?
「まあ、それは後で話すことにして、
この映画、冒頭はニュージャージー。
主人公レイが別れた妻と面会するシーンから始まる。
ある期間だけ子供たちと過ごせるというこの設定はアメリカ映画に多く、
正直、またか...という気にもなったけど、
この<父と子の関係>が映画を最後まで牽引していく。
反抗的な息子ロビーと、神経過敏な娘レイチェル。
前触れもなく唐突に始まった異星人の侵略に対し、
その現場に立ち会ったレイは二人の子供を抱え、
ニュージャージーから妻の住むボストンへ向かうわけだ。
自分だけじゃないからサスペンス色もさらに増してくる」

----なるほど。全地球規模の戦争でありながら、
一家族の物語にスポットを当ててるわけだ。
「うん。でも最初はこれは夢落ちかと思わせるほどの強引な展開。
他人の車を盗んで夢中で飛ばすレイ。
事情が飲み込めない子供たちは半パニック。
彼らは現場を見てない上に、もともと親を信頼してないわけだからね。
ぼくも、ここはレイの幻覚、妄想かも...と思ってしまった」

----いくらなんでもそれはニャいでしょ?
「うん。それはなかった(笑)。
さて、この後さらなる<悪夢>が彼を襲う。
フェリー乗り場近くで、一台だけ動いている彼らの車を目がけて
人々が<ゾンビ>の群れのように突進。
どうにか乗り込んだフェリーでは乗り遅れた人々が船に飛び乗る」

----ああ、ここが『タイタニック』か。
「必死に岸に泳ぎ着いた家族が目撃するのは異星人に立ち向かう軍隊」
----ここが『プライベート・ライアン』ね。
「で、身を切られるような親子泣き別れのシーンを挟んで
映画の中軸をなす廃屋のシーンが始まる。
彼らを廃屋に招き入れた男(ティム・ロビンス好演!)は異星人と戦うことを主張。
一方のレイは彼らの目を逃れて生き延びることを選ぶ。
この<生きざま>の対立の中、
廃屋内を異星人の<眼>が巨大蛇のように彼らを探し回る。
ばくがさっき言った石井隆『GONIN』というのはここ。
あの映画でもっとも恐かったのは
押し入れに身を潜めて隠れた恋人たちが見つかるところ。
見つかればその先に待ち受けるのは<逃れられない死>。
ただ、今回ちょっと不満なのは
そこで<眼>を避けて逃げ回る3人の<脅え>が足りなかったところ。
もし、実際にあんな事態に遭遇したら、
震えて足も動かないんじゃないか....そう思ったわけだ。
たとえばこれを時代劇に置き換えてみよう。
城を攻められ、秘密の小部屋に隠れ息を潜める城主。
外には刀を手に彼を探し回る敵軍。これはほんとうに恐いと思う。
吉良上野介の気持ち、分かるなあ...」

----ちょっと、ちょっと。話がとんでもない方向にってニャい?
「あっ、ごめんごめん。
さて、ここでついに異星人が姿を現す。
最初は『エイリアン』を思わせたけど、
やはりあれを超えるほどの造型ではなかったね。
ま、この後の見どころは
異星人のマシーンに飲み込まれた後、彼らがどうするか?ってことかな」

----ニャんだか、あっさりまとめようとしてニャい。
結局はどうだったの?オモシロかったの?オモシロくなかったの?
『ポルターガイスト』の話もしてないし...。
「スピルバーグってファミリー・エンターテイメントのイメージが強く、
あまりホラーなんて作ってないよなあ....と思って出かけたため、
その過激なまでの残酷描写にびっくりしたというのが正直な気持ち。
でもよくよく考えてみれば、彼は『激突!』『JAWS・ジョーズ』という
どちらかと言えばショッキングな作品から、そのキャリアを始めているわけで、
こういうのはもともとお手の物だったわけだ。
あとトビー・フーパー監督の『ポルターガイスト』なんだけど、
これは実質的にはスピルバーグが監督したと言われている。
<少女を未知の脅威から守る父親>という、その構成も似てるけど、
あの映画の中に、キッチンでぐにょぐにょ動くステーキ肉という、
スピルバーグらしからぬグロテスクな映像が出てくる。
(ここだけはトビー・フーパーが演出したという説もあり)
今回の映画は、あのシーンを観たときの胸のざわめきと近い。
いままで封印されていた
スピルバーグの闇の部分が描かれたという意味でも、
ぼくはオモシロかったよ」

     (byえいwithフォーン)

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猫ニュー


トラックバック・ベスト10

2005-03-14 23:30:14 | 映画
-----トラックバック・ベスト10?にゃんだそれ?
「うん。たとえばこの『ラムの大通り』一つとっても、
毎日、多くの人が来てトラックバックしてくれてる。
その映画に関心がある人が書きこみしてくれるコメントとは異なって、
トラックバックというのは、
その映画について、みんなが自分のページに書いているということだよね。
で、これってブログを持っている人の中での
映画の人気のバロメーターを測る尺度になるのでは?
と、前から思っていたんだ。
そこで、今年公開された映画に絞って
ちょっとその上位を調べてみようかと....。
もちろん『ラムの大通り』上だけでだけどね」

------にゃるほど、おもしろいかも...。
「まず、惜しくも第11位となったのが『エターナル・サンシャイン』10TB
第10位『ビヨンドtheシー~夢見るように歌えば~』11TB
第8位『オペラ座の怪人』14TB
第8位『東京タワー tokyo tower』14TB
第6位『ロング・エンゲージメント』15TB
第6位『サイドウェイ』15TB
第5位『北の零年』21TB
第4位『ビフォア・サンセット』22TB
第2位『アレキサンダー』23TB
第2位『きみに読む物語』23TB
で、栄えある第1位.....ぱんぱかぱーん
なんと
『オーシャンズ12』28TB」

------へぇ~っ。意外だにゃあ。『オーシャンズ12』は
みんなの評判悪かった気がしたけど。
あれっ、『パッチギ!』がない。

「うん。やはりいいか悪いかは観てみるまでは分からないからね。
それと『パッチギ!』。これは2回書いたので省略。8+8で16TBだけどね。
この映画や『レイクサイドマーダーケース』(9TB)のように、
ここは単館系の邦画を好きな人が訪れてくれてるのも特徴だね」

-------ふうん意外とおもしろいや。この企画またやるの?
「そうだね。月一くらいで考えてみようかな
『エターナル・サンシャイン』『きみに読む物語』
『ロング・エンゲージメント』『サイドウェイ』は、続映ないしはこれからの公開。
どこまで伸びるか興味深いしね」

------それはそうと、映画のおしゃべりは?
「急な打ち合わせとかが多くてあんまり観られなかったんだ。
明日あたりからまた再開するよ」


      (byえいwithフォーン)

※05年3月14日23:30PMのTB度
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「2004キネマ旬報ベストテン」

2005-01-09 22:59:00 | 映画
「今夜は『キネマ旬報ベストテン』の話でもしようかな」
-------にゃに?そのキネマ旬報って....。
「うん。日本でもっとも古くからある映画専門誌のこと。
だんだんと柔らかくはなってきてるけど、
やはり権威という面ではいちばんかな」

-------権威?いやな言葉だにゃあ。
「じゃあ、こう言い換えよう。
日本のアカデミー賞、またはカンヌ映画祭みたいなもの」

-------ちょっとムリがない?
「確かに(笑)。
でも、まあそういう<お祭り>だってこと。
ふだんは『キネ旬』は買わない僕だけど、
このベストテン号だけは、
古本屋で買ったのも含めてなんと40冊近く持ってる」

-------うわあ。オタクじゃない?
「それは言い過ぎだろう(笑)。
ま、それはともかくとして、今年は
【日本】(1)誰も知らない(2)血と骨(3)下妻物語
(4)父と暮せば(5)隠し剣 鬼の爪(6)理由
(7)スウィングガールズ(8)ニワトリはハダシだ
(9)チルソクの夏(10)透光の樹
【外国】(1)ミスティック・リバー(2)殺人の追憶
(3)父、帰る(4)オアシス(5)ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還
(6)オールド・ボーイ(7)モーターサイクル・ダイアリーズ
(8)シービスケット(9)春夏秋冬そして春(10)ビッグ・フィッシュ
○監督賞=崔洋一○脚本賞=崔洋一、鄭義信
○主演男優賞=ビートたけし○主演女優賞=宮沢りえ
○助演男優賞=オダギリジョー○助演女優賞=YOU
○新人男優賞=柳楽優弥○新人女優賞=土屋アンナ
○外国映画監督賞=クリント・イーストウッド」

--------で、長年「ベストテン号」を見てきた上での感想は?
「日本映画に関して言えば、
例年になくバランスとれてると思う。
社会派あり、エンターテイメントあり、時代劇あり。
青春映画もあれば、官能的な大人の映画もある。
外国映画は、あいかわらずイーストウッド人気高しだね。
それとやはり目立つ韓国映画ってことかな。
なんと4本も入ってるんだもの」

--------個人賞は?
「やはり特筆すべきは新人女優賞の土屋アンナ。
『下妻物語』の彼女を観ると、
だれも文句言えなくなるよ」


(byえいwithフォーン)

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キネ旬ベストワン「誰も知らない」主演男優賞たけし (夕刊フジ) - goo ニュース

『荒野の七人』

2004-12-08 23:26:37 | 映画
--------いまごろなんでこの映画なのさ?
「最近のはやりで、よく昔の名画をニュープリントでリバイバル公開してるわけ。
『荒野の七人』はTVばかりで
まともに観たことがなかったからちょうどいいかなって....」

--------で、どうだった?
かつての記憶と比べて。
「うん、ジョン・スタージェスってやっぱり
他のアメリカ西部劇の監督とは違ったんだなって、再確認したよ。
すでにいろんな人が喋ってるだろうから
ぼくが改めて言うこともないんだけど、
これはイタリアのセルジオ・レオーネにも影響与えてたんだね。
まず大平原や保安官やバッファローといった
アメリカ西部劇お約束のアイテムがまったく出てこない。
村の人々はメキシコ人ということもありみんな白い服。
その中に主人公の一人ユル・ブリンナーが黒ずくめ。
黒って本来なら悪人の衣装のはず。
『シェーン』のジャック・パランスのようにね。
でもそれを正義の味方(?)が着ている」

-------なるほど着眼点はマカロニウエスタンそっくりだ。
「そう。ああいった残虐さはないけど。
現実にはあり得ない超人的劇画チック必殺ガンプレイも
どんどん飛び出すし、それってここに原点がありそうだ。
で、野盗の首領がイーライ・ウォーラック。
彼はレオーネの『続夕陽のガンマン』の<醜い奴>役なのは知ってるよね。
そうそう、これはプレスに書いてあったけど、
最近ではタランティーノも使っている
銃撃戦の乾いた効果音もここに元があるんだってさ。
あ、あとホルスト・ブッフホルツが敵を馬から引きずりおろし
自分が代わりにその馬に乗るシーンはすごかった。
特撮なしのワンカット撮影。
あれはスタントなしだと思うけど...」


(byえいwithフォーン)

※ブッフホルツ驚き度


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初期ティム・バートン短編(byえいwithフォーン)

2004-09-14 19:58:37 | 映画
----今日は『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』だったんだっけ。
確かビデオでしか観てなかったんだよね。どうだった?
あれっ、ムズかしい顔してるな。
「うん、やはりぼくにはこれは肌があわないな。
最初から最後まで音楽がずっとかかりっぱなしで落ち着けない。
で、それに乗せて彼のダークなイメージが延々と続くだけ。
だれに感情移入することもなく、ノレないまま終わったな」。

----でも、そのイメージというのが独創的なんでしょ?
「いや、それは観る人それぞれの価値観だからね。
ただ個人的には、ハロウィン・タウンの道が
どこもここも曲がりくねっているというのは
視覚的にオモシロかったけど」。

----だけど、お話はラブ・ファンタジーなんだよね?
「それはサリーにとっての話で、
ジャックが彼女を好きになったのも突然としか見えず、
なんだか、とってつけた感じだったね。
こういうストップモーション・アニメって作るの大変だし、
深い物語性や心理面までとても手が回らなかったんだろうな」。

----珍しくキビしいにゃ。ティム・バートン嫌いなの?
「いや、今回初めて観た『ヴィンセント』とかは
6分しかないけど、おそらく彼の少年時代の投影と思われる
怪奇好きで孤独な少年の心象風景が
『カリガリ博士』風の美術の中に展開していてスゴく楽しめたし、
30分の『フランケンウィニー』も
怪獣映画や怪奇映画へのオマージュがいっぱい。
交通事故でなくなった犬をフランケンシュタインのように甦らせる、
という話のオモシロさもさることながら、
少年の犬への愛情がきちんと描きこまれ、
しかもラストでは素晴らしい奇跡が起こる。
ありえないようなお話でも観た後は幸福な気持ちになれるんだ。
こんな映画なら大歓迎だな」。



『エレファント・マン』(byえいwithフォーン)

2004-09-12 17:26:35 | 映画
----これって昔の映画だよね。
「そう、もうすぐリバイバル公開するんだ。
監督はデヴィッド・リンチなんだけど、
当時、彼の名はまだ知られてなく、
感動ヒューマニズム映画として売っていてたのさ。
予告も、主人公の顔を見せないのはもちろんのこと、
アンソニー・ホプキンスの涙顔ばかり」。

----でも大ヒットしたんでしょ?
「うん。お涙ちょうだいプラス
怖いもの見たさとでも言うのかな。
その年のナンバーワン・ヒットだったと思う。
ところが、その後、デヴィッド・リンチが
ヘンな監督だと言うことが徐々に知れ渡ってくる。
TVでは「ツイン・ピークス」をやったり、
映画も『ブルーベルベット』だの『ロスト・ハイウェイ』だの
『マルホランド・ドライブ』だのだね」。
だからかどうか、今回の試写ではかなり笑いが起きたよ。
あまりにもリンチ=エキセントリックが知れ渡り、
“裏があるに決まってる”と観てる方も斜に構えたんだろうね」。

-----どんなとこで笑いが起きたの?
「たとえば、エレファント・マンが
身だしなみを整えるところとかだね。
おそらく、以前だったらここも涙を誘ってたような気がする」。

-----なるほどね。で、アニキはどう感じたの?
(※ここからはネタバレ注)
「いやあ、考えさせられたよ。
彼が劇場に芝居を観に行って紹介され、みんなの拍手を受ける。
その夜、彼の趣味であるペーパークラフトを完成させた後、
『終わった』と言ってベッドに横たわるんだけど、
そのとき、タブーであった“普通の寝姿”になる。
でもこの寝方だと、彼は死んでしまうんだ。
彼は、ただそれを試しただけなのか?
ぼくは『終わった』の言葉が、ペーパークラフトの完成だけでなく、
『これでやっと他の人と同じように認められた。
もう満足だ、やっと終わった』の意味。
つまり一種の自殺に取れたね。
ただ、その前に『また芝居に行こう』と言ってるのは気になるけど…。
で、ラストは星空。
彼のもう1本のストレートな映画、
『ストレート・ストーリー』のラストと同じだったね」。

----ふむ。同じ映画でも時代が変わると、
違った評価がされるということだにゃ。
ぼくも、そうかにゃ。

『山猫』ヴィスコンティ(byえいwithフォーン)

2004-09-07 20:22:37 | 映画
----『山猫』ってスゴいタイトル。
「これはねイタリアの巨匠
ルキーノ・ヴィスコンティの初期の傑作。
主人公が貴族で『山猫』というのは
その紋章。
いままでに何度か上映されているけど、
今回のは“イタリア語・完全復元版”」。

----どういうこと?
「この映画はテクニカラーで撮られているんだけど、
時を経るに従って色褪せを起こしたんだね。
161分の英語国際版(オリジナルは187分)もあって、
こちらはデラックスカラーにプリントしてあり発色はいい。
でも、物語としては明らかに劣る。
そこで10年以上前から、
撮影のジュゼッペ・ロトゥンノ監修で
復元作業が行われたというわけ」。

----なるほどね。で、どうだったんにゃ?
「映画自体はぼくが語るのもおこがましい。
ただ作られた時代が時代のため直接的描写は抑えながらも
彼の性的嗜好がにじみ出ているのは面白かったな。
で、話を戻してその<色>のことにしぼって少しだけ。
前半のハイライトとなる赤シャツ隊の戦い。
この赤シャツのくすんだ色が目を見張ったね。
なんでも、その褪色感を出すため、
紅茶で煮てから太陽の下に何時間もさらし、
最後に土に埋めた後で仕立てられたのだとか…。
昨今のCG頼みの映画からは想像もつかないこと。
ニーノ・ロータの音楽も、
彼がナチス・ドイツ占領下に書いた
未発表の交響曲なんだってさ。
まさに伝説のオンパレードだね。
あっ、ラストカットには猫も出ていたよ。
町を歩いてた」。

---いいよ、無理にあわせにゃくても。

松尾スズキと映画(byフォーン)

2004-09-04 09:48:06 | 映画
----昨日アニキは映画に行けなかったらしい。
矢沢あい原作
『下弦の月-ラスト・クォーター-』の時間を間違えたのだとか。
栗山千明、成宮寛貴に加え、HYDEも出ているらしい。
あとでストーリー読んで「オモシロそう」と言っていた。
で、代わりに話してくれたのが最近読んでいた
松尾スズキの「宗教が往く」。
なんでも映画を使った比喩的表現がいっぱい出てくるらしい。

<釈由美子のグラビアを下敷きにしのばせ「『バトル・ロワイアル』って『エヴァンゲリオン』ぽいよな」とか言っているような、もう、名前を考える気もしないほどに退屈な高校生」>

<好きな映画は? と聞かれ『ベティ・ブルー』と答える奴以上におもしろくないことを喋っていることだけは確か>

とかいうように…。
でも、話聞いていちばんオモシロかったのは『ブレードランナー』の使い方。
待の騒音の中だかなんかに
「二杯で十分ですよ。分かって下さいよ」の名(?)セリフが
そっと忍ばせてあったらしい。
これってハリソン・フォード扮する主人公が
屋台でヌードル食べてるときの親父のコトバ。
『ブレードランナー』のタイトルも入れずに
そのままセリフ借用してるんだから、
ここにそのまま写しても松尾さんからクレームこないよ
と、アニキ言ってたにゃ。

続・綿矢りさ&『ブラインド・ホライズン』(byえいwithフォーン)

2004-08-30 19:41:31 | 映画
「先日、綿矢りさの『蹴りたい背中』について話したけど、
彼女の前作の『インストール』が映画化されるらしい。
主演は上戸彩。それに天才子役と言われる神木隆之介(君)、
さらに中村七之助、菊川怜、小島聖、田中好子と、
売れ線がずらり並んだけど、
だからって映画がヒットするとは限らないものなあ…」。

----にゃ、にゃにぃ。今日は先に喋りはじめたぞ?
「『亡国のイージス』も映画化されるし、
日本映画はベストセラー頼みが多いな」。

----で、今日の映画は?
「『ブラインド・ホライズン』。
タイトルからだけじゃ、なんのことか分からないだろうけど、
これは“記憶を失った○○○○○”の話。
で、彼が何者かが観ている方にも
ハッキリ分からないところがミソ。
何が真実で何が嘘かも分からなければ、
誰が善で誰が悪かも分からない。
ただ分かっているのは、この男が“大統領暗殺計画”について
どうやら何かを掴んでるらしいということだけ。

----おもしろそうだにゃ。
ミステリー絡みの映画には
『観客は知っている→知らない主人公をハラハラ見守る』と、
『観客にも知らせない→主人公と一緒にハラハラする』の
二つのアプローチがあるけど、
映画として作りやすいのは後者じゃないかな。
出演者をみんなワケありげにするだけで雰囲気が出るし、
第一、いく通りもの視点から描きわけるなんて
複雑なこともしなくてすむ。
主演はヴァル・キルマー。他にネーヴ・キャンベル、
サム・シェパード、それにフェイ・ダナウェイも出てる。
でもフェイ・ダナウェイって、
少しジェーン・フォンダに似てきた。
どうでもいいことだけど…」。

----うん、どうでもいい。

『ジョゼと虎と魚たち』(byえい&フォーン)

2004-08-29 23:44:27 | 映画
----えっ、この映画いまごろ?
「うん、スクリーンで観てなかったんだ?」
----それはまたなぜ?
「なんていうか、主人公のジョゼが足の不自由な女の子で
性格はエキセントリック。で、相手の男が一途に彼女を愛する…。
そんな映画だと思ってたんだね」。

----でも大ヒットしたんだよね。
「そう、観ながら思い出したんだけど、
この映画って池脇千鶴の大胆なセックス・シーンが
話題になっていたんだよね」。

----で、どうだったの?
「いや、そうでもなかったよ。
案外、比喩的な形でボカしてあったね。
それに思ってたよりも描き方がベタベタしてない。
福祉の仕事を目指す上野樹里なんか、
いかにもって感じの陽の役なんだけど、
そのまま“敵役”で終わらせることなく
自暴自棄になってキャンペーンガールをやってるところとかも見せる。
つまり主人公たち二人以外の人の心への目配せもされているんだ。
あと、妻夫木聡の演技はさすがだったね。
あっ、ここで泣くな…なんて思っていても、
その泣きの演技の向こうに主人公の思いが立ち上ってきて
こちらの感情をも揺り動かす」。

----なんかベタボメじゃない。
「いや、根本的に好きなタイプの映画じゃないけどね」。
----変なの。

古瀬陽子と映画『クライモリ』(byフォーン)

2004-08-27 23:39:03 | 映画
アニキは昨日遅かった。
この前、観た『ロード88』の挿入歌「夢は夢のままで」を
歌っている古瀬陽子のライヴを聴きに行ったらしい。
この写真はそのサイン入りチケットだ。
テープにも録音してきたようだが
そんなことしていいのかな?
少し聞かせてもらったけど、なんか今っぽくないにゃ。
で、そのまま満足げにぐっすり寝てしまった。
というわけで、今日の映画のお話は
アニキがつけている映画手帳の覗き見。

『クライモリ』@東宝東和試写室

未開発の森の奥に住むフリークたちがドライバーたちを待ち伏せ、
次々と襲っては残虐に殺し食らうというのだから、
これはかなりヤバメの話。
彼らの畸形の理由を近親婚による
「濃い血」ということにしてあるが、
だとすれば彼らの中に女性が一人もいないのはなぜか、
彼らが車を動かすためにガソリンを手に入れているはずの
ガソリンスタンドの親父は彼らとどう言う関係なのか、など、
いくつも疑問は残る。
しかし70年代のホラーを思わせる設定と映像が嬉しい。
キツメのTシャツを着た女性が出るだけで、雰囲気満点だ。


だそうだ。

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『ロード88』(byえいwithフォーン)

2004-08-24 23:19:51 | 映画
----変わったタイトルだね。
国道88号線だったら「ルート」とかになりそうだけど?
「そうなんだよ。ぼくも最初は1988年の話かと思ってた。
でも、これってお遍路で知られる四国の88ヶ所の霊場のこと。
白血病の女の子が死の不安を抱きながら、
スケボーを走らせ、この88ヶ所を回る。
最初は『へぇ~っ、歩きじゃなくてもいいんだ』なんて
のんびり構えながら見てたんだけど、
いつしか引きずり込まれていったね」。

----と言うと?
「主人公の女の子の話だけでなく、TV『電波少年』を思わせる
芸人貧乏旅行や、犯罪に加担して故郷に逃げ帰った男の話が
うまくからみあい、それぞれがそれぞれに影響を与えていく。
まさにロードムービーの王道だね。
監督が中村幻児。もともとはピンク映画を撮ってた人だけど、
数年前の『元気の神様』もよかったし、いいねこの監督は。
クライマックスでは古瀬陽子の
『夢は夢のままで』が流れるんだけど、
そこなんかハンカチなしでは見られないね。
あんまり詳しくは言えないけど、主人公のもう一つの物語も
ある大団円を迎える。
できすぎという気もするけど、やはり脚本がうまいんだろうな」。

----四国を舞台にしたロードムービーというと他にもあったよね。
「吉田拓郎が主題歌に使われていた『旅の重さ』だね
ああいう自分探しの映画よりも、この映画のように、
前向きに生と取り組んでる方が好感が持てるね」。

----そういえばライブにも行こうと思ってるんだって?
「うん、吉祥寺曼陀羅でよくやってるみたいなんだ。
明後日もあるんだって。
来月24日にはソロ・ライヴもあるらしい」。

----入れ込んでるにゃあ。



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『マイ・ボディガード』(byえいwithフォーン)

2004-08-23 20:10:52 | 映画
----『マイ・ボディガード』って、なんか想像つきやすい感じ。
「コピーが“『レオン』から10年、
危険と隣り合わせの新たな名作が誕生した。”
つまりこれは悪に狙われた少女と彼女を守る男の話。
とは言え、『レオン』が少女の側にずっといることで
彼女を守るのに対して、
こちらは守るべき少女を誘拐された男の復讐の物語。
復讐シーンがけっこうエグくハード。
人によっては目を塞ぎたくなるかもだね。
監督が『スパイ・ゲーム』のトニー・スコット。
フィルムのスピードを変えたり、多重露出をやったりと、
あいもかわらずスタイリッシュ。
ただ、ちょっと冗長なところがあって、
これで2時間26分は少し長いな」。

----配役も豪華なんだって?
「うん、主演はデンゼル・ワシントンとダコタ・ファニング。
脇を固めるのがクリストファー・ウォーケン、ミッキー・ロークに、
イタリアの名優ジャンカルロ・ジャンニーニ」。

----『レオン』のナタリー・ポートマンが
『スター・ウォーズ』のアミダラ姫を演ったように
ダコタ・ファニングも将来なにかやってくれそうだね。
「言うようになったじゃない」。

※『レオン』はイギリスの映画雑誌“Total Film”が
“あなたが愛する憎むべきキャラクター”と題して行なった
人気投票で第4位にランクイン。


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ムンクの「叫び」が強奪!(byえい)

2004-08-22 22:04:30 | 映画
ムンクの「叫び」が強奪された…。
まるで映画みたいな話。
そう、絵画泥棒は一獲千金の上、
人を傷つけることが少ないから、
「夢」を語る映画の題材になりやすい。
その好例がチョウ・ユンファとレスリー・チャンが共演し、
ジョン・ウーが監督した『狼たちの絆』
(余談だけどこの映画の原題の『縦横四海』とは、
66年のロベール・アンリコ監督作『冒険者たち』
中国公開のタイトル。
で、このロベール・アンリコこそが
『ラムの大通り』の監督。)

しかし、絵画って普通は閉館後に盗むものだけど、
今回の事件は白昼堂々、見物客のいる前での出来事。
ちょっとロマンがなさすぎだなあ。

絵画泥棒を描いた他の映画には
『トーマス・クラウン・アフェア』
『おしゃれ泥棒』
『CAT’S EYE』
など