雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

空色(くうしき)カンバス

2015-01-31 21:00:00 | 

靖子靖史著"空色(くうしき)カンバス"を読みました。
ゆかりは高校三年生、田舎町に住んでいます。
絵を描くのが好きです。
進路を決めなくてはいけない時期で、美術教師には
美大へ行くことを勧められています。
兄の隆道は29歳でお寺を継いでいます。
四年前に父は病気で突然に亡くなりました。

学校から帰ると風呂上りの美人が迎えてくれました。
束縛がひどい夫から何も持たず逃げてきて、玄関で
倒れていたといいます。
小早川千尋と名乗る女性を居候させることになります。

ゆかりは千尋をおくことに反発します。
隆道には清明という友人がいます。
清明はお寺に生まれていませんが隆道の父に感化され
仏教の道に進みました。
月命日には父の墓参りに来てくれますし、仕事の
手伝いもしてもらっています。

ある日千尋は何も言わずに寺を去ってしまいます。
残された彼らには千尋は忘れ去れる存在ではなく
彼女が何者か、どこにいるのか探そうとします。

なかなかいい話でした。
ゆかりと隆道の兄弟は穏やかでいい雰囲気です。
暖かい人間関係です。
千尋がいなくなってからの物語はスピードアップして
ミステリーじみてきます。
結局本当のところはなんだったのかは語られていません。
それは何だったっていいじゃないっていうこと
なんでしょうね。

千尋が夫から逃げてきたというのは嘘なのかもしれません。
しかし現実にこのような状況に陥ってしまったら
どうやって事態を切り開いていったらいいのだろうと
考えてしまいました。
助けてくれる人がいなかったら一生を支配されたまま
終わることになるのでしょうか。
そうならないよう結婚相手を選ぶべきでしょうが
その時にはわからなかったということもあるでしょう。
こういう問題を扱った話ではないのですがつい
考えてしまいました。