雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

風待ちの人

2011-11-01 19:16:56 | 
伊吹 有喜
ポプラ社
発売日:2009-06-19


伊吹有喜著"風待ちの人"を読みました。
哲司の三重県美鷲に住んでいたお母さんが東京の
哲司の家を訪れていた時に発病し亡くなりました。
哲司の妻は仕事を持っていてばりばり働いています。
浮気をしてますが哲司の離婚の申し入れを娘の学校の
入学に不利になると承知しません。
哲司は病気とはいえませんが精神的にダメージを
受けていると六週間の休暇が認められました。
母の家を整理するためもあり海辺の町の美鷲へやってきます。
お母さんは高校の教頭を務めた人です。
家はりっぱで家具や食器、クラッシックのCD等りっぱな
ものがたくさんあります。

福井喜美はトラックの運転手達から幸せを呼ぶペコちゃんと
呼ばれています。
哲司は海で溺れそうになって喜美に助けられます。
最初は反発していた哲司ですが家に手伝いにきてくれる
ようになった喜美と交流するようになります。
喜美は息子を美鷲の海で亡くし、夫も家出後行き倒れと
なって亡くしています。心の病になったことがあります
お盆のころに美鷲へ帰ってきますがあとの日々は定住
せず暮しています。
二人がしだいに心をかよわせていく有様が描かれています。
二人は男女の関係があるわけではありませんが、美喜が
台風のためたまたま哲司の家に泊まった時に、妻の理香が
突然やってきます。

この時のやり取りの不毛なこと。
それまでの哲司と美喜のおだやかで暖かいやり取りを
見てきたので心が寒々としてきます。
まったくの平行線で哲司の心を傷つけることを平気で
口にします。
傷つけているという意識すらないのでしょう。
解り合えないというのはこういうものなのでしょう。
結婚したということは当初は解り合っていたのか、
本当のところを見なかったのか、はたまた努力を怠って
別の方向を向いしまったのでしょうか。

休暇が終わって東京で暮らすようになります。
しかし哲司は妻とはいっしょには暮せないと離婚を
決意します。
娘の由香には二人とも見限られていて祖父母の家から
学校に通うと宣言されます。

喜美を追って哲司は美鷲にやってきますが、喜美が
結婚すると聞かされます。

心が疲れた人達の立ち直りの物語です。
浜辺の景色とお母さんの居心地のよさそうな家、知り
合った人たちとの交流が暖かい気持ちにさせてくれます。
哲司と美喜は最後にまた出会うのですがこのへんは
なんだか安直な気がしないではありません。
二人が出合って知り合ってゆく場面は好きです。

美鷲は尾鷲の近くということですが架空の場所の
ようです。10/20