書く仕事

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「夜光虫」馳星周

2007年10月28日 21時22分24秒 | 読書



「悪」って何だろう.
ものを盗むこと?
人を騙すこと?
人を殺すこと

悪は裁かれなくてはならないのか?
たとえ,やむにやまれず犯した罪も,罪は罪なのか?

例えば,人を殺すと言う罪についても,もし,自分の頭の中で,「こいつを殺せ」という声がひっきりなしに聞こえたとしたら?
その声に従わなくては,気が狂いそうになるとしたら?
この小説は,そんな業を背負った罪深い犯罪者が主人公です.
元プロ野球のピッチャーで,ノーヒットノーランもやった事がある選手だが,キャンプで肩を壊して以来,第一線からは遠ざかり,やがて新天地を求めて,台湾へ渡ります.
しかし,そこでやくざとのつながりができてしまい,八百長野球に手を出してしまう.
その後は,まさに坂道を転がり落ちるように悪の世界にはまって行き,殺人まで犯してしまう.

しかし,これらの転落は実は巧妙に仕掛けられた罠だった...

読んでいる途中は,もうここまで落ちちゃうと,あとは主人公が死ぬしかないんじゃないかと思わせますが,実は,意外な真実とタフな主人公の本質が現れてきて,ある意味で予想外の結末を迎えます.

読後感は決して爽やかとは言いがたいですが,文章がうまくて飽きさせないのと,人間の業というか,血の業ですね,呪われた血筋が導く運命には決して逆らう事ができないという絶望感に,一種の安心感みたいなものまでが現れてきて,結構悪の世界に自分が浸っていることに驚かされます.

こどもの目に触れないように注意して,あなただけでこっそりお読みください.


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