書く仕事

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「通夜女(つやめ)」大山淳子

2022年02月01日 13時54分55秒 | 読書
「通夜女(つやめ)」大山淳子


女子大生の小夜子は就職活動にことごとく失敗し,心が折れてしまう.
そんな時,ふらりと訪れた通夜の会場で,線香の香りとお経のリズムに心が癒されることに衝撃を受ける.

それ以後,見ず知らずの人の通夜を渡り歩くことが生きがいとなってしまった小夜子.
肝心の就職活動はどうなるのか.
それよりも,何事にも自信が持てない彼女に未来はあるのか.
遠回りしたのちに小夜子が見つけたもう一つの人生とは.

なかなか深いテーマのお話でした.
「君の夢は何?」
と聞かれて,滔々と未来を語れることが素晴らしいとされる現代社会.
「夢」,「自己実現」,「目標」この3語を使って,800字以内であなたの未来を語りなさい.

そんな社会に息苦しさを感じている若者は多いんじゃないかな.

取り立てて,やりたいことなんてないし,命令された仕事だけ手を抜かずに一生懸命やり,夜になったらビールとおいしい料理を食べて,風呂に入って寝る.そんな生活ができれば幸せです.

もし面接でそんなことを言ったら,採用してくれる企業は1社もないだろうな.

人の生き方に関する指南書はいろいろと出版されているけれど,それらはいずれも,「こうしなさい」という内容だろう.
「こんな考え方もある」という本はなかなか無いよね.
そんな立場で書かれた(作者が意図したとは思わないけど)人生の指南書ともなりうる小説でした.


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