書く仕事

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「跡を消す」前川ほまれ

2018年10月09日 09時46分14秒 | 読書
「跡を消す」前川ほまれ



以下の記事には不衛生かつグロテスクな表現が含まれますので、ご注意ください。


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「特殊清掃」という仕事をご存知だろうか?
身寄りのない人が亡くなった際、警察の検分が終わった後に委託を受ける清掃業のことだ。
遺体は既に大学病院等に搬送されているので、主な業務は遺品の廃棄と、「部屋の清掃」である。

孤独死の場合、死後、日数が経って発見されることが多く、腐乱が進んでいることが多い。
たとえ遺体そのものは現場に無くても、遺体から流れ出した腐敗した体液は、遺体そのものよりも強烈な異臭を放つ。
その腐乱液は畳や床,場合によってその下にまで沁み込み,畳を剥がして,さらに床下の板にまで達するという.その場合,該当する畳はおろか,床板,さらに床下の板も削り取って廃棄しなければ,異臭は取れないという.

この小説は,そういう特殊清掃を請け負う業者「デッドモーニング」社の社員らの生きざまの物語である.

高校卒業後,定職につくこともなく,ブラブラとバイト生活を送る浅井航クンが主人公.
彼は,ふとしたきっかけで,上述のデッドモーニング社の仕事を手伝う羽目になってしまうのだが...

最初は,上に述べた現場のおぞましさに辟易しつつもバイトと割り切って働く航クンだが,何件か仕事をこなすうちに,最近亡くなった祖母の死とも絡み合わせて,人の死について真剣に考え始めることになる.
さらに,社長の笹川がこの会社を始めるきっかけとなった,ある事件を知るに至り,この仕事の意味に気が付いていくのだった.

「おくりびと」という映画があったが,コンセプトは近いものがありそうだ.
ただ,「おくりびと」は遺体そのものを大切に扱ってあの世に送る仕事,一方,この小説は,遺体が搬送された後の現場に,故人の想いを探す仕事という違いがある.

こういう物語に人生を感じてしまうのも,歳を取った証拠かもしれない.


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