書く仕事

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「父の詫び状」向田邦子

2014年02月23日 15時12分25秒 | 読書
「父の詫び状」向田邦子




向田邦子のエッセイ集

家族にわがままを押しつけながらも,愛情が見え隠れする,昔気質の父との葛藤.

描かれている時代は昭和.
戦前から戦後,昭和10年代から昭和30年代の世相と,その中でつつましく暮らす庶民のお茶の間が舞台のエッセイ.

昭和という新しい(?)時代を生きた,明治男の不器用さが腹立たしくも痛々しい.

自分勝手な父を半分憎み,半分愛する娘の複雑な心理.

しかし,ここで描かれる,父と子の関係は,現在では通用しない.
下手すれば,子どもの虐待で訴えられてしまう.

要は,倫理や常識とは,その時代との「癒着」によって成立しているものであり,普遍的な価値観での評価なんか意味がないということ.

ただ,解説の沢木耕太郎氏によると,巷では,このエッセイ集の評価はものすごく高く,エッセイ集の「真打」と呼ばれているらしい.

ふ~ん.

「ウツボカズラの夢」乃南 アサ

2014年02月23日 11時57分59秒 | 読書
「ウツボカズラの夢」乃南 アサ




未芙由(みふゆ)は高校を卒業して上京した.
未芙由の母親が死ぬと同時に,浮気相手と結婚してしまった父親に嫌気がさしてしまったからだ.
見も知らぬ女と,その女のことしか眼中にない父親の住む家庭に,自分の居場所など存在しないと思ってしまったのだ.
しかし,東京で頼りにしていた叔母(尚子)も,未芙由を大歓迎というわけではない.

尚子自身には悪意はないが,尚子の家族は,皆,ひとくせもふたくせもあるトンデモ人間ばかり.
よくぞ,こんなひどいキャラを集めたなと思うくらいの毒虫家族だった.

そんな,最悪の環境の中で,ある目的をもって,家族の中に溶け込もうとする未芙由.
ウツボカズラとは,ご存じ食虫植物.
肉食獣じゃなく,植物ってところがミソ.植物だけど恐ろしい.
世の中のご亭主の諸兄,ご自分の妻がウツボカズラで,自分はその罠に嵌ってしまったと思っていませんか?
そんな方こそ,この本を読んで,「よかった.自分の妻と家族は,まだ,まともだ」と安心してください.