書く仕事

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「火の壁」井野上裕伸

2014年02月17日 15時28分02秒 | 読書
「火の壁」井野上裕伸




火災保険金詐欺のドキュメンタリー風小説.ただし,実際は完全なフィクション.

火災保険の調査員,相沢はある火災について調査を依頼される.

その保険人,樋川は過去に4回も火災に会い,その全てで火災保険金を受け取り,火災のたびに自身が経営する寿司屋を大きく建て替えていた.
しかも,そのうち2回の火災では人が死んでいる.

まあ,いかにも怪しいわけです.

相沢が依頼されたのは,最後の5回目分だけだが,事件の全貌を知るためには,過去の4回も洗いなおそうと,相沢の地道な調査が始まる.

一通りの調査が終わり,状況証拠ながら,自作自演の火付けであるという確証を得た後に,いよいよ本人,樋川と対峙する.

しかし,相沢は樋川との面談で,ある奇妙な印象をもつ.
確かに,自分で火をつけたことは間違いなさそうだが,その動機が判然としない.
単に,保険金目当てなら,例えは悪いが,生命保険でもよい.

樋川の「火」に対する,異常な執念に,何か過去の亡霊を感じた.

そこで,改めて,樋川の過去を洗いなおしてみると.....

って,感じで蛇行しつつ,紆余曲折を経ながら,読者をあちこちに連れまわす.

微妙な小説だね.
一応,ミステリーなんだけど,最後の謎解きが唐突な印象を否めない.
「やられた」っていう爽快感がない.
なんとなく,後出しジャンケンで負けたみたいな感じかな.

ただ,この小説は.井野上氏としては初の長編らしいので,それを割り引けば,納得できる.
決して退屈な本ではありません.面白いです.

ただ,何かすっきりしないなあ,というのが印象.

第13回サントリーミステリー大賞読者賞受賞.

これは出版社への小言だが,行間が狭すぎて読みづらい.
文字の大きさは単行本としては普通だが,行間は文庫本くらいしかない.