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魔性の女・唐沢雪穂と,天性の犯罪者・桐原亮司.
しかし,彼らの犯罪の根っこには,子供のころの,誰にも明かすことのできない秘密があった.
雪穂はその美貌と天才的な頭脳で,社会の上層階級に上り詰めていく.しかし,もともと貧しい家の生まれであることや,母親がいかがわしい仕事をしていたこと,そして何よりも小学生時代の忌まわしい出来事は,決して知られてはならない秘密だった.
その秘密を知った者は,桐原亮司の助けを借りて,次々と殺されていく.
雪穂は結局,何人もの人を殺すことになるが,一つの殺人がばれそうになると,次の殺人を起こすことでそれを逃れていく.
怖いです.
雰囲気としては,ミステリーというより,雪穂が出てくる場面ではホラーっぽくすらある.
しかし,最後に明かされる,驚愕の事実が,事件の動機でもあり,雪穂の精神的土壌を形成していることが明らかになる.
雪穂の「男の人の愛し方がわからないんです」というせりふは,一見相手に媚びるような表現でありながら,実は本音かもしれない.
あんな悲惨な体験を,小学生のときにしたなら,そうなっても無理はないかも知れないと思わせる.
上下2段組で500ページの大変な長編ですが,一度も飽きることなく読み通させる筆力はさすが東野さん.
最後の幕引きには,賛否ありそうだが,それも計算の上でしょう.
この圧倒的な物語性と伏線の数々.
お見事というしかない.