風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

高村薫 『レディ・ジョーカー』 1

2006-01-24 22:25:13 | 

組織という論理がどんなものか、長年漠然と感じてきたことではあったが、そのほんとうの正体は、善良な魂には推し量れないような、何ものかであるに違いなかった。組織とはきっと、それを構成する人間の欲望の集合体で、憤懣や羨望や嫉妬や恨みをうちに抱えた非合理こそ、その本質であるに違いなかった。
(高村薫『レディ・ジョーカー
』より)

組織が個人の夢や優れた技術の集合体として存在するとき、それは個人ではなしえないより大きな夢を実現させる力となるのでしょう。
けれど私は、それでもやはり組織というものの「本質」は、この文章が示しているようなものであろうと感じずにはいられません。
個人ではなく集合体であるがゆえに、それは時に個人ではもちえない残虐性をもちます。善良な一個人を容赦なく裏切り切り捨てることは、個人レベルでは躊躇されても、組織という責任の所在が曖昧な集合体にはいとも簡単なことなのです。
そんな「組織」に対して私が薄気味悪さそして嫌悪感をはじめて感じたのは、やはり社会へ出てからでした。小学校~大学までの私は学校という組織にただ通っていただけで、本当の意味で「属して」いたわけではなかったのだということを思い知ったのです。

というわけで、大好きなんです、『レディ・ジョーカー』。
初めて読んだのはかなり昔ですが、組織の中で働いてゆかざるをえない身としては、色々な意味で元気づけられる本です。そして高村さんの文章がたまらなく格好いい。
とても好きな本なので、この話題つづけさせてくださいね。

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