風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『華麗なるギャツビー』

2013-08-07 00:01:56 | 映画




3Dではなく、2Dでの鑑賞。
バズ・ラーマン監督独特の目にも耳にも全く優しくない映像から、あの時代の“狂騒”を嫌になるほど感じることができました。
これ、褒め言葉ですよ。
ド派手で五月蠅い映像とニック&ギャツビー以外の軽薄な人間模様に観ているこちらが「いい加減うんざり!」となった頃にニックの「I've had enough!」(もうたくさんだ!)の台詞がくるので、ひどくニックに共感してしまうのです。決して狙ったものではないと思いますが。
もしかしたらレッドフォード版のような正統的な映像より、こういう映像の方がフィッツジェラルドの世界観には合っているのかも、とさえ思ってしまいました。それくらい、イライラした、笑。繰り返しますが、褒め言葉です。

さて、ディカプリオのギャツビー。
登場シーンの「全世界へ向けた微笑み」の演出。ここは笑うシーンか?と思ってしまった。。。あれはないよなぁ。。。
と、ちょっとどうなのかね?な部分もありましたが、レオ様はやっぱり魅せてくれますねぇ。
夜の庭のシーン、美しくてよかったなぁ。絶対に喜ぶだろうと思ってニックに裏の金の儲け話をもちかけて、きっぱりと「自分は好意(favor)でやっているだけだ」と言われたときのギャツビーの驚きと、嬉しそうな顔!こういう純粋で繊細な表情が本当に上手いですねぇ、レオは。

トビー・マグワイアのニック。
素晴らしくイメージどおりでした。
この映画の一番の見どころですよ。
ていうか、トビ―って私より年上なのね。本当に童顔だなぁ、このヒト。
ただ、これもトビ―が悪いわけではありませんが、現在のニックがアル中と不眠症で病院にかかっているという設定はいかがなものかと。原作で中西部に帰るときのニックは、確かに傷ついても疲れ切ってもいますが、それでも彼なりのきっぱりとした心の区切りもついているように思うのです。自分の価値観に対する自信といいますか、ギャツビーに「君だけが価値がある」という最大級の賛辞を送ったそんな自分に対する確固たる自負を持っていると思うのですよ。だからこそ、最後にトムと握手を交わすこともできたのだと思います。そしてそういうニックなら、中西部に帰った後も大きく精神のバランスを崩すようなことはないでしょう。原作の握手シーンをまるごとカットしてまでこういう設定にした監督の意図が分かりかねます。

キャリー・マリガンのデイジーとエリザベス・デビッキのジョーダンは、イメージどおりでした。
ニックとジョーダンの関係は、原作よりあっさりめですね。もうちょい深くした方が、最後に“ジョーダンも含めた”東部社会全体に対して向けられるニックの心情が引き立つと思うのだけれど。

ジョエル・エドガートンのトムは、ちょっと違うんじゃないかと。。トムって、もっと知的なイメージです。一応イェール大学でニックと同窓だったのですから。でも映画のトムは、脳みそまで筋肉でできてるみたい。。

まあ色々言いたいことはありますが、私は好きです、この映画。
なにより原作で一番好きなギャツビーとニックの別れの場面を非常に美しく映像化してくれたので、この場面のためだけでももう一度映画館に行きたいくらい。
とにかく映像がDVDではなくスクリーン向きなので、ご興味のある方はぜひ映画館で観られることをオススメします。
もっとも、3Dでなくても、2Dで十分だと思います。その方がストーリーに集中できますし、2Dでも十分に迫力ある映像を楽しめましたから。

※村上春樹訳についての感想はこちら

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