風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

高村薫 『レディ・ジョーカー』 2

2006-01-25 23:59:14 | 

合田は深呼吸をし、最近あまり見ることもなかった夜空を仰いだ。星のない曇天だったが、人間一名を包み込む天空の大きさにかわりはなく、この空の下で人間は独りだ、自分の声を聞くのも独りなら、己の理性も感情も、種々の価値観も独りだという、いつもの単純な思いをもった。
(下巻p221)

自分の腹のどこかに収めなければならないのは、一人の人間の生身を包んだ炎であり、想像もつかない苦痛であり、その苦痛を超える人間の意思であり、その意思を受け止めるすべのない組織の現実であり、その組織に嫌悪を覚えつつ、辞職する決断をしかねている自分自身だった。
(下巻p353)


こうして合田さんは着々と壊れてゆく…。
それにしても、高村さんの書く日本語にはほんとほれぼれします。。

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