現場は古い二階建の一軒家。遺体は一階の角部屋で腐乱しており、その臭いはいつもの悪臭のレベルを超えた強烈なものであった。悪臭は、鼻ではなく腹で受け止めなければならないことを始めて知らされた現場だった。
腹でも受け止められない人は吐いて退散するしかない。
しかも、そこは1~2日前とかいったものではなく、最低でも1~2週間前から悪臭を放っていたと思われるような現場だった。
しかし、家族が死体に気づいたのは2~3日前とのこと。
家族の一人がまったく部屋からでてこなくなったうえ、その部屋から悪臭が漂うようになるまで本人が死んだでいたことに気がつかなかったとは、とても信じられなかった。
しかも、その家族は、酷い悪臭の中を、金目の物がないか必死で探していた。
何はともあれ、私の仕事はその現場をきれいに片付けることで、余計な詮索は無用。
四畳半の和室の汚染度はかなり酷く、何からどう手をつけてよいやら迷うような状況。
とりあえず、大量に発生した蛆(ウジ)を始末することからスタート。
蛆というヤツは、一体どこから入り込んで死体を喰っていくのか、その増殖力の強さは不思議で仕方がない。蛆との戦いにはいつも手を焼く。
奴等は、市販のウジ殺薬でもビクともせず、早く蝿(ハエ)になって飛び去ってほしいくらいだった。
仕方なく、汚染された布団と一緒にビニール袋に入れて圧縮。手で押さえてもムニュムニュと動く感触は、鳥肌もので不気味だった。
とにかく、その現場は、家財一式はもちろん畳・床板まで全部撤去。
代金は作業前に値切りに値切られたため、どことなく損をしたような気分になった現場だった。
トラックバック 2006/05/20 より
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